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森鴎外の『舞姫』をChatGPTで現代の若者風の言葉で翻訳してみた

割引あり

これは森鴎外の「舞姫」を、ChatGPTを使って現代の若者風の言葉に翻訳したものです。

かなりサクッと訳してるから、原作とのビミョーな違いディスるのとかマジ勘弁ね。まあ、ガチで「舞姫」のバイブス感じたいなら、原文とか他の神翻訳を読むのがいいと思うよ。しっかし「舞姫」ってこんなエグイ話だったとはね。メンタル病むわ。まあ、気になる人は読んでみてよ。


舞姫

やばいっしょ、石炭の積み込み、マジでサクッと終わっちゃったよ。中等室の机のとこ、めっちゃ静かでさ、あの熾熱灯の光も実はイマイチ役立ってないのよね。今夜は、いつもカルタでわいわいやってる連中もホテルで寝てて、船内に俺一人ポツンといる感じ。5年前の話だけど、海外行きたいって願ってたら、マジで海外派遣のミッションゲットして、このサイゴンの港に来た時は、目に入るもの音に聞こえるもの全部新鮮で、毎日ガンガン紀行文書いて、新聞にドバドバ載せられて、みんなからチヤホヤされてたんだよね。でも、今思えば、それってちょっと幼稚で、ちゃんと考えてない無責任なこと言ってたかも。動植物とか鉱石とか風俗とか、普通のものって思えるようになって、それらをめっちゃ珍しいって書いてた自分を、分かってる人たちはどう思ってるのかな。今回旅に出る時、日記書こうって買ったノート、まだまっさらの白紙のまま。これって、ドイツで勉強してた時に、「ニル、アドミラリイ(何にも動じない)」って態度身につけたからかもだけど、実は他にも理由があるんだよね。

マジで、今東に帰ってる俺、前に西に行った時と全然ちがうんだよね。まだまだ勉強足りないけど、世の中の流れや人の心のゆらぎを知って、俺自身や思考もコロコロ変わるって気づいたわ。昨日正しいと思ってたことが、今日じゃ間違ってたりするしさ。そんなのを日記に書いて、誰かに見せたいとは思わないんだよね。ま、それが日記書かない理由だけど、実はそれ以外にも理由あるんだよね。

あー、ブリンディジの港出てから、もう20日くらい経っちゃった。普通なら新しい出会いでワイワイするはずなのに、ちょっと体調悪いのを理由にずーっと部屋に引きこもって、みんなと話すのもナシ。それってね、誰にも知られたくない超ガチな恨みがあるからなの。この恨み、最初はちっちゃな雲みたいにフワッとしてたけど、徐々に俺の心を暗くして、スイスの山々もイタリアの遺跡も心に残らなくて、世界に対しても、自分自身に対しても価値ないって思うようにさせられて、毎日めっちゃ苦しんでたの。今は心の奥深くにこびりついて、手紙読むたび、物見るたび、鏡に映る自分見るたび、過去を思い出させられて、マジで心がえぐられる感じ。あーもう、この恨みどうしたら消えるのかな。他のことなら詩にしたり歌にしたりしてスッキリするかもだけど、これは心に深く刻まれちゃってて。今夜は誰もいないし、しばらく電気もそのままだから、この話、書いてみるわ。

俺、子供のころから家の教育がガチで厳しかったんだよね。でも、おかげで学ぶことにハマって、父さんが早くに亡くなったっていうのに、ずっと勉強に夢中だったわけ。地元の学校でも、東京の予備校でも、法学部に入ってからも、俺、太田豊太郎はいつもトップクラスだったんだよね。それは、母さんにとっても超心強いことだったと思うよ。19歳で学士号取って、みんなからすげーって言われたし。で、官僚になって、地元の母さんを東京に呼んで、3年間ハッピーに過ごしたんだ。仕事もバリバリ評価されて、ついには海外留学って大役ゲット!俺、名前売るチャンスだと思って、50過ぎの母さんとの別れも気にせず、ベルリンに飛んだんだ。

