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シン・長田を彩るプレイヤー ~木に魅了された家具職人~(後編)


今回は、MOU Trateknik & Designの代表である幸玉(こうだま)次郎さんを取材しました。
MOUという名前を大切に、オーダーに合わせた家具を作りあげる幸玉さん。
後編では、そんな幸玉さんが家具を作る際のこだわりや木の魅力、そして家具への愛を語っていただきます!


こだわり抜かれた家具づくり

-記者-
木を仕入れる時はご自身で直接見に行かれるんですか?

-幸玉さん-
そうです。
やっぱり持ってくる方もプロですけど、自分で見ると、ちょっと違うんです。
自分で見て、これはここに使ってと決めた方がロスをより少なくできます。

-記者-
仕入れ先を決めるのは元のつながりや紹介からですか?

-幸玉さん-
そうですね。
最初は仕入れルートが全くない状態だったんですけど、先輩方に教えていただいて。
長くやってるうちに融通利かせてくれるようになったり、「こんなん入ったよ」と情報を教えていただけるようになったりしました。

-記者-
すごい。
ほんとに人と人とのつながりでここまでできたっていう感じですね。

-幸玉さん-
そうですね。

-記者-
木によって扱いやすさに違いはあるんですか?

-幸玉さん-
あります。
同じ木でも癖強いやつもおれば、素直なやつもいるから。
良材っていうのは、それが仕事してくれるので、すごく楽なんですよ。
狂いが少ないというメリットもあるし。
それがわかるようになるのも、時間がかかる。
職人の世界って、下積みが重要とよく言うんですけど、経験を積んで初めて、あぁ、なんか言ってる意味わかるよなぁ、と腑に落ちましたね。

-記者-
ちなみに、椅子を1脚作るのにはどれくらいの時間がかかるんですか?

-幸玉さん-
作り方が色々あって、図面が全部できてたりしたら、1脚集中で作って1日半とか。
これが6脚とかになると、早くするために工程が変わってくるんですよね。
椅子ってね、思っている以上に儲からないんですよ(笑)

-記者-
意外です(笑)

-幸玉さん-
手間はすごいけど。
だから数はあってなんぼなんですよね。
テーブルの方が正直利益率は高かったりしますね。

ちょっと変わったアトリエ

-記者-
今日この建物に入ってきて、2階に上がると、なんか想像と違ったというか。
職人さんがいるところってなんかもっと、「工場(こうば)!」みたいなイメージでした。

-幸玉さん-
わかりますわかります(笑)
僕が育ったのもそういう感じやったんで。
やっぱり、なんて言うかな、自分自身が一番楽しんでるというか。
デザインを提案する側としては、実働と空間の作り方の検証をしながらやってる。
椅子でも、どこに置いたらいいとか、どうしたらよく見えるとか。
そういうのを普段考えながらやってるんです。
その延長線上に仕事が混ざってるっていう感じですかね。
だからやっぱり、同業者が来たら、「自分とこ変わっとんなあ」みたいな感じにはなるんですけどね(笑)

-記者-
そうなんですね(笑)

-幸玉さん-
「木工所みたいじゃないなあ」って。それが狙いなんです。
お客さんが来るときにアトリエを見ながらいろんなお話すると、説得力もあるじゃないですか。
工場が別にあるのではなく、この場所で僕が作ってお客さんとお話もできる。
全部がここで完結する。
そういうスタイルづくりというか、それの一環ですよね。
他にないものというか。
・・・まあ仕事はしにくいですけど(笑)

-記者-
そうなんですか(笑)
お客さんにとっては雰囲気がわかりやすくて、すごくいいですよね。

-幸玉さん-
そうですよね。世界観というか。

木の魅力

-記者-
機械系の仕事から木材を扱う仕事に変えられたということですが、木材のいいところって何ですか?

-幸玉さん-
木材のいいところ・・・
木って1パターンではないっていう難しさがあって。
同じ木でもさっき言ったみたいに癖が強かったりとか、使うとこ間違えたら大失敗するとかがあるんですよ。
現物を見に行っても同じものに二度と会わないとか、そういう面白さもあるし。
作るだけなら結構誰でもできるかもしれないですけど、技術と知識を全部組み合わせてする仕事の面白さや天然の素材としての面白さは、抜けてるなと思います。

-記者-
なるほど。

-幸玉さん-
僕はあまり塗装で着色したりは提案しないんですよ。
素材そのものの色を楽しんでもらったり、経年変化による色の変化を楽しんでもらいたいので。
修理の依頼を受けて鉋(かんな)かけて削ったら、また新しい肌が出てくるでしょ。
新品の時みたいに輝きを取り戻す。
人工物じゃない面白さっていうか。

溢れる家具への愛

-記者-
長田の方からの注文も多いですか?
それとも神戸市外の方が多いんでしょうか?

-幸玉さん-
長田の方はそれなりに。
オーダーに関しては地方の方もいるし。
1回あったのは、Instagramで注文が来て、お届けしたときに初めてお会いしてとか。
岐阜の方だったんですけど。

-記者-
岐阜!? へー!今時な感じですね~!
お客さんに届けるのもご自身でされるんでしょうか?

-幸玉さん-
しますします。
配送の場合もありますけどね。
基本的には、行ける範囲は全部自分で行ってます。

-記者-
Instagramを通じてのお客さんは写真を見て注文されると思いますが、商品のデザインや色味はしっかり伝わるものなのでしょうか?

-幸玉さん-
商品の写真は一眼で撮ったりするんですけど、僕目線はかなり入ってると思いますよ。
全面的なのが一番いいと思うんですけど、やっぱ一番目にするのは後ろ姿とかだから、撮るときも自分目線が入ってる。
まぁ僕のところを選んでくれる方っていうのは、それに共感してくれた方なんじゃないかなとは思いますけど。

デザインしてるときも、風景とかを思い浮かべるんですよね。
お客さんが日常で使ってるところを想像しながら。
フィジカルな面でもそうなんですけど、高さや設定も使いやすいように。
これだけがいいっていう部分ももちろん大事だと思うんですけど、やっぱりそのお家におさまったときに他のものと調和して、一番の完成形となるように意識しています。
あくまで脇役として。

-記者-
今後イベントに参加される予定はあるんですか?

-幸玉さん-
タイミングがきたら動きたいなと思ってます。
コロナ前もちょこちょこはイベント出てたんです。
ただ、家具を全部もっていくのが無理なので、小物に変換して、指輪やまな板みたいのとか、わかりやすいものできっかけを作ってもらって、家具を見に来てもらって、という流れを作ってたんです。
そういう部分もこれからやっていけたらって。
ここでワークショップもできたらいいかなとは思ってます。

-記者-
最後の質問になりますが、幸玉さんにとって家具づくりとはなんですか?

-幸玉さん-
ライフワークであることには間違いないんですけど、なんだろうなぁ。
コミュニティとまではいかないんですけど、こうやって縁をもたらしてくれる存在で、そこが一番好きで、大事にしたい部分ですよね。

-記者-
ありがとうございます。


熱い想いをもって家具づくりに励む幸玉さんの姿は、“職人”という言葉がとても似合うように感じました。
見せていただいた図面には数字や文字が事細かに書かれ、それを一つひとつ丁寧に説明する幸玉さんからは家具への愛やこだわりが溢れていました。
アトリエには手作りの家具や指輪など温かみのある作品が並べられ、とてもおしゃれで素敵な空間です。
家具に興味のある方は、是非足を運んでみてください!

(編集:こんちゃん、ノツ)