23-24シーズン バイヤー04レヴァークーゼン総括

ブンデスリーガ23-24シーズンすべての日程を終了しました。
10年ほどレヴァークーゼンを追っていた筆者としても良くてCL、ELには行きたい程度に思っていた近年のレヴァークーゼンからは想像がつかない国内無敗の2冠、51試合無敗という素晴らしいシーズンを過ごしました。

今シーズンのレヴァークーゼンといえばその土壇場の後半ATでの得点も多くありました。
アディショナルタイムでのゴールは全コンペティション合わせて17ゴール、内ブンデスリーガでは8ゴールになりました。
この成績を幸運の一言で片づけることはできません。
選手、スタッフ、サポーターすべてが勝利を信じるメンタリティがありました。
1人のファンとしても「先制されて今日こそは負けるかもしれない。でも勝てる気がする」という気持ちを感じながら今シーズンを追っていました。

そんなレヴァークーゼンの23-24シーズンを振り返りたいと思います。


昨シーズンと昨夏の移籍振り返り

昨シーズン

昨シーズンはブンデスリーガ8試合を終えた時点での順位は降格圏の17位に沈み、セオアネ監督からシャビ・アロンソ監督へを引き継がれました。
順位を盛り返し6位でシーズンを終えましたが、7位ではヨーロッパリーグではなくUEFAカンファレンスリーグ入りとなります。
最終節レヴァークーゼンはボーフムに敗北したため、フランクフルトとヴォルフスブルクの結果にヨーロッパリーグ圏を委ねる事になりました。ヴォルフスブルクが勝利したため、レヴァークーゼンはヨーロッパリーグに6位で参加することが叶いました。

昨夏の移籍市場

すべての移籍には触れず、影響の大きかった移籍について述べます。

放出

  • ムサ・ディアビー(5500万€)⇒アストン・ヴィラ

  • ミチェル・バッカー(950万€)⇒アタランタ

  • ケレム・デミルバイ(370万€)⇒ガラタサライ

加入

  • ネイサン・テラ(2330万€)⇐サウサンプトン

  • ビクター・ボニフェイス(2050万€)⇐ユニオン・サン=ジロワーズ

  • グラニト・ジャカ(1500万€)⇐アーセナル

  • ヨナス・ホフマン(1000万€)⇐ボルシア・メンヒェングラートバッハ

  • マテイ・コヴァージュ(500万€)⇐マンチェスター・ユナイテッド

  • アレハンドロ・グリマルド(フリー)⇐ベンフィカ

  • ヨシップ・スタニシッチ(ローン)⇐バイエルン・ミュンヘン

昨夏の移籍市場には近年のレヴァークーゼンでは見られないある特徴がありました。
それはジャカとホフマンという30歳を超える選手を2名獲得したことです。
これまで10年間、レヴァークーゼンは30歳未満の選手のみ獲得するという方針をとっていました。例外的に2013年にスパヒッチ(当時32歳)獲得したものの、それ以外で30歳を超える選手の獲得はありませんでした。
20-21シーズンにラース・ベンダー、21-22シーズンにバウムガルトリンガーという2人のキャプテンが居なくなり、22-23シーズンではチームの背中を押すキャプテンの不在を見ていても感じたところでした。
そこでジャカというアーセナルでのキャプテン経験を持ち、チームに規律と意識をもたらす選手の獲得は大きな意味がありました。

戦術

23-24シーズン レヴァークーゼンフォーメーション
※アミリ(冬退団) ※イグレシアス(冬入団)

昨シーズンまでのレヴァークーゼン

過去のレヴァークーゼンは得点も多いが失点も多いクラブでした。
例えば16-17シーズンにドルトムントに6-2で敗れたり、21-22シーズンにグロイターフュルトに7-1で勝利するなど、決して安定感のあるチームではありませんでした。
戦術的にもカウンターに比重を置くものの守備は基本的には脆く、攻めれる相手には大量得点が期待できるが、カウンターの打ち合いになると守備の脆さが露呈して大量失点がありえるチームでした。

今シーズンのレヴァークーゼン(攻撃)