俺、曖昧な名声を求めつつ、マジ勉強力で、あっという間にこのヨーロッパの新しいデカい街の中心にドーンと立ってた。どんなキラキラが、俺の目を奪おうとしてるんだろ。どんなカラフルが、俺のハートを惑わせようとしてるんだろ。'菩提樹の下'って聞くと、静かな境界みたいな感じがするけど、このウンテル・デン・リンデンのでっかい通りに来て、両サイドの石畳の歩道を行き来する男女をチェックしてみ?胸をはって、肩を高くしてる士官たちが、ウィルヘルム一世の時代の街みたいだし、パリ風のドレスアップしたキレイな女の子たちは、色とりどりのドレスでキラキラしてるし。ここにいる人たちの姿に、ビックリしないわけないよね。アスファルトの道を静かに走るイロイロな馬車、空高くのビルの間から、晴れた空に夕立の音を響かせる噴水、遠くから見るとブランデンブルク門の向こうに、緑の木々に囲まれた凱旋門の女神の像とか、これらスゲー景色が目の前に集まってるから、初めてここに来た人がパニックになるのもムリないよね。でも俺のハートには、どんな状況でも、その場の美しさに心を動かされないって誓いがあって、いつも外からの刺激を遮断して、グッと抑えてたんだ。

俺、ベル鳴らして「こっち東から来たんだよね」とか言って、公式なお手紙見せたらさ、プロイセンのオフィシャルな人たちめっちゃウェルカムムードでチョロかったんだよね。大使館の手続きもサクッと終わって、なんでも教えてくれるって言ってくれたの。ラッキーなことに、俺のふるさとでドイツ語とフランス語勉強してたのがバリ役立ったんだよね。最初に会ったとき、「どこでそんなにペラペラになったの?」って聞かれてたし。

仕事の合間に、大学にも行って政治学とか習っちゃって。名前も学生リストにバッチリ入れてさ。数ヶ月経って、仕事のミーティングも終わり、調査もうまく進んでたから、急ぎのレポートはさっさと送って、それ以外は写し取って、結局そんなのが何冊にもなったんだよね。大学ではさ、浅はかな想像で期待してた政治家になる特別コースとかなくて、法律家の授業聞くことにしたんだ。授業料払って、ちゃんと聴講してたんだよ。

夢みたいな三年間があっという間に過ぎちゃったんだよね。人って、隠そうとしても本性は隠しきれないもんだと思うわ。俺、父さんの遺言守って、母さんの言うこと聞いて、子供の頃から賢いって褒められてもめちゃくちゃ勉強したんだ。上司にもいい仕事してるって認められてきたけど、気づけば感情なくてロボットみたいになっちゃってたんだよね。でも、25になって、大学の自由な雰囲気に触れてるうちに、心がソワソワしてきて、ずっと心の奥に隠れてた本当の自分がやっと顔を出してきたんだ。昨日までの自分とは全然違う自分に出くわした感じ。俺、この世界で政治家になるべきじゃないし、法律覚えて裁判する法律家にも向いてないって気づいたんだよね。母さんは俺を生きた辞書に、上司は生きた法律にしようとしてたかも。辞書にはまだ我慢できるけど、法律になるのは耐えられないよ。今まで小さい問題にもめっちゃ丁寧に対応してたけど、最近は上司に提出する文書で、法律の細かいところにこだわらない方がいいって言い始めたんだ。法の精神わかれば、難しい問題もラクラク解決できるって。大学では法律の授業から離れて、歴史とか文学に心寄せて、やっと本当の学問に取り組むようになったんだよね。

俺の上司はさ、自分でコントロールできる道具みたいなの作りたいって思ってたんだよね。でもさ、自分の思い通りに動かないタイプの、普通じゃない感じの男がいるわけ。そんなの喜ぶわけないじゃん?リスキーだったのは、その時の俺のポジションだったってこと。でもそれだけじゃ、俺の立場ひっくり返すには足りなかったかもね。普段からベルリンの留学生たちの中でさ、影響力あるグループと俺との間にヤバい感じの関係があってさ、奴ら俺を疑って、最終的には俺のことバッシングし始めたんだよね。でも、これもガセネタってわけじゃなかったんだよね。

