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ハケンアニメ!
「選ばれてあることの恍惚と不安の二つ我に在り」
何かを作ることに真剣に向き合ったことのある人間であれば、この感覚は言葉を超えて理解できるのではないだろうか。
思考を重ねた求める者だけに閃き、辿り着く、降りてくる。
アイデアという形のない偶像。
そんな感覚の先には誰にも恍惚と不安がある。
この考えで良いのか、間違っていないか、社会にとって必要な考えか、行いか。
自分の中の正しさと違和感の間を行き来しながら「作るという行い」は形になっていく。
形にする理由は一つ。
誰でも見えるように、聴けるようにするため。
自分の真ん中をそれに込めて。
自分の真ん中を曝け出して、伝わるのか。
その不安と誰かに伝わった恍惚と行き来をしながらものづくりは進む。
この映画の骨子はこんな感じ。
アニメの覇権を競い合うアニメ制作会社。
その2社が制作したテレビアニメが同日同時刻に公開される。その視聴率、話題性。
どちらに軍配が上がるのか。
吉岡里帆演じる新人アニメ監督と対するのは中村倫也演じる天才監督、王子監督。
アニメ制作を通して2人の感情が交錯していく。
誰しも過去に対する後悔は(大小違いはあっても)あるものだが、生きていると過去の全てが肯定される瞬間が訪れる。
時期の違いはあってもきっと誰にでも、その瞬間は訪れる。(はず)
幼少期の自分、学生時代の自分、昨日の自分。
それを肯定してくれるのは時間だったり出会いだったりする。
この映画には、そんな奇跡のような瞬間を明確に捉えているシーンがある。
スクリーンの向こうと観客(こっち)が心重なり感情が一つになる。そんな瞬間がこの映画には幾度もある。胸アツ。
才能とは努力の先にある幻想。
その幻想を追い求めるものは多い。特にものづくりに関わるものなら誰しも囚われる考えではないだろうか。
ただ、そこにたどり着けるのは努力をした者だけ。
並はずれた努力を厭わない者だけがたどり着ける。
この物語からは世間では天才と言われる人々が
昼も夜も朝も、ただひたすらに机に齧り付いて、
走らす鉛筆の音がする。
一本でも多くの線を描き、自分の真ん中を伝える。
自分のために、誰かのために。
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