そんなレヴァークーゼンがシャビ・アロンソの下、安定感を手に入れたのが今季のレヴァークーゼンだったと思います。
昨シーズンはディアビとフリンポンという右サイドのスピードスター2枚に頼り切ったカウンターサッカーを展開してましたが、今シーズンは攻撃は左右均等にそれぞれ30~40%の攻撃比率を維持してきました。
その攻撃比率を支えたのが左のグリマルドとヴィルツ、右のフリンポンとホフマン(アドリ)でした。
タスクとしては左右では異なります。
左ではグリマルドとヴィルツはコンビネーションを駆使し、そこにジャカが絡む事でボックスへ侵入していく形を多くとります。
グリマルドが受ければヴィルツは裏へ走り、グリマルドからのパスを受ける準備をすると同時に中のスペースを提供します。
右ではフリンポンの突破を邪魔せずサポートする位置にホフマンが位置取り、ボールの逃がしどころとしてコスヌが上がってサポートするのが基本形としてありました。
ヴィルツはかなりの自由を与えられていたと思います。逆サイドのサポートに行くこともいとわず、試合中立ち止まったり歩く事は少なく、常にステップやジョグで最適な位置を探し、ポジショニングと技術でチームとして攻撃のアクセントを与え続けていました。
両サイドで多くの起点を作り、逆サイドで仕留めるスタイルはブンデスリーガで左WBグリマルドが10G14A、右WBフリンポンが9G9Aというスタッツに現れてきます。
ビルドアップにおいてもCB3人とCH2人のパス精度は欠かす事ができません。
受け手となる選手は守備者の中間点、ゲートにポジショニングすることがビルドアップの条件になっていましたが、そこへのパスを通す役割をCBとCHの5人が担います。
パスコースがなければコスヌやタプソバが持ち上がり、相手ボックス付近まで運ぶ事もありました。

今シーズンのレヴァークーゼン(守備)

守備においても今シーズンのレヴァークーゼンは大きな変革が数値に現れました。
ブンデスリーガでの平均失点数が0.71となり、シーズン全体では0.65でした。
要因として、ボールロスト時の回収速度がとても早い事があげられます。
ブンデスリーガ試合中にはボールロストから回収までの平均時間が表示されるのですが、概ね10秒~15秒程度でボールを回収します。
仮にボックスまで攻められていた場合、カウンターでゴールを奪うには14秒程度が必要とされていますが、今季のレヴァークーゼンの回収速度ではカウンターを完遂することがとても難しくなります。
この成績は18節のライプツィヒ戦までカウンターでの失点がなかった事に繋がります。
ではなぜそこまでボール回収が早いのか。
攻撃時にボールに対してアプローチできる選手を多く配置することで、ロスト時にも同様にボールへのアプローチを早め、ハイプレスを掛ける事で早い回収を行ってきました。
CB3人とも足が速く、ハイプレスを抜けられた場合にも追いついてカバーする事ができました。
ゲームの中でセット守備をしなければならない場合は5-3-2の形を軸として守備陣形を形成していましたが、21節バイエルン戦、31節シュトゥットガルト戦は5-4-1の守備陣形で戦いました。

ブンデスリーガ

本題のブンデスリーガについていくつかの試合を取り上げながら述べていきます。
今シーズンのブンデスリーガ日程は1節RBライプツィヒ、2節ボルシアMG、4節バイエルンミュンヘンと序盤に難敵が揃う日程となりました。
またこの日程はアフリカネイションズカップでライプツィヒ、ボルシアMG、ダルムシュタット、バイエルン・ミュンヘンの4戦をアフリカ勢選手、コスヌ、タプソバ、ボニフェイスの3人を欠く可能性がありました。
結果的にタプソバはダルムシュタット戦で復帰しましたが、コスヌは優勝したためアフリカネイションズカップ開催中には戻らず、ボニフェイスは怪我で長期の離脱となりました。
怪我をしていたシックが復帰したものの、ボニフェイスの怪我に伴いバックアップとしてイグレシアスをベティスよりローンで獲得し、アミリが出場機会を求めてマインツへを移籍しました。

第1節 3-2 RBライプツィヒ戦(ホーム)

今シーズンのレヴァークーゼンの戦い方のコンセプトを示した開幕戦でした。
敵陣半分ほどの左サイド、ダニ・オルモを包囲しバックパスに反応して全員がプレスを掛け、ボールをGKまで戻させます。GKはCBにボールを逃がすも完全にプレスに嵌っていたため、ロングボールを蹴らざるを得なくなり、ロングボールをコスヌが刈り取るところから攻撃がスタートします。
ボールを刈り取ったコスヌはジャカにボールを預け、ジャカはすぐに前線ボニフェイスにロブボールを上げて抜け出します。ボニフェイスが空けたスペースにフリンポンが入り込みボニフェイスからのボールを受けてゴール。シーズン最初の得点となりました。
決して戦術的に新しい事をしている訳ではないのですが、相手の選択肢を奪い早く攻める。というコンセプトを徹底したゴールになりました。

