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「好きな服と似合う服、どちらを選びますか?」について

小林 文/エディター

数ヶ月に一度くらいのペースでやっている、Instagram・ストーリーズでの「質問はありますか?」コーナー。

ファッション系、お笑い系、恋愛・人生相談系…ざっと数えて毎回数百件ほどいただく。こんなにたくさん! ? と驚きつつ、なるべく被りのないよう、バランスを考えてお答えするようにしている。

その中で、毎回必ず、しかも複数届く質問、それが


「好きな服と似合う服」について。


「好きな服と似合う服、ブンさんならどちらを優先しますか?」
「好きな服と似合う服、年々ズレてきて、服選びに悩みます…」
「似合う服を見極める方法は?」
 etc.  …

あまりに多く、一度ゆっくり答えてみたくなったので、ここでじっくり書いてみる。

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今日までこの議題をなんとなくスルーしていた理由は、
正直なところ、「好きな服と似合う服にあまり差がないから」。

36歳/既婚/子なし/フリーランス/エディター、の私。年齢や職業、ライフスタイルのせいもあるかもしれない。

子育てをするうちに…、40代で大きな壁が…、という話はよく耳にするし、5年後、このnoteを読んで「この頃はね〜」と遠い目をしているかもしれない。けれど、”今” と ”これまで” の私の経験として、「好きな服と似合う服にあまり差がない」わけで、その理由やその差の埋め方について、私がしていることをできるだけ詳しく綴っていこうと思う。自分の頭の中を整理するためにも。

「似合う」至上主義を作った、
「〇〇診断」


そもそも、世の中で「似合う」という価値観が、服を選ぶ際の重要な ”ものさし” になったのは、ここ5年くらい。「骨格診断」や「パーソナルカラー診断」の流行が確実に影響していると思う。

「骨格診断」とは、
”ストレート” ”ウェーブ” ”ナチュラル” 、(ネーミングはいろいろあるけれど、この3つが一般的)に分類され、各々の骨格によって似合うファッションテイストやシルエット、アイテムがわかるというもの。あくまで「骨格」であり、太ったor痩せた、に関係がないというのも支持されている理由なのだろう。

「パーソナルカラー」は、
”イエローベース肌(黄み肌)” と”ブルーベース肌(青み肌)”があり、
”イエベ肌”は”スプリングタイプ”と”オータムタイプ”、”ブルベ肌”は"サマータイプ"と"ウィンタータイプ"、というように、それぞれ2つずつ枝分かれし、それぞれ黄み系or青み系の色が似合う。

(ざっくりなので、詳しい診断方法が気になる方は本を探すなり、ググるなりどうぞ)

数々の女性誌で企画が組まれてきたし、SNSでもバズってきた。アパレルブランドのインスタLIVEでも「骨格診断別、似合う新作コーディネート」「イエベ肌・ブルベ肌に似合う夏カラー服」など、本当によく目にする。

かくいう私も、Oggi2017年7月号『私に似合うがわかる本』という別冊を担当したことがある。専門家への取材・監修のもと、イラストを使ってタイプ別に解説したり、スタイリストと打ち合わせを重ね、モデル着用でコーディネートを提案したり…渾身の別冊が完成し、おかげさまで好評いただいた。
↓↓↓(リンク参照)

これらの「骨格診断」「パーソナルカラー診断」の浸透によって、「似合う」ものを選べるようになった人、買い物の失敗を防げるようになった人も増えただろう。

「似合う」の呪縛


しかし、そもそも論になってしまうけれど、「似合う」ってそんなに大事なことなのか。

いや、大事なのは大事。

上に貼り付けた当時のInstagramの投稿にも書いているけれど、私は高校生くらいのとき、多くの本で「小麦肌さんはピンクを着るならサーモンピンクを選ぶべき」と書いているのを読んで、がっかりしたことがある。だって、私はサーモンピンクよりビビッドなピンクやパープルピンクのほうが好きだったから。

しかし、Oggiの別冊をつくるにあたり私も診断してもらった結果、ブルベ肌(Oggi別冊ではプラチナ肌と表記)ということが判明。小麦肌だけれどブルベ肌の私はなんと「青みピンクが似合う」というのだ。

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「似合う」と知ってからというもの、憧れのビビッドピンク、モーブピンクのリップは着々と増えていった。

なにがうれしいって、「好き」なものが「似合う」とわかったことがうれしかった。目に見えない大きな何かに、「小林 文さん、あなたは青みピンクが似合うということを公式に認定します!」と判を押された気分になった。

また、骨格でいうと私は“ウェーブ”タイプ。フェミニンなファッションがよく似合う骨格らしい。なるほど、たしかに、ラップドレスやマーメイドスカートを着ていると褒められるのも、そういうことだったのかと腑に落ちる。