連中、俺がビールのグラスを持ち上げないとか、ビリヤードのキュー握らないのを、ガチで頑固ってか自分をコントロールできてるって見てたわけ。でも、半分は笑いものにして、半分はマジで妬んでたんだよね。だけど、彼らには俺のことわかってないんだよな。マジで、俺自身でも何でそうしてるのか、わかんないもん、他人がどうやってわかるっていうのさ。俺の心ってさ、触れられると縮む合歓の葉みたいなもんで、何かに触れられたら、さっと避けちゃうタイプ。純情そのものだよな。幼い頃から、リッチな教えに従って学問や仕事の道進んできたけど、それって勇気からじゃなくて、我慢と努力だったんだよね。他人が決めた道をただひたすら進んでただけ。心が乱れなかったのは、外の世界を捨てて自分を見つめる勇気があったからじゃなくて、ただ外の世界がコワくて、自分を縛ってただけ。故郷を出る前は、自分がデキる人間で、心が持つって信じてたけど、それも一時のことだったんだよね。横浜を離れる船の上で、自分が豪傑だって思ってたけど、止められない涙でハンカチ濡らしてた自分が不思議でさ。これが本当の俺なんだよ。この心、生まれつきのものかな?それとも、早く父さんを亡くして、母さんに育てられたのが影響してるのかな。

彼らが笑うことはまあいいとして、嫉妬するのはバカげてるよ。だって、こんな弱くてかわいそうな心を持ってるんだから。

マジでね、俺、赤と白のド派手なメイクしてる女の子見ても、全然勇気出なくて声かけられないんだよね。で、めっちゃ高い帽子にメガネかけて、ノブレス・オブリージュみたいな感じで話すレーベマン見ても、やっぱダメ。そんな風にビビってばっかだから、同郷の人たちともあんまり絡めないわけ。そしたらね、みんなからちょっとバカにされたり、うらやまれたり、怪しまれたりするようになっちゃって。そんな感じで、ガチで冤罪背負っちゃって、色々苦労したんだよね。

でさ、ある日の夕方、動物園ぶらぶらして、ウンテル・デン・リンデン通り超えて、モンビジュー通りの俺のクサイ部屋に戻ろうとしてたの。そしたら、クロスター通りのガチ古い寺院の前に来ちゃって。そこでね、ライトアップされた街を抜けて、この暗~い路地に入ったわけ。そこには、バルコニーに干してある布団やら下着がそのままの家とか、長いヒゲのユダヤ人のおじいさんがいる居酒屋とか、階段が二つあって、片方は上の階に続いてるし、もう片方は地下の鍛冶屋に続いてる賃貸住宅とかがあって、300年前の歴史を感じる感じで、何度もぼーっと立ちすくんでたんだよね。

俺がその辺歩いてたらさ、閉まっちゃってる寺の門のとこで、声こらえて泣いてるギャルいるの見つけたんだよね。その子、16、17ぐらいで、帽子から出てる髪がちょーきれいな金色。服も汚れてなさそうだった。俺の足音にビックリして振り返ったけど、詩人じゃねえから、その顔とか上手く言えないんだよな。その悲しんでるような、問いかけてるみたいな青い目が、なんで俺の心まで見透かすみたいになるんだろ?

あの子、めっちゃ嘆いてて、周り見るヒマもなく、そこで泣きじゃくってるっぽい。俺のビビりな心が、同情心に負けちゃって、ついそばに行って、「なんで泣いてんの?こっち外国人だけど、なんか手伝えることあるかもよ」とか言いかけたんだけど、自分でもその大胆さにビビったわ。

俺のイエローっぽい顔、ジロジロ見てたけど、俺のハートが顔に出てたのかもね。「あんた、いい人っぽいね。あの人みたいにヒドくなさそうだし、お母さんみたいでもない」って。で、しばらく泣いてなかったけど、また泣き始めてさ、彼女のかわいい頬を涙がトレースしてたのよ。俺に助けを求めてるんだって。「恥ずかしい人間にしないで」って。彼女の母さんは、ある人の言う通りにしないと、ずっと彼女を叩くんだって。父さんはもういなくて、明日がお葬式なのに、家にはカネがないんだって。