この試合においてもう1つ鍵となるシーンがあります。
27分、コスヌが自陣で奪ったボールを近くのホフマンに預け、ホフマンはフリンポンへボールを出し、フリンポンはドリブルで縦への突破を図ります。ボールの出し手であるホフマンはどうしても遅れてしまうので、代わりにコスヌが上がり、フリンポンのサポートに入ります。
フリンポンは突破に失敗してボールロストしてしまうのですが、相手DFにそのままコヌスがプレスを掛けてカウンターを抑制し、その間にホフマンが守備位置と直してボールを再回収することに成功しています。

ボールに対する密度を高めて相手のプレーを限定させて素早い攻撃を許さず、プレスを継続してプレーを常に限定させ、ボールが出た先を潰すという守備のコンセプト。
選手のポジションではなく、現在位置によって攻撃時のポジショニングを決定付けるという攻撃のコンセプト。
ポジションによらず、代わりができる位置にいる選手が代わりを果たすというトランジションのコンセプト。
3つのコンセプトが示された2シーンだったと思います。

第4節 2-2 バイエルン・ミュンヘン戦(アウェー)

ブンデスリーガにおいて、バイエルン相手にどこまでやれるかがある種のベンチマーク的なゲームになると思います。
この試合は個人能力の差を見せつけられる試合になりました。
プレスが嵌らず、囲んでも個人技で突破されるというシーンが多くあり、とても苦しい試合展開になりました。
セットプレーからケインに先制点を許すもグリマルドのFKで同点。85分に左サイドからのパスをゴレツカに決められ1点のリードを許すも92分にホフマンが受けたファウルで貰ったPKをパラシオスが決めて辛くも同点。という試合でした。

特に2失点目のシーンはコスヌがテルと正対するもののサポートはなく、近くで2人の選手が傍観してるという状況から生まれた失点だったので、シーズン最悪の失点シーンだったと思います。

良いシーンもありましたが、通してみると圧倒された印象のゲームながらバイエルンに引き分けという事実はチームとして自信に繋がったと思います。
この試合が後に続くアディショナルタイムでの最初のゴールとなりました。

第18節 2-3 RBライプツィヒ戦 (アウェー)

この試合は31節のシュトゥットガルト戦の試合が行われるまで、一番苦戦した試合に挙げようと思っていました。
これまで核を成してきたコスヌ、タプソバ、アドリのアフリカネイションズカップ組とボニフェイスを負傷で欠いたウィンターブレーク明けの2試合目です。
先制点を許し、1点返すもさらに追加点を取られてしまいながらも2点獲得して勝利した試合でした。

ライプツィヒの1点目、シュラーガーからの横パスをボックス内で受けたシャビシモンズに後ろを向かせる事には成功するのですが振り向きで決められてしまいます。シャビ・シモンズの技術にやられてしまった失点でした。

レバークーゼン1点目、ターからインカピエに渡ったボールは大外でヴィルツに渡ります。普段は大外に居るのはグリマルドですが、このシーンではヴィルツが大外に居たので、グリマルドとヴィルツのタスクが逆転しています。
ヴィルツが受けてグリマルドは右SBのシマカンの裏に走り込みますが、この時点では使わず、一度中のホフマンに当ててグリマルドへ。
シマカンの視線と体をホフマンに向かわせた事で時間的優位を持った状態でグリマルドはグラウンダークロスで逆サイドのテラへ渡して無人のゴールで押し込む得点でした。
このシーンはヴィルツとグリマルドのタスク交換、現在位置とボールとの位置関係によってタスクが振り分けられるという戦い方を現したシーンだと思います。

55分、ショートコーナーをシモンズに奪われます。インカピエがすかさずプレスを掛けるも突破を許してしまいます。
ハーフウェイまで運んだところ、帰陣したレヴァークーゼン守備陣3人のマークを受けた瞬間に右のダニ・オルモへ。ダニ・オルモからダイレクトでオペンダに渡り、オペンダもダイレクトでゴールに蹴り込み再びリードを許してしまいます。
5:5のカウンターシーンではありましたが、ライプツィヒの鋭いカウンターにやられてしまいました。
今シーズン最初のカウンターでの失点で、レヴァークーゼンを応援してる側からもしても脱帽ものの素晴らしいカウンターだったと思います。

