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理解しておきたい日本のマネロン対策

「マネーロンダリング(略してマネロン)」という言葉をご存知ですか?
これは麻薬取引や脱税などの犯罪で得た資金を、架空名義口座などの偽造された口座や売買された口座へ転々とさせ、出どころを分からなくさせる行為のことを言います。
「汚れたお金」が洗浄(ロンダリング)されて「きれいなお金」に変わっていくことから資金洗浄とも呼ばれます。
2011年の米国同時多発テロで国際テロ組織の活動や資金源が注目され、マネロン対策が国際社会の急務とされてきました。

テロ資金というと私たちにはあまり関係がないような気がするかもしれませんが、警察庁によると銀行などでのマネロンが疑われる取引は2020年だけで43万件もありました。特にネットバンキングを通じた不正送金が増えています。これだけ多いのは日本は海外と比べ口座開設が簡単で預金口座が多く、長期間使用していない休眠口座が悪用される例が多いからと言われています。

そんな中で最近各国のマネーロンダリング(資金洗浄)対策などを調査する国際組織「金融活動作業部会」(FATF・ファトフ)が日本を「重点フォローアップ国」と判断しました。これは日本のマネロン対策を実質的に不合格とするものです。
これまでに日本のほか、米国や中国、カナダなど19カ国が「重点フォローアップ国」とされる一方、イタリアやイギリスなど8カ国は、実質的な合格である「通常フォローアップ国」と評価されています。

上記のように日本のマネロン対策に対して国際社会の評価が厳しいことから、財務省や金融庁が中心となって金融機関への監督強化や行動計画の策定に動き出しています。

私たちに直接関わってくるものとしては、口座開設時の本人確認や利用目的の確認の強化、国際送金の厳格化が挙げられます。

個人での口座開設は名義人本人が顔写真付き証明書を提示して手続きをすることが原則となります。健康保険証など顔写真がない証明書では複数提示することが求められたり口座開設を断られるケースもあります。運転免許証があれば大丈夫ですが、所有していない人はマイナンバーカードを作成しておくと良いでしょう。パスポートも顔写真付き証明書ですが、コロナ禍で海外に行く機会が減り、期限が切れているものは無効ですし、現住所の記載欄がない最近のパスポートも使用できません。

口座開設時は利用目的なども詳しく申告がすることが必要です。以前は証券口座開設時のみ聞かれていたような主な利用目的、国籍、職業、勤務先、保有資産の状況などを詳細に申告することになります。子どものお小遣い帳代わりの口座を作るだけでも同じように申告します。普段使いの通帳にここまでするなんて大げさでバカらしい、面倒くさいと思われるかもしれませんが、これも時代の変化ですのでご理解いただきお付き合いいただきたいと思います。

さらに大変になったのは国際送金です。
在日外国人の方が母国へ仕送りしたり、研究者の方が海外の学術論文の掲載費などをやり取りする際などに使われますが送金目的の申告だけでなく、その目的の裏付けとなる詳しい資料の提出を求められたりマイナンバーの提示も必要で、ここ数年でかなり厳格化されてきています。
この厳格化は利用者にとって負担となるだけでなく、金融機関の事務手続きが煩瑣となり大きな負担となっています。
地方銀行ではコスト面から国際送金の扱いを廃止する銀行も増えていて、地方の出稼ぎ外国人が仕送りしたくてもできないという状況があるようです。郵便局でも以前は全国ほとんどの郵便局で取り扱いをしていた時期もありましたが、現在ではゆうちょ銀行の直営店での取り扱いが中心となっていて、取扱局は大幅に減っています。

最後に、私たちがすでに所有して使用している口座に対しても今後定期的に金融機関から本人確認書類の提示を求められたり、個人情報を申告するように要請される機会が増えると考えられます。
私たち一人一人が所有する口座を適切に管理し、もし長期間使用していない口座や不要な口座があれば解約するなど、皆さまの口座が悪用されることのないようにしましょう!



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