彼女の後ろからは、泣く声しか聞こえなかったんだ。俺の目は、うつむいて震える彼女の首筋だけを見てた。

家まで送ってあげるって言ったんだ。「まずは落ち着こう。人に聞こえないように声を抑えて。ここは人通りが多いから」って。彼女が話してる間、俺の肩にもたれてたんだけど、急に顔を上げて、初めてマジで俺を見たみたいで、恥ずかしそうに俺から離れたんだよ。

なんかさ、めっちゃ気にしちゃってる感じで、彼女急いで歩いてたのよ。で、なんか神社みたいなところの向かいにデカイ扉があって、そこに入っちゃったんだよね。中に入るとさ、ちょっとボロボロの階段があって、そこを上がってったわけ。四階にあるちっちゃな扉で、彼女がなんかサビ付いた取っ手を回して、馬鹿力で引っ張ったの。そしたら中から、咳き込むおばあちゃんの声が聞こえてきたのよ。「誰?」って聞かれるかと思いきや、彼女がさっくり扉を開けちゃって。そこにいたのは、白髪混じりで、ちょっと貧しそうな感じが額に出ちゃってる老女だったんだよね。古い綿の服に、汚れっちゃってる靴を履いてて。エリスが入った瞬間、婆さんが待ちきれない感じで、ドン!って扉を閉めちゃったんだよね。

俺さ、最初マジでポカーンと立ってたんだけど、ランプの光でドア見たらさ、「エルンスト・ワイゲルト」って書いてあって、「仕立て物師」って書いてあるのね。これ絶対さっきの女の子の父さんの名前だよね。中からはケンカみたいな声が聞こえてきたけど、また静かになって、ドアが開いたの。さっきの婆さんがが、めっちゃ丁寧に謝ってきて、俺を中に入れてくれたんだ。部屋は台所でさ、右手には真っ白な麻布のカーテンがかかった窓があって、左手にはガチで粗末なレンガのかまどがあるわけ。正面の部屋のドアは半開きで、中には白布で覆われた寝床があるんだけど、亡くなった人が寝てるんだろうな。その婆さん、かまどの横のドアを開けて、俺を案内してくれたの。そこって、マンサルドっていうんだけど、天井なしの部屋で、屋根裏から窓に向かって斜めに下がった梁の下に、紙で覆われた寝床があって、立つと頭ぶつかっちゃうようなところなんだ。中央の机には超キレイな敷物がかかってて、そこには本と写真帖が置いてあるし、陶瓶には高級そうな花束が飾られてるの。そこに、その女の子が照れくさそうに立ってたんだよね。

彼女、マジでキレイだったんだよね。ランプの光でね、ちょっと白っぽい顔にピンク色がさしてて。手足なんかもスラッとしてて、貧乏な感じしないんだよね。婆さんの部屋出てから、ちょっと訛り入りの言葉で「ごめんね、ここまで連れてきちゃって。あんた、イイ人そうだもん。私のこと、嫌わないで。明日、父さんの葬式なの。助けてくれるはずだったシャウムベルヒって人、知らないよね。ヴィクトリア座のボスなんだけど、もう2年もサポートしてくれてるっていうのに、逆に私たちの悲しみにつけ込んできて、わがまま言ってくるの。助けてよ。給料前借りしてでも返すから。食べなくても平気。ダメなら、母さんの言う通りにするしかない」と、彼女は涙を流しながら震えてたんだ。その涙の目には、人を引き付ける魅力があってさ。その表情がわざとなのか、本人も気づいてないのか、俺にはわかんないけど。

俺のポケットには、ちょっとしたシルバーコインしかねぇんだよね。それじゃ全然足りないから、俺の時計を外してテーブルにドンっと置いたわけ。「これで一旦のピンチはしのいでくれよ。質屋に行くならモンビシュウ街の三番地で太田って言えば、マジでちゃんと評価してくれるから」ってね。