この試合でもレヴァークーゼンの勝負強さが出ました。
右からのコーナーをグリマルドがファーへ蹴り込むとインカピエが押し込んでの得点でした。
ニアサイドにアンドリヒ、スタニシッチ、シックの3人が走り込み、インカピエが遅れてファーに走り込む得点でした。
ボックスの外でホフマンが手を振ってサインを出していたように見えるので、おそらくデザインされたコーナーだったのではないでしょうか。

第21節 3-0 バイエルン・ミュンヘン戦(ホーム)

バイエルン・ミュンヘンに白旗を上げさせた試合です。
試合後バイエルン監督のトゥヘルにレヴァークーゼンの優勝をお祝いされる出来でした。
普段守備時は5-3-2の形をとるレヴァークーゼンですが、この試合では5-4-1の守備陣形を敷いていました。
5-3-2では守り切れないと思ったのかは定かではありませんが、これまでのハイプレスで早いボール回収を重視する試合展開から、低くしっかり守ろうという意図を感じられました。
バイエルン側はハイプレスで来るという想定で試合に臨んでいたように見え、プレー中に戸惑っている姿が散見されました。
バイエルンの目論見を外させる試合展開にすることに成功していました。

1点目、左コーナーでヴィルツからショートでアンドリヒへ。アンドリヒはボックス左脇から逆足でウパメカノの股を抜くグラウンダークロスは逆サイドのスタニシッチに渡り、押し込んで先制。
これ以上に語る事のない見たままの、しかし何度も見てきた形の得点でした。

2点目、スタニシッチが自陣深い場所で包囲されそうになってしまいますが、ワンタッチで蹴りだしたボールはピッチ中央で右セカンドトップで出ていたテラへ渡ります。
パヴロヴィッチにマークされたテラは左のグリマルドへ。グリマルドはパヴロヴィッチと正対し、大外でインカピエがマズラウィをピン止めします。
そこで空いたテラにボールを戻し、テラは裏抜けを待ってグリマルドへのラストパス、グリマルドはニア上に決めて2得点目です。
実質的にテラとグリマルドの2人をパヴロヴィッチ1人で見なければならない状況ができていたのですが、バイエルンにコミュニケーションエラーがありました。
テラからのラストパスのシーン、ミンジェがパヴロヴィッチにグリマルドのマークにつくよう指示を出しているのですが、パヴロヴィッチはテラのマークに着いてしまいます。このことでグリマルドに裏抜けするスペースを提供してしまったのが得点につながった要因として大きいと思います。

3点目、この日もATでの得点になりました。
バイエルンのコーナーを弾いたボールはタプソバからテラと交代で入ったフリンポンへ渡ります。フリンポンは1人剥がして右大外へ逃げますが、強いシュートをゴールへ蹴り込みます。ノイアーはCKで上がっていたため無人のゴールではありましたが、弱いシュートだとザネが追い付いていたのでコースと強さが絶妙なシュートでした。

第31節 2-2 シュトゥットガルト戦(ホーム)

日程を考慮してか、ヴィルツとボニフェイスをベンチに置いたこの試合はウンダヴとギラシにチャンスを量産された試合でした。
今シーズンのブンデスリーガで最も負けを覚悟した試合であり、苦しんだ試合でした。
見ていて「終わった」と思わされるシーンが何度もありました。
2失点とも球際の競り合いで負けた事からの失点でしたし、中盤からの裏抜けでウンダヴにフリーで合わせられるシーンも、レベリングにグリマルドの裏を取られてマイナスクロスでギラシに合わせられるシーンもありました。
失点こそ2でしたが、大量失点していないのが不思議な試合でした。

インカピエが左大外で持ち上がり、インサイドレーンで待っていたグリマルドへ。グリマルドからアドリへ渡り、アドリはゴール右下隅へ蹴り込み1点返します。
インカピエの持ち上がりが功を奏した形ですが、ここまであまり見られなかったガムシャラな攻めに見えました。

95分ラストプレー、左サイドからのフリーキックをGKの目の前でインカピエの落しをアンドリヒが逆足で蹴り込んで同点に追いつきました。

ヨーロッパリーグ

昨シーズンの成績でたなぼた的に参加することになったヨーロッパリーグです。
ベスト16のカラバフ戦、決勝のアタランタ戦とブンデスリーガとは違った苦しい試合を強いられたこのコンペティションですが、カラバフとアタランタについて各項で記述していきます。