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「ファッションはコミュニケーションツールだ」と論じる声もある。

そういえば、Oggi別冊の監修パーソナルスタイリストへの取材時、こんなことを聞いた。

そのパーソナルスタイリストのもとへ訪ねてくるのは、医師や弁護士、経営者が多い、と。多忙に加え、オフィシャルなシーンで話す機会がある立場の人にとって、効率的かつ説得力のあるビジュアルに整えることが最優先。だから「似合う」服を求めてやってくる…という話。なるほど、深く納得した。

「似合う」服に囲まれた毎日は服選びがスムーズだし、他人から「似合ってるね〜」と褒められる。堂々として見えるから、発する言葉に説得力も増す。あれ? やっぱり「似合う」って最強ではないか!

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一方で私は、「似合う」という言葉のパワーに苦しめられた過去もある。

骨格診断を学べば学ぶほど、「似合う」=「正解」で、それ以外を着た自分は「不正解」なのでは…という不安に襲われた。自他ともに認めるファッション好きの私がファッションを怖がり、自他ともに認める買い物好きの私が買い物をまったくしない1ヶ月があったほど。

今「似合う服がわからない」人の多くは、「似合う」という言葉に縛られているからかもしれない。

そういう意味で、私は「似合う」という範囲の中から服を選ぶ、”逆引き的”な買い物はあまりオススメしない。

「好きな服」を「似合う服」にするために


こういう話をすると、「他人目線ではなく自分目線で服を選ぼう」という答えに着地しがちになるが、私が言いたいことはそれともまた少し違う。

私だって、家族や友人、仕事先で「いいね!」と言われるのは素直にうれしいし、自信にも繋がる。自分自身が気持ちよければ他人の目なんてまったく気にしない、なんてことはない。

けれど、誰かからの「いいね!」よりも先に、あくまで自分が自分に「いいね〜〜〜!」と納得していたい。自分が選んだ「好き」を身につけているとき、他人にも「いいね!」と称賛の言葉をもらえたら、それが一番うれしい。

そういう意味で、「好きな服」を「似合う服」にすることが、一番健康的だと信じている。

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では、私が「好きな服」と「似合う服」の溝を埋めるために何をしてきたか。

それはもう、一にも二にも”トライ&エラー”、これに尽きる。

”トライ&エラー”は、自分の体で試すこと。本や雑誌、SNSでの情報収集は有益だけれど、それでわかった気にならないことが非常に重要。頭で理解するのと、体で感じるのとではまったくの別物だから。

「わ、このスカート着てみたい!」「デニムをカッコよくはきこなしたい!」といった、単純なことでいい。このとき大事なのは、自分自身を必要以上に小さく見積もらないこと。海外のスナップや往年の映画スターをみて、「私はモロ日本人顔だし…こんなにスタイル良くないし…」と足りないところを探して、一歩ふみ出すことをためらうとイイことはひとつもない。つべこべ言わずにまずはトライして、いっぱいエラーもして、はじめて「好き」が「似合う」に少し近づく。

前述したとおり、私は骨格診断でいう”ウェーブ体型”で、デニムが似合う骨格ではないらしい。でも、私はデニムが大好きで、デニムが似合う女性にとても憧れている。だから、今までめちゃくちゃ”トライ&エラー”を繰り返した。

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ユニクロやGUなどのプチプラ系、カレンソロジーやスピックアンドスパン、シンゾーンなど洋服ブランドのオリジナル、そして、パリやNY、バンコクで宝探し的に出合うヴィンテージのリーバイス。スキニーもストレートもワイドもフレアも、色落ちのないインディゴも淡い淡いライトブルーも…「素敵!」と思ったものはすぐさま試着する。着用している自分を鏡越しにいろんな角度から眺める。

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シャツもしかり。デニム同様、”ウェーブ”には、「似合う」アイテムとして選出されていない。それでもやっぱりシャツならではの、凛としていて、オーセンティックで、しなやかな雰囲気が「好き」。素材、色、襟の形、サイズ感、あれこれ試してきた。

そうして、デニムもシャツも、自分が納得して着ていられるアイテムになった。

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吟味して吟味して、気に入って買ってきたはずなのに、なんだかしっくりこないこともある。けれど、「似合わない」とガッカリするより先に、自分で着こなしを工夫したり、モノ自体をカスタムしたり、はたまたメイクを変えたりしてみる。

例えば、大きく鋭角な襟が特徴の白シャツ。一枚で着ると小さい体とのバランスがチグハグで落としどころがわからないけれど、上からクルーネックのニットを着て襟を出すと、それを含めて一枚のニットのように落ち着き、体に馴染む。

少しチャレンジングかな〜という色(黄みがかった赤など)のアイテム。私の場合、ボルドー寄りのブラウンリップを唇に塗ると、まるで何年も前から自分のものだったようにしっくりくる。

