ショートストーリー ベーコンエッグトースト

有名アニメ映画がテレビで放送された翌日は、必ずといって良い確率で用意する。
焼いたパンの上にベーコンと目玉焼きを乗せるだけ。
味付けはしない。
いつもなら、もっと濃い味付けが恋しくなるのに、この日だけは、この自然的な味付けが好ましくなる。

アニメのワンシーンを思い出して窓を開ければ、聞き慣れた生活音。
車のエンジンと走り去る音。
歩道では吠えたがりの犬が、飼い主を引っ張ってでもランニング中のお兄さんに威嚇し続ける。
オバ様達の井戸端会議。
パンを噛り、マンションの二階から外の世界に思いを馳せる。

休日であっても、見慣れた景色は恋でもしなければ、爽やかにはなるはずがない日常風景。
それでも、色鮮やかに見えるくらいにはなる。
エンジン音には人間の知恵を感じ、犬と飼い主とランニング中のお兄さんには縁が見え、オバ様達には旧い絆が見える。

噛み切りにくいベーコンをすすり、目玉焼きの黄身が垂れるのを防ぎ、パンを半分以上消費する。

落ち着いた頃に、開けた窓から下を覗くと、誰もいなくなっていた。
車だけが、ひっきりなしに流れていく。

目玉焼きの白身を落とさないように、トーストを噛じる。
塩気の無さに、物足りなさを覚えた。
ピーッと鳴って、ポットがお湯が沸かせたことを知らせてくれた。

インスタントコーヒーを取ろうとして、紅茶に手を伸ばし、もう一度昨日見たの主人公を思い出した。
残りのトーストを噛じれば、目玉焼きの残りが全て付いてきた。
やはり塩気はない。
そのうえ、トーストも目玉焼きも冷えていた。
だが、味わい深さと昨日のドキドキ感が蘇ってきた。

食後の紅茶を飲み干して、出会いがある期待だけ持って家を出た。

沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。