ベスト16 2-2 カラバフ戦  1stLeg(アウェー)

この試合はメンバーを落とした試合だったと言っていいと思います。
前線にイグレシアスとフロジェクを置き、グリマルドは先発したものの、ジャカとヴィルツ、ボニフェイス、フリンポンのこれまで主力として稼働の多かった選手はベンチスタートとなりました。
2点のビハインドを前半の内に背負う事になってしまいます。
後半早い時間にジャカ、ヴィルツ、フリンポンの3人を投入し、ゲームが傾きました。
ゲームチェンジャーとしてのヴィルツはもちろんですが、チームリーダーとしてのジャカの不在を強く感じる前半でした。
結果的に引き分けになったものの、得点に絡んだのは交代出場の選手が多かったこともあり、采配には少し疑問を感じるゲームになりました。

ターとパラシオスのパス交換の中でパラシオスからターに戻したボールを刈られてしまいます。
その結果2:3のショートカウンターを食らってしまい、1失点目を喫しました。

フロジェクがロストしたボールを2ラインを超えるスルーパスで裏に抜けられてしまい、GKコヴァージュをかわしての2失点目でした。

カラバフCBから中盤に着けるボールに対してコスヌがプレッシャーを掛けます。プレッシャーの掛かったボールをたまらずバックパスをするもミスパスになってしまい、ヴィルツへの絶好のパスになりました。
ヴィルツはいとも簡単にループをゴールに蹴り込み1点を返します。

91分、左サイドからのクロスをシックが合わせに行くも右サイドに流れてしまいます。流れたボールをスタニシッチが拾い、インサイドややマイナスのアンドリヒに渡します。
アンドリヒは一歩持ち出してのクロスをシックが頭で合わせて同点に追いつきました。

ベスト16 3-2 カラバフ戦 2ndLeg(ホーム)

この試合も1stLeg同様に2点のビハインドを背負うことになります。
前半7分の内にすべて決めていればハットトリックになっていたというビッグチャンスをイグレシアスはすべて外しました。
1分にゴール前でクロスのヘッド、5分にGKとの1:1、7分にもGKとの1:1すべてを外してしまいます。
方やカラバフ58分と67分にそれぞれ得点しました。
この試合は3バックの左にアンドリヒを置いていましたが、失点はすべて左サイドからとなりました。
特に1失点目に関してはアンドリヒはほぼ無関係と言って良さそうではあるのですが、あくまでDHの選手であり、CBの選手ではないアンドリヒを責めるのは酷ではあるのですが、采配としてターやスタニシッチの本職DFをベンチに置いてのアンドリヒCB起用には疑問が残りました。
64分にカラバフにレッドカード、72分にフリンポンのゴール、ATにシックの2得点で勝利をつかむ事に成功しますが、序盤のゲーム展開のわりに苦戦したという印象が強く残りましたが、今シーズンのレヴァークーゼンの勝負強さを明確にした試合だったと思います。

1失点目、左サイドからボックスへ2人に侵入されてしまいます。マークに着いていたのはパラシオスとインカピエであり、アンドリヒはゴール前のスペースを消していました。
左サイドからのクロスはCB全員の頭上を越えて逆サイドで流れます。
逆サイドで待っていたズビールに頭で合わせられて失点しまいます。
ズビールにはフリンポンが着いていましたが、目測を誤ったのか、ボールに触れる事ができませんでした。

2得点目、92分にヴィルツのクロスのクリアボールをグリマルドが回収します。
回収してニアに低めの速いクロスを入れるとシックが逆足の右で合わせて追いつく事に成功します。

3得点目、96分に右サイドのボックス手前でシックから戻しを受けたタプソバが左インサイドのボックス外に居たジャカへ、ジャカはパラシオスへボールを渡します
パラシオスのクロスをボックス右からシックが頭で合わせて逆転しました。

決勝 0-3 アタランタ戦 (中立地 ダブリン アビバ・スタジアム)

