THE HIGH BEATSの歴史(2)
そして「The High Beats」誕生の64年
そんなこんなで少しずつコードやリズムやアンサンブルを理解していきました。そして程なく、予定通り社会人の先輩が離れ、マネージャーとベースもメンバーが変わり、「The High Beats」と言う名前で再結成されました。
それ以後何回かステージに立つことができましたが、私のテクニックはなかなか上達せず、入るタイミングがつかめなくて全員を立ち往生させるようなこともやってしまいました。
しかしバカの一念とはエライもので、朝となく夜となく暇さえあればギターをさわり、指先が硬くなって一皮むけて、又やわらかくなったころには、何とか人前でビビらずに演奏できるようになっていました。というよりステージに立つことが快感に変わってきたのです。
レコードからギターコードを取り出すのも、プレーヤーの回転を早くしてベースの音を聴き、その音階からコードを探せば近いものがあるとわかって、格段に早くなりました。
当時音取りに使っていたプレーヤーは、チューブを通して聴診器のように耳に差し込んで聞くタイプのものでした。スピーカーがない分軽くて持ち運びには便利でした。
そんなチューブが二組付いていたので、二人で頭をつき合わせてウンウンとうなずきながら聞いている姿はおかしなものでした。それはヘッドホンに似て音が頭の中で聞こえるし、耳の穴に突っ込んでしまうので、外部の騒音も聞こえません。ただ、たいがいうつむいて聞いているので呼んでも聞こえず、用があるときは頭をひっぱたくしかないのです。
そしてみんなで聞くときはテープに録りました。ばかでかいオープンリールのテープレコーダーで、録音するときはスピーカーつきのステレオの前にマイクを置き、セーノでみんな息を止めんばかりに動かず、一曲録り終わるまでかすかな音さえ立てられませんでした。
ある日、ポンの部屋に何人か集まって、録音していました。突然アパートがぐらぐらと揺れ、プレーヤーの針がすっ飛んでしまいました。
「地震やっ」
立つこともできずみんなその場で凍り付いていましたが、幸いそれはすぐにおさまり、余震もないようでした。
テープとプレーヤーはまだ回り続けていました。
どこまで録れているかもわからないので、念のため巻き戻して聞いてみることにしました。
その部分に来ました。曲の途中でギィーッとレコードの上を針が滑り、その直後に小さな声が入っていました。
「こわい!」
震えを帯びたそれはリーダーのポンの声でした。