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流動性マイニングをする上で理解しておくべき2つのリスク

2種類の通貨を預けることで、年利数百~数千%もの金利収入が得られる流動性マイニング。

夢のような仕組みですよね。

しかし、ノーリスクでそんな甘い汁を吸えるわけではありません。

今回は、流動性マイニングをするうえで注意すべき2つのリスクをお伝えします。

流動性マイニングで一番やってはいけないのは、
金利の高さだけを見て飛びつくことです。

実際に私も高金利に目がくらみ、取り返せないであろう含み損を現在抱えている一人です。自分への戒めも込めて、お伝えします。

特にこれから流動性マイニングを始める人には、損をさせない内容になっているので、ぜひご覧ください。

リスクその1:変動損失(インパーマネントロス)

変動損失とは、簡単に言うと「ガチホしていたら1万円の値上がり益だったのに、流動性マイニングをしたことで8000円しか儲からなかった」みたいな損失のことです。

変動損失は、預けた通貨の価値のバランスを調整する際に発生します。

流動性マイニングをするには、通貨Aと通貨Bを1:1の価値にしてプールに預ける必要があります。

通貨Aを1万円分預けるなら、通貨Bも1万円分預けないといけないということです。

流動性マイニングを始めると、価格変動によって2つの通貨の価値バランスが崩れます。通貨Aと通貨Bは独立して値動きをするためです。

しかし、プール内の通貨の価値は1:1でなければなりません。

そこで、プロトコル(AMM)は一方の通貨の保有量を増やしたり、もう一方を減らしたりすることで価値を1:1戻そうとします。

その結果、単純にガチホをしていたときと比べ、実際の利益が目減りしてしまうのです。つまり「こんなことなら流動性マイニングをしなければよかった」というのが変動損失です。

しかし実際のところ、2つ目のリスクと比べると変動損失はそこまで恐ろしいものではありません。

なぜなら、変動損失は価格変動が50%以内なら2%以内の損失に収まるためです。下記をご覧ください。

引用:アルパカファイナンス

これは価格変動と変動損失の大きさを表したグラフです。

目盛りは見えにくいですが、価格変動がプラスマイナス50%以内なら変動損失が2%以内に収まっています。

ちなみに、通貨の価値バランスが流動性マイニングのエントリー時と同じ水準に戻った場合、変動損失は0になります(グラフ参照)。

そのため、理想のシナリオはこのままずっと通貨の価格が動かないことです。

変動損失については、以下の記事でより詳しく解説しています。

変動損失だけなら、マイニング報酬で十分取り返せそうな気がしますよね。実際、可能だと思います。

しかし、これよりもっと注意すべきものがあります。

リスクその2:通貨の下落

正味これが一番恐ろしく、気を付けなければならないものです。流動性マイニングで生まれる損失の大半は、変動損失ではなく価格の下落だからです。

価格の下落とは投資の基本中の基本で、持っている通貨の価格が下落すればそれだけ含み損が出るということです。

流動性マイニングをするときは、2種類の通貨を用意します。

つまり、このとき我々は2種類の通貨に対して買いポジションを取っていることになります。言い方を変えると、2種類の通貨をガチホしています。

買いポジション、ないしはガチホをしている場合、価格が上がれば利益が上がり、下がれば損失が出ますよね。

「何を当たり前なことを」と思うでしょう。

しかし、我々が流動性マイニングをするとき、しばしば価格の下落のことを忘れてしまいます。そして、こう思うのです。

「こんなに利回りがいいなら、多少の損失はマイニング報酬で相殺できる。よし、今すぐ突っ込もう」

また、もしかしたらこう思う人もいるかもしれません。

「価格が下がっても、プロトコル(AMM)がその分下がった通貨の保有量を増やしてくれるから、実質被るのは変動損失だけ」

しかし、どちらも間違いです。

詳しい理由を解説します。

勘違い①損失は圧倒的な利回りで回収できる

このように考える人は、現在の高利回りがいつまでも続くと考えているかもしれません。

しかし、たいていの場合、流動性マイニングの報酬は時間とともに減少します。

これにはいろいろな要因がありますが、主なものは以下の2つです。

  • プール全体の流動性が増えたことで、自分の取り分が減る

  • 出来高が減ることで報酬が減る

前者は流動性プロバイダーが多数参加することで、自分が提供した資金の全体に対する割合が小さくなるということです。

流動性マイニングの報酬額は、全体に対する自分が提供した資金の割合によって決まっています。

しかしより恐ろしいのは後者です。

市場が冷えることで、そもそも報酬の発生する機会が減ります。

異常な高利回りペアを目にするとき、少なくとも一方は聞いたこともないマイナー通貨ではないでしょうか?