今シーズンのレヴァークーゼンが唯一敗北した試合でした。
3-4-3のミラーゲームとなったこの試合の前線はヴィルツとアドリとフリンポンの3トップで臨みました。
意図としてはフィジカルバトルでは分が悪いと踏んで、スピード勝負を試みようとしたのだと思います。
しかしその作戦は後ろからのパスが来る前提のものであり、アタランタの術中にハマってしまう事になります。
戦術の項で述べた通り、CB3枚とDH2枚はボールを供給し、サポートするという基盤になる役割があります。
アタランタは常時11人全員にマンマークを敷いてきましたが、特に厳しかったのがCBの3枚であり、ボールを前に蹴り飛ばす事が多くなってしまいました。
前線はボールを収める事に向いた3人ではないので、どうしても収める事ができませんし、ヴィルツが左サイドから右サイドに逃げたとしても左サイドからマーカーがそのまま右サイドに着いてくる徹底ぶりでした。
その徹底したマンマークを最後まで破ることはできず、何もさせてもらえなかった。
アタランタの攻撃に関してもルックマンを止める事ができずハットトリックを許してしまう事になりました。
まさに完敗。悔しい。しかし、このアタランタに負けたのなら仕方ないといった内容の試合でした。
このアタランタがUEFAスーパーカップでRマドリーとの試合がどんな展開になるのか楽しみです。

DFBポカール

シーズン最後のタイトルとなったこのコンペティション、クジ運にも恵まれ、ブンデス1部所属クラブと当たったのが準決勝シュトゥットガルトのみとなりました。
個人的には田中碧所属のデュッセルドルフ戦で田中碧選手との対戦を見たかったのですが、田中碧選手の体調不良により叶いませんでした。
決勝のカイザースラウテルン戦ではコスヌの退場がありながらも1-0で勝利を収めて今シーズン2冠目のタイトル獲得となりました。

選手評価

ブンデスリーガの採点に則って、最高点を1、最低点を5として独断で採点しました。

監督:シャビ・アロンソ 1.0

この人なくして今シーズンの成績はありえなかった。
シルバーコレクター、ネヴァークーゼンなどと揶揄され続けてきたレヴァークーゼンに勝者のメンタリティを植え付け、花を開かせた。
戦術面でもマネジメント面でも素晴らしい功績。

GK:ルーカス・フラデツキー 2.0

良い時は良いが悪い時は悪いという波のあるタイプのGKだったが、今シーズンは安定感を得た。
バイエルン戦でケインとの1:1を防ぐなど、ここぞという所のセーブでチームを救ったキャプテン。
タイトル獲得後にスタンドに乗り込んで感謝と喜びを共有する姿が美しかった。

GK:マテイ・コヴァージュ 3.0

カップ戦要員のGKとしてチームに貢献。
カラバフ戦2ndLegではカラバフの3点目を防ぐビッグセーブを見せてチームを救った。
ビルドアップ面のパスミスでヒヤりとさせられるシーンが散見された。

DF:ヨナタン・ター 1.5

ディフェンスリーダーとして活躍。
公式戦6得点を挙げ、ブンデスリーガ31試合に出場し、DFの絶対的な存在としてプレー。
実はチームトップクラスの足の速さでチームを救い、18節RBライプツィヒ戦で同点弾を決めるなどチームのを助け続けた。
昨シーズンで退団の可能性があったが残留。契約延長は望んでいないようなので来シーズンは恐らくいない。

DF:エドモン・タプソバ 2.5

身体能力とパスセンスに優れたCBとして、初期ビルドアップの中核としてプレーした。
昨シーズンは目測の甘いプレーが見られたが今シーズンは地味ながらも攻守に堅実さを示した。

DF:ピエロ・インカピエ 2.0

CBとしても左SBとしてもプレーできるユーティリティ性でチームに貢献。
試合終盤にグリマルドから守備にシフトするときなど、試合状況に応じる順応性も高かった。
18節RBライプツィヒ戦では決勝点を記録、31節シュトゥットガルト戦では2得点に絡む活躍。
攻守においてチームへの貢献度は高い。
オファーが複数届いているようで、金額次第では移籍が濃厚。

DF:オディロン・コスヌ 3.0

シーズン開始当初こそ戦術的に欠かせない存在であったが、ネイションズカップ以降出場機会が減少。
昨シーズンまであった軽い守備が見られるようになり、ポカール決勝では今シーズンレヴァークーゼンで唯一のレッドカードを貰う。
攻撃をサポートする能力は素晴らしいが、守備面では不安が残った。

DF:アレハンドロ・グリマルド 1.0

今シーズンの成績は彼あってこそ。
公式戦12G20Aの成績は脱帽ものの成績でした。
試合に彼がいると居ないとでは明らかにチームの出来がハッキリと変わるのが分かるほどの大活躍。
実はチームで一番年俸が高額。
28歳にしてスペイン代表に初招集される。