彼女、ビックリしながらも感謝してくれて、俺が別れのハンドシェイクしようとしたら、その手にキスしてくれたんだ。そしたら、彼女のアツアツの涙が俺の手にジワーッと落ちてきたんだよ。

まぁ、なんだかんだで、彼女は俺に恩返ししようって、俺の仮住まいに来てくれたんだよね。ショーペンハウエルにシルレル、右に左にして、一日中、俺が本読んでるとこで黙って座ってた。そこから俺たちの絆が深まって、同郷の人たちも気づかれた。俺がダンサーと遊び散らかしてるって勘違いしてたみたい。でもね、俺たちの間には、まだピュアな楽しさだけがあったんだよ。

なんかさ、俺の同郷のヤツらの中にマジで俺のこと嫌ってる奴いてさ。俺が劇場にバンバン行って、ダンサーたちとも仲良くしてるってウワサを、職場の上司にチクったんだよね。それ聞いた上司、もともと俺のこと嫌ってたから、ガチでクビされちゃったんだ。公使が俺にそれ伝えた時、「国に帰るなら旅費出すけど、ここにいるなら自分でなんとかしろ」って言われたんだよね。とりあえず一週間待ってもらって、俺、どうしようかって考えてる間に、マジ悲しいニュースが二つも届いちゃって。一つは母さんからの手紙で、もう一つは親戚からで、母さんが亡くなったっていう内容だったんだよ。母さんの手紙は、泣いちゃうから、ここに書くことはできないよ。

俺とエリスの付き合いって、まあ、見た目以上にピュアでクリーンだったんだよね。エリスの父さんが貧乏で、彼女、まともな教育受けられなかったんだ。15歳でダンスの先生に勧められて仕事始めたんだって。で、その後「クルズス」ってトコで踊って、今じゃ「ヴィクトリア」劇場でメインダンサーになっちゃった。でもね、詩人のハックレンデルが言うように、ダンサーの人生って、なんかもろいんだよね。給料少なくて、昼間のリハーサル、夜の公演でバリバリ働いて、メイクしてキレイな衣装着るまでは大変。劇場の外だと、食べるのも着るのもやっとって感じで、彼女の親も大変だったんだろうな。だから、ダンサーたちが低俗なバイトに流れちゃうことも珍しくないんだよ。エリスがそうならなかったのは、彼女が素直で、厳しい父さんが守ってくれたおかげだね。彼女、小さい頃から本が好きだったけど、読めるのは二流の小説だけ。俺と知り合ってからは、俺が借りた本読んで、だんだんいい趣味身につけて、言葉遣いもキレイになって、手紙の誤字も減ったんだよね。そんな感じで、俺たちの間には、先生と生徒みたいな関係ができたんだ。俺がいきなりクビになったとき、彼女、めっちゃ驚いたけど、俺、彼女が原因だってことは内緒にしてたんだ。でも彼女、そのこと母さんには秘密にしてって言ってたんだよね。それは、俺が学費失ったことが母さんにバレると、俺を遠ざけるんじゃないかって怖がってたからだよ。

あー、あんま詳しくは書かないんだけど、マジで彼女のことガチ惚れしちゃって、もうバリバリ離れられない感じになっちゃったんだよね。俺自身、マジでやばい状況だったんだけど、この気持ちは始めて会ったときからずっと変わんないんだよね。彼女が俺の運命をかわいそうに思ったり、別れるの悲しんでる姿とか、髪がほどけて顔にかかる感じ、マジで美しくてキュンとくるんだよね。それで、普通じゃないくらい感動しちゃってさ。

公使に約束した日も近いし、俺の運命、ガチでやばい感じ。このまま帰国すれば、勉強も中途半端で恥ずかしい思いするかもしれない。でも、こっちにいても学費稼ぐ手段がなくて、マジでどうしようもないんだよね。

この時、俺を助けてくれたのは、いま一緒にいる相沢謙吉ってヤツだったんだよね。彼は東京でイケイケだった頃から、天方大臣の秘書やってたんだけど、俺がクビになったのを官報で知って、なんとか新聞社の偉いさんと話をつけてくれて、俺、その会社でリポーターになったんだ。だからベルリンに残って、政治とかアートのニュースを書くことになったわけ。