マイナー通貨は当然取引する人が少ないので、何かインセンティブを付けてプレイヤーを惹きつけなければいけません。

流動性マイニングにおけるインセンティブは、圧倒的な高利回りです。

しかし、目先の利益で釣ったプレイヤーからの人気は長続きするはずもなく、すぐに熱は収まります。

波に乗って一儲けしたプレイヤーは、この人気が長続きしないことがわかっています。

さっさと利確をして次の狩場へ向かうでしょう。

すると通貨の価格はみるみる下がり、取引量も減り、当初の盛り上がりは見る影もなくなります。

そして流動性プロバイダーに残されるのは、高値掴みした結果の大きな含み損です(流動性マイニングを始めるときには、まず現物を用意するために通貨を買わないといけません)。

通貨の暴騰から急落・凪の状態になるまでの期間は、だいたい数日~1週間前後といったところでしょう。

さて、その短期間で膨らんだ含み損をペイするだけのマイニング報酬は得られるでしょうか。

答えはノーです。

なので、異常な高利回りに釣られてよくわからない通貨に手を出すことは危険です。

あなたはいつも自分の大切な資金を投資するとき、よく知らない銘柄にリサーチもせず突っ込むでしょうか?

流動性マイニングを始めるときは、ガチホする通貨を選ぶときと同じように、慎重に選ばなければなりません。

でも、流動性を提供している限りは少しでも報酬が入ってくるでしょ?
だから、たとえ少なくても報酬をもらい続ける方が得じゃない?

と思う人もいるかもしれません。
確かに正しいと思います。

しかしその場合、報酬額は当初の想定よりも非常に少なくなることに加え、自分の資産の流動性も下がることになります。

他の好条件の投資先があったときに、流動性マイニングに入れた資金を引き出すのかどうか、という問題に直面するでしょう。

そこは自分の投資戦略によると思うので、正解はないと思います。

勘違い②価格が下がってもプロトコルが保留量を増やすから、実質被るのは変動損失だけ

変動損失を逆手に取った考え方ですね。
「価格が落ちた分、価値の比率を保つために価格が落ちた方の通貨が増える。だから、価格変動による損失は生まれない」という考えです。

しかし、これは変動損失およびAMMへの理解が誤っています。

変動損失とは、ガチホと比べたときの損失のことで、単純な価格変動による損失のことではありません。

「ガチホしていたら1万円稼げていたのに、流動性マイニングをやったがために8000円しか稼げなかった」
このときの2000円が変動損失です。

変動損失の発生条件は通貨の価値バランスが崩れたときです。

よって、もし通貨Aと通貨Bの価格が同じ割合で下落したら、価値の比率は1:1のままなので変動損失および通貨の保有量の調整は発生しません。

例えば、1BTC=100万円、1ETH=10万円のときに1BTCと10ETHを流動性として提供したとします。

このときのレートは1BTC=10ETH、資産価値は100万円+100万円で200万円です。

その後、1BTC=80万円、1ETH=8万円に下落したとしましょう。
このときも、レートは1BTC=10ETHで価値のバランスは変わっていません。

つまり変動損失は0です。

しかし、資産価値はどうでしょうか。

80万円+80万円=160万円になっており、40%の含み損です。

これで変動損失≠値下がりによる損失ということがお分かりいただけたかと思います。

だからこそ、通貨選びは慎重に行わなければならないのです。

流動性マイニング=2つの通貨の買いポジション

高い利回りに飛びつくことがいかに危険かがわかったかと思います。

私も初めはこの記事の内容を理解しておらず、現在数十%の含み損を抱えています。
ネットで調べても日本語でここまでの情報は見当たらなかったため、noteでまとめることにしました。

流動性マイニングをすることは、2つの通貨の買いポジションを取っているのと同じです。

つまり、通貨が値下がりすると損をするということです。

だから、流動性マイニングをするときは、できるだけ価格が下がらなそうな通貨を選ぶ必要があります。

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