DF:ヨシップ・スタニシッチ 2.0

バイエルンからのローンで加入した選手。
何でこの選手がローンで出されたのか理解できない活躍だった。
CBとしても右WBとしても大事なシーンに絡み続けた。
21節バイエルン戦での先制点、ELローマ戦2ndLegでのAT同点弾など、出場時間は長くないながらもスーパーサブ的立場でチームに勝利をもたらした。
レヴァークーゼンは残留を模索しているらしいが、移籍金が高額なので現時点ではバイエルン復帰が既定路線。

MF:グラニト・ジャカ 1.5

チームの実質的キャプテン。
リーダーとしてチームをけん引し、彼の存在がメンタリティ的に大きな変化をもたらした。
地味ながらボールの経由役として、守備の軸として活躍
ポカール決勝では決勝ミドルを突き刺してタイトルを獲得。
フィールドプレイヤーで最長のプレー時間。

MF:エセキエル・パラシオス 3.0

シーズン初期はジャカの相棒としてそのパス能力を遺憾なく発揮、PK職人としても貢献。
守備の軽さがやや目立った。EL決勝ではルックマンの1点目でボールウォッチャーになってしまった。

MF:ロベルト・アンドリヒ 2.0

今シーズン最も成長した選手だと思う。
4節バイエルン戦で先発するもボールの出し役としては物足りなさを感じた所から、シーズンが進むごとにパスの精度とポジショニングが向上。
アロンソの指導のおかげか、ミドルシュートの精度も良くなり、ボックス内では決定的な仕事をする選手に進化し、パワフルなプレイヤーに技術が身に付いた。
街に居たら目を逸らしたくなる風貌と相まって、荒くれ者の印象だった選手がチームプレイヤーに。イエローカードもブンデスリーガで4枚に留まった。
ゴレツカを押しのけてドイツ代表の中核選手に抜擢された。

MF:ジェレミー・フリンポン 1.5

今シーズン躍進の原動力の1人15G12Aの活躍。
決定的なシーンを外す事があったが、それでもWBとしては考えられない成績を収めた。
縦の突破と周囲のコンビネーションで相手守備を翻弄、シュートポイントを見つける目とスピードは見ている者を楽しませるプレーだった。
ゴールセレブレーションでチームメイトの祝福になぜか時々キレてる。大体矛先はタプソバ。
契約解除条項付きでオファーが多数来ているようなので来シーズンはたぶんいない。

MF:ヨナス・ホフマン 2.5

主に右のシャドーとしてプレー。
IQの高さと気の利いたプレーで8G12Aを記録。
周囲が見えすぎているのか、プレーに迷ってチャンスを逸するシーンあり。また窮屈な体勢でのプレーに難があった。
31歳としてベテランの域のホフマンはジャカとともにチームをけん引する存在だった。

MF:フロリアン・ヴィルツ 1.0

チームの王。MVP。18G20A。
プレーを見るまでもなく、スタメンに彼が名前を連ねているかどうかでその日の期待度が変わる。
昨シーズンの前十字靭帯断裂という大怪我を経て復活した。
リーグ優勝を決定させる29節ブレーメン戦でキャリア初のハットトリックを記録。
常に動き続けてパスを受ける姿勢、受けた後のプレービジョン、まるで未来をが見えているようなプレーの数々と技術は将来のバロンドーラーを確信させるほど。
華奢な体躯に似合わないボディバランスと力の抜き方で体の大きな相手に競られても簡単には失わず、軟体動物のように相手をいなし続ける。
シャビ・アロンソは正式就任前にヴィルツと会った時、ヴィルツの目に監督に使わせたくなる自信とオーラを感じたらしい。

FW:アミン・アドリ 2.5

主にセカンドトップとしてカップ戦を主戦場にプレーした。
ヴィルツやホフマンのバックアップとして機能したものの、シーズン後半にはホフマンより序列が上がった気がする。
22節ハイデンハイム戦では全得点に絡む活躍。
プレーが荒く、累積警告で出場停止された唯一のFW登録選手。

FW:アダム・フロジェク 3.5

32節フランクフルト戦で3A記録する。
技術はあるがプレー判断がイマイチだった。

FW:ネイサン・テラ 2.5

出場時間は短いながらも5G6Aを挙げた。
フリンポンのバックアッパーの位置ではあるが、来シーズンはおそらく右WBのスタメン。
来シーズンフリンポンを失う覚悟のレヴァークーゼンに希望を示した。