給料はそんなに多くないけど、家とか昼飯を食う場所変えたら、なんとかやってけそうって思ってた。そんな時、マジで心からの優しさを見せてくれたのがエリス。彼女はなんとか母さんを説得して、俺、彼女ら親子の家に泊めてもらえることになったんだよ。エリスと俺、ちょっとした収入を合わせて、大変だけど楽しい日々を送ってたんだ。

朝のコーヒー終わったら、彼女は練習にガチでハマる日もあれば、家でダラダラする日もあるんだよね。俺はキョオニヒ通りのチビッコ休憩所に行って、色んな新聞チェックしながら、メモ取りまくるの。そこの明るい窓辺の部屋でさ、仕事してない若者や、ちょっとしたお金を人に貸して自分はノンビリしてるオジサン、仕事の合間に休憩してる商人とかと一緒にいるわけ。冷たい石のテーブルで、必死にペンを動かしてさ、持ってきたコーヒーが冷めるのも気にせず、細い板に挟まった新聞を持って、いろんな新聞が掛けてある壁を行ったり来たりする日本人を見て、知らない人はどう思ったのかな。それに、彼女が練習してる日は、帰りに合流して、一緒に店を出るんだ。手のひらで踊れるような可愛い女の子と俺を見送る人たちは、きっと不思議に思ってるよね。

俺の勉強、ガチでめちゃくちゃになっちゃったんだよね。屋根裏部屋でちっちゃなライトの下、エリスが劇場から帰ってきて、イスにもたれて縫い物してる隣で、俺は新聞の記事書いてたんだ。昔のツマンナイ法律とかじゃなくて、今は政治の最新の動きとか、文学やアートの新しい流れについて、バリバリ書いてたんだ。ウィルヘルム一世とかフレデリック三世が亡くなって、新しい皇帝の話とか、ビスマルクってやつのこともめっちゃ詳しく書いたんだよね。だから、最近マジで忙しくて、本読む時間も全然なくなっちゃって。大学にはまだ名前は残ってるけど、授業に行くのは稀だわ。

俺の勉強はバッチリじゃなかったけど、別のカッコいい知識をゲットしたんだよね。それって何かって?民間学がドイツでめっちゃ流行ってたってこと。新聞や雑誌で見るイカした議論とか、俺、リポーターになってから、大学で身につけた洞察力フル活用してバリバリ読んで、書き写してたんだ。そしたら、今までの知識が全部つながって、マジでデカい知識になっちゃったんだよね。俺と同郷の留学生たちにには、思いもよらないレベルに達してたし。奴らの中には、ドイツの新聞の社説、ちゃんと読めないヤツもいるんだよね。

明治二十一年になって、冬がやってきた。メインストリートでは、砂かけて道キレイにしてるけど、クロステル通りの方はガタガタ道が目立つんだよね。メインストリートは氷で真っ白で、朝ドア開けたらさ、寒さとかで雀が死んじゃってるのがマジ悲しい光景だったわ。部屋は暖房ガンガンで、ストーブで火燃やしても、ヨーロッパの冬って壁も服の綿もブチ抜くほどキツいんだよね。エリス、数日前に舞台で倒れちゃって、人の手借りて帰ったけど、それから調子悪くて、食べても吐いちゃうの。彼女の母さんがさ、「もしかしてつわりかも」とか思い始めてるんだって。自分の将来もなんか不確かなのに、これがホントならどうしようって感じ。

今日は日曜で、家にいるんだけど、なんか心がモヤモヤしてるんだよね。エリスはベッドで寝てはいないけど、小さい暖炉の近くでイスに座って、あんまり喋らないの。そしたらね、ドアのとこで声が聞こえてきて、エリスの母さんが郵便の手紙持ってきたのよ。手紙見たら、知り合いの相沢からで、切手はプロイセンのやつで、ベルリンの消印が押してあるの。読んでみたら、昨日こっちに来た天方大臣に自分もついて来たって書いてあるんだ。急いで来るようにって、名誉の回復もあるってさ。手紙読んでポカーンとしてたら、エリスが聞いてきたの。「故郷からの手紙?何か悪いニュースじゃなければいいけど」って。新聞社からの報酬の手紙かと思ったみたい。「いや、それじゃないんだ。俺のこと知ってる相沢さんが、大臣と一緒にこっちに来て、俺を呼んでるんだ。マジで急がなきゃ!」って感じ。

