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season1-14 MJは生きている

【前回までのあらすじ】

英語が喋れるようになりたくて米兵ご用達のストリップクラブでバーテンのバイトを始めた小橋。

毎日刺激的な生活を送る中、ミリタリーポリスにもよく遭遇していた。

そんな小橋は徐々に簡単な日常会話程度は出来るようになってきていた。

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マイケルジャクソン。誰もが知る伝説のエンターテイナーだ。子供の頃から兄弟とジャクソン5というグループで活動し人気を博し、大人になってからもずっと爆売れしていたカリスマ。数々のミリオンヒットを飛ばし、革新的なダンスは圧巻だ。世界ツアーなどでも全公演即完。その人気は世界一だったが、2009年に急死した。世界中に衝撃を与えた。あまりに突然の訃報にマイケル生存説まで出ている。

実は、僕はマイケル生存説を信じている。なぜかというと、僕は今から10年前の2010年にマイケルジャクソンに会ったことがある。信じてくれる人だけ信じてくれればいい。

あれは2010年の年明けだった。マイケルの訃報から3カ月ぐらいたったころ。僕も世界中のみんなと同様、ショックを引きずったままストリップでバイトをしていた。ストリップクラブではマイケルを弔うかのようにマイケルの曲を流し、ダンサーはそれに合わせて踊る。

その日、深夜0時に店を閉めて、閉店作業も終わった僕はごみを捨てる為にみんなより一足早くお店を出た。僕らの店は3階。正直、この時間に一人で外に出るのは怖い。1階まで続く階段は薄暗く、まれに酔っぱらった軍人が階段で潰れていたりする。万が一絡まれたら敵いっこない。

その日は2階のカントリーバーから出てきた酔っ払いのお客さんに「Hey.」と挨拶されて「Hey.」と返すぐらいで終わった。何事もなく1階について外に出る。ゴミ捨て場に向かおうとすると後ろから声をかけられた。

「Excuse me.Can you help me?」

後ろを見ると、暗がりの中に人が立っている。ぞっとした。何かを手伝ってほしそうだが、怖すぎる。まず顔が全く見えない。コナンの犯人みたいに真っ黒だ。そして少し笑っている。その歯だけが暗闇に浮いて余計に不気味さを演出している。妖怪に睨まれた気分だ。まず、助けてほしいならそんなところからでなく近寄ってきてから話かけるべきだ。

僕は一瞬振り向いてその姿を確認すると、防衛本能であとずさりをした。そしてゴミ捨て場まで走り出した。やばい、あれはやばい。殺されるかもしれない。もうこのまま店には戻らないほうがいい。車のカギと携帯は店に置きっぱなしだ。でも幸いなことに財布は持ってきている。今日は歩いて帰って、明日取りに行けばいい。

だがそこで思った。このまま僕が消えたら店のメンバーが心配するのではないか。音沙汰もなしに車も残していなくなったら事件に巻き込まれたと思われる。携帯をもってきてないから連絡することも出来ない。それだけならまだしも、店のメンバーにこの状況を伝えないと、何も知らずに一人で降りてきたメンバーがやられてしまう可能性がある。それはやばい。どうにか店に戻らないと。だけど店は3階だ。裏口のようなものもない。あそこをもう一度通るしかない。よし、見えてないふりだ。万が一まだあいつがあそこにいて話しかけてきても、目を合わさずに階段を駆け上がればいい。