FW:ボルハ・イグレシアス 5.0

ベティスからのローンで冬に加入 0G0A。
エスパニョールでの活躍を知っている分、加入時は期待したが残念ながら期待外れに終わった。

FW:ビクター・ボニフェイス 2.0

21G10A
190cmの巨体に似合わない機敏な動きと見た目に違わぬフィジカルでプレーできる万能FW。意外と足元が上手く、ドリブル突破も見せる。左に流れたがる癖があり、中央にドッシリ構えるタイプのFWではない。
利き足は一応右らしいが、左足も上手いので加入直後は利き足が分からなかった。
シーズン初めは得点を量産していたが秋に調子を落とし、冬に外転筋損傷により3か月の離脱。
4月に復帰後5G1Aを記録。
ルーキーオブザマンス4回
プレイヤーオブザマンス1回
ルーキーオブザイヤー
絶望した表情でサッカーをプレーしていた少年はレヴァークーゼンでビッグプレイヤーになった。


FW:パトリック・シック 2.5

怪我でシーズン開始から4か月の離脱ながらも13G3A
ボックス内でのワンタッチゴールは今シーズンも健在だった。
90分出場は3試合に留まるも、16節ボーフム戦でのハットトリック、ELベスト16カラバフ戦のAT2得点など決定的な仕事をしてきた。
優勝でピッチになだれ込んだファンの祝福に無表情だった。
26節フライブルク戦での右からのフリンポンのクロスをニアで左足でフリック、左のポストに当てたあと右のポストに当ててのゴールが筆者のシーズンベストゴールに挙げたい。

個人的なお気に入りシーン

首狩りジャカ

第30節ドルトムント戦
フリンポンとシュロッターベックが言い合いになり、止めに入るために突撃してきたボニフェイスがシュロッターベックを突き飛ばしてしまい、レッドカードを貰ってしまいます。
しかしVARの介入でボニフェイスの突撃に合わせてシュロッターベックの首に腕を回して後ろから刈っていたジャカの存在が。
ボニフェイスのレッドカードは取り消され、ジャカにイエローカードが出ました。
なお、ジャカは審判に抗議の際にシュロッターベックの腰に手を回し、あたかも優しく移動を促しましたみたいな雰囲気を醸し出す。

最終節アウクスブルク戦 19分04秒の黙とう

1904年のクラブ設立に合わせて最終節のアウクスブルク戦で19分04秒から1分間の黙とうが捧げられました。
クラブ創設から120年間の間に亡くなり優勝を見届けられなかったレヴァークーゼンのファンサポーターに対する黙とうでした。
アウクスブルクのサポーターも協力のもと、バイアレーナに1分間の沈黙が訪れました。

フリンポンとテラ

ポジションを争う2人ですがとても仲が良い。
フリンポンが得点すればベンチに居るテラに駆け寄り、テラが得点すればベンチのフリンポンに駆け寄るシーンが何度かありました。
恐らく来シーズンはフリンポンが居ないので、師弟関係のようなものもあると思いますが、ポジションを争う選手同士の仲がいいのはチームが上手く機能してる証拠のようでとても好きなシーンでした。

さいごに

私も4節バイエルン戦を引き分けた時に「もしかしたら」と思いつつも、しかし21節でバイエルンに勝ってなお優勝を信じ切る事ができませんでした。
戦術的に革新的な方策を採っているわけではないが、そのマネジメント力は選手やスタッフ、ひいてはサポーターにまで今の自分たちを信じさせるシャビ・アロンソが今シーズンのレヴァークーゼンに120年待ち望んだ結果をもたらしました。
練習でアロンソがボールを持つと現役の選手が静まりかえるなんて話も聞こえてきます。

スポーツディレクターの実権がルディ・フェラーからジモン・ロルフェスに渡り、長期の視点を持ってチームの強化を進めてきました。
「通過点のクラブから世界で戦えるクラブを目指す」とロルフェスの戦略をビルト誌が報じました。
出典を忘れてしまったのですが、ハヴァーツの売却で基礎ができ、ディアビーの売却で壁と屋根ができたと表現していた気がします。
その表現に則れば、これからレヴァークーゼンという家がどう発展していくのかを楽しみにしています。

最後にミムラユウスケ氏の記事を引用し、締めさせていただきます。


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