エリス、マジで具合悪いのに、大臣に会うからガンバって起きちゃって。めっちゃ真っ白な上襦袢を選んで、お気に入りの二列ボタンの「ゲエロック」着せてくれたんだよね。襟飾りでキメてくれて、「これでダサいなんて言わせないわよ。鏡見てみなよ。なんでそんな不機嫌な顔してるの?私も一緒に行きたかったなあ」とか言ってた。でも、ふと「この服を着ると、なんか私の豊太郎みたいには見えないな」とか言っちゃって。「どんなにリッチになっても、私のこと忘れないでね。私の具合が母さんが言うようなものじゃなかったとしても」って言ったんだ。

「リッチになる?」って俺はニヤって答えたんだ。「政治とか社会のことにはもう興味ないし、大臣に会いたいわけじゃないんだ。久しぶりに会う友達に会いに行くんだよ。」エリスの母さんが呼んだドロシュケが、雪道をキュッキュッ言いながら家の前まで来たんだ。俺は手袋して、ちょっと汚れたコート着て、帽子取って、エリスにキスして階段降りたんだよ。彼女は凍った窓開けて、乱れた髪を冷たい風に吹かせながら、俺が乗った車を見送ってたんだ。

俺が車から降りたところって「カイゼルホオフ」の入り口だったんだよね。門番に秘書官の相沢の部屋の番号聞いて、久々にデカい大理石の階段昇っちゃったわ。中央には、「プリュッシュ」ってやつがかけられてる「ゾファ」がドーンとあって、正面には鏡がバーンとある前室に入ったんだ。そこで、俺、外套を脱いで、廊下をブラブラ歩いて部屋の前まで来たんだけど、ちょっと立ち止まっちゃったんだよね。大学のとき、俺を品行方正って褒めてた相沢が、今日はどんな感じで迎えてくれるかなって。部屋に入ったら、相沢が前よりデブっとしてて、元気いっぱいで、俺の失敗なんか気にもしてなさそうだったんだ。別れてからの話をする暇もなく、相沢に連れられて大臣に会いに行って、ドイツ語の文書を翻訳するよう頼まれたんだよね。文書をもらって大臣の部屋を出たとき、相沢が後から来て、一緒にランチしようって言ったんだ。

飯食ってるときにさ、あいつめっちゃ質問してきて、俺はずっと答えてたんだよね。彼は人生サクサク進んでる感じだったけど、俺の人生っていうのは、トラブルだらけでマジ特殊だったわけ。でさ、俺が色々と悲劇の話をしたら、彼はビックリしてたけど、俺のこと責めたりしないで、むしろ他のフツーの同僚たちディスってたんだよね。でもね、話が終わったら、マジな顔でアドバイスくれたの。「この問題ってさ、もともとお前のメンタルが弱いせいで起きたわけで、今さら何言っても仕方ないじゃん。でもさ、お前って学があって才能もあるのに、いつまでたっても若い女の子との恋愛に振り回されて、なんの目的もない生活送るべきじゃないよ。今、大臣はお前のドイツ語の才能利用することだけ考えてる。大臣もお前が仕事やめた理由知ってるし、俺は無理にその考えを変えようとはしないよ。嘘ついてお前を変に庇ったら逆効果だし、俺にも損だよ。人を推薦するときは、まずその能力見せるのが大事だから。それ見せて彼の信頼を得ろって。あとさ、その女の子とのことは、彼女がマジで好きだったとしても、愛情が深まったとしても、それは才能あるヤツを見る目からじゃなくて、ただの慣習やダラダラしたものだから、思い切って切り捨てろって。」これが彼の言いたいことの要点だったんだよね。

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