人間は危機的状況に陥ると頭のフル回転する。この時の僕は2秒の間にそう思った。そして、意を決してお店の階段の方に向かって角を曲がった。

そこに、奴はいた。角を曲がった瞬間に、目の前に奴はいた。目が合ってしまった。奴との距離は1メートルだった。だが、僕は想像していたのとは違うところで衝撃を受けた。

その人は、マイケルジャクソンに瓜二つの女性だった。

そしてその人は言った。

「Excuse me.Can you help me?」

僕の頭はまたフル回転だ。なんだこの女の人は。マイケルジャクソンに似ている。いや、似ているどころじゃない。同じ目、同じ鼻だ。マイケルを生で見たことはないが、この特徴的なパーツを見間違えるはずがない。でもマイケルは亡くなったはずだ。待てよ、マイケル生存説を聞いたことがあるぞ。死んだふりをしてひっそりと暮らしているという噂だ。まさかマイケル本人なのか?いや、ありえない。だってこの人は女性だ。・・・でもこんなに似ているというのはあり得ない。ジャネットジャクソンだってマイケルにはここまで似ていない。そもそもジャネットはそんなに似ていない。・・・わかった。この人は女装したマイケル本人だ。生存説がばれないように女装しているのだ。多分マイケルは沖縄が好きなんだ。女装して沖縄にいたらばれないと思っているんだ。意外とちっさいんだな。でもこのことは口外出来ない。俺はマイケルの秘密を知ってしまった。そして今マイケルは俺に助けを求めている。何か力になってやらないと。

僕「What?」

MJ「Come on.」

そう言われ、僕はマイケルに手を取られ連れていかれた。連れていかれた先は建物と建物の間の狭い路地だった。もしかして、こんななんでもないところにマイケルの秘密基地でもあるというのか?そこには執事達がたくさんいて、ひっそりと暮らしているのか?でもなぜそこに僕を連れて行くんだ?やばいかもしれない。僕はマイケルの秘密を知ってしまった。殺されるのかもしれない。逃げるべきか・・・でもここまで来たら後戻りはできない。世界中の誰も知らない秘密を知れるかもしれないんだ。そのままついていくしかない。そう思い、片言の英語で話しかけた。

僕「Where are we going.」

MJ「Here.」

ここ!?どういうこと!?

ここからは今の英語力では当時の会話を思い出せないので、日本語でお伝えします。

MJ「私は日本人の男の子が大好きなの。」

僕「そうなんだ。ところでマイケル、僕に手伝ってほしい事ってなんだい?」

MJ「マイケル?私の名前はマリーよ。よろしくね。」

僕「そうか、マイケルは今はマリーと名乗っているのか。それは失礼だった。こちらこそよろしく。秘密は絶対に守るよ。」

MJ「秘密?何の話をしているの?そんなことより、私はあなたの事をもっと知りたいと思っているの。」

僕「そんなこと言ってもらえるなんて光栄だ。僕もあなたの事の真実をもっと知っていきたいよ。」

MJ「よくわからないけど、この路地ならだれも来ないわ。良い事してあげる。」

僕「良い事ってなんだい?歌を歌ってくれるの?だとしたら一生忘れられない思い出になるよ。」

MJ「そんなことじゃないわ。もっといい事よ。ズボンを脱いでくれたら良い事してあげるわ。」

僕「なんだって!?マイケル、正気か!?」

MJ「マリーよ。正気だわ。30ドルで気持ちよくしてあげる。」

僕「失望したよ!そんなことする為に死亡説まで流したなんて!あなたほどの人が何を考えているんだ!こんな事ファンに知られてみろ!みんなとんでもなく落ち込むぞ!」

MJ「ちっ、何よ急に怒り始めて。変な日本人。ただ30ドルで気持ちよくしてあげるって言ってるだけじゃない。もういいわ。さよなら。」

そしてマリーと名乗るマイケルは去っていった。僕は幻滅した。マイケルは死亡説まで流して沖縄で何をやっているんだ。しかも世界の大スターがたった30ドルだって?安過ぎるだろ。もしかしたら、死亡説を流した時に、嘘だとばれないようにお金を使いすぎて今はお金が全然ないのかもしれないな。それにしても凄い女装だったな。完全に女の人だったぞ。そうか、整形したのかもしれないな。もう女性として生きているのかもしれない。だったら顔を変えればいいのに。

店に戻り今の出来事を店長に話した。

店長「気をつけろよ。あの女、うちの客狙ってずっと前からこの辺うろついてんだよ。まじ似てるよな。誰が女装したマイケルジャクソンにお金払うんだって話だよな。」

店長はマリーがマイケルだと気づいていなかった。でも僕は確信している。あれはマイケルだ。今ももしかしたら、マイケルは沖縄でひっそりと暮らしているかもしれない。

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