ボートネックのカットソー。意外と日本のブランドには肩先がのぞくほどの攻めたボートネックが少ないのだけれど、洗濯して干す際、まだ濡れている状態で、ネックの両端をハンガーの肩のぎりぎりまで伸ばして干すと、乾いたときにちょうどよくデコルテがのぞく、理想的なボートネックに仕上がる。

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せっかく一度は気に入って買ったきたモノ。ちょっとくらいのことでは、手放したりはしない。書きながら気がついたが、「好き」を「似合う」にするために、”トライ&エラー”に加えて、”執念深さ”も大事にしてきたようだ。

自分にとっての褒め言葉はなにか


自分にとっての褒め言葉とはなにか、を考えてみてもいいかもしれない。ちなみに、私にとって、「似合う」は必ずしも褒め言葉ではない。類義語として「〇〇さんらしい」という言葉もそう。

もちろん、相手はそれを褒め言葉として善意で言ってくれていることはわかっているので、こちらも「ありがとう!」と返答する。褒めてくださったことへの感謝の気持ちはもちろんある。

けれど、「らしい」と言われて、「こういうのだけが私じゃないけどね〜」「違う一面もありますよ〜」と心の中で思うことも多々ある。だって、私はいろいろあって36歳の今、ここにいて、これを着ているんだから。

10歳のころの私、18歳のころの私、25歳のころの私、28歳のころの私、そして36歳の現在進行系の私。それぞれ出会うタイミングや付き合いの期間、関係性によって、「小林 文らしい」は微妙に異なるし、だからこそ、「らしい」という言葉はあやふや。それを発する人自身の「この人はこういう人でいてほしい」という一種の願望も含まれていたりする。

そのあやふやな「らしい」を自分の ”ものさし” にして例えば服を選ぶと、「期待にこたえなくては…」と妙な方向へベクトルが向いてしまい、危険だ(私にも経験アリ)。

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私にとって、「似合う」や「らしい」以外の褒め言葉はなにか。

それは、「私も着てみたくなりました」や「気になります」。

SNSや誌面、記事で、私が着ているモノ、気に入って長年使っているモノについて熱っぽく語っていることに対していただくこれらのコメントは、素直にうれしいし、めちゃくちゃ励みになる。「似合う」や「らしい」という私自身に対しての褒め言葉より、誰かのなにかに影響を与えられていると実感できるほうが、私にとってはずっと価値があるから。

学生時代から今に至るまで、人一倍買い物をして、”トライ&エラー”を繰り返して、ときに散財して(笑)…そうして培った ”買い物筋” が今の私を形成しているし、魂の言葉として受け取ってもらえることがうれしい。

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繰り返しになるけれど、私にとって、「好き」=「似合う」にするための一番の近道は、 ”トライ&エラー” を恐れないこと、自分の財布で "買い物" をすること。

大学の授業の空き時間、大学から徒歩5分のGAPでレディースはもちろん、キッズやメンズを含め毎日試着していたし、営業マン時代もアポとアポの休憩時間は、カフェよりルミネに駆け込んで試着や買い物を繰り返した。

この仕事に就いて、シーズンに先駆けたブランドの展示会へ行くと、その場でオーダーさせていただく機会もあるが、できる限り、リアルなシーズンに自分でショップへ行き買い物をすることにこだわっているのも、 ”買い物” による ”トライ&エラー” が信条だからだ。

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自分の買い物話を誰かに話す(書く)のも、誰かの買い物話を聴く(読む)ことも大好き。2019年からmi-mollet内で連載している『イイワケの多い買い物』でも想いを吐き出している。
↓↓↓(リンク参照)

最後に。

ファッションに限らず、 ”トライ&エラー” を楽しんでみたくなる、 ”買い物” にまつわる、私の推し本をご紹介。「似合う」や「正解」をアピールせず、その人の細かい「好き」に偏っているもの。「買い物はいつも贈りもの〜大好きなあの人に、大切な自分に」「買い物バンザイ!」などのタイトルどおり、「そうそう!」とポジティブな気持ちにしてくれる。

IMG_1356のコピー

サステナブルが叫ばれ、ファッションにおいても「ミニマルな買い物」が推奨されている昨今。私自身、湯水のように消費しよう、と提言したいのではない。けれど、あくまで自分を知るために、自分の「好き」を「似合う」に近づけるために、健康的な買い物は勧めたいし、私も続けていきたい、と思っている。

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P.S.

久しぶりの更新、失礼しました。
年始に掲げた「月2更新」…もはやどんなピッチで更新したら追いつくか、逆算するのが怖いですが、年末までにできるだけたくさんアップしていきます。よかったら、次回も楽しみにしていていただければ…幸いです!

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小林 文/エディター

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