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あそどっぐインタビュー5日目 その4 「障害と宗教と粉ミルク」

今さらだが、あかほしはあそさんが好きだ。
どうしてこんなに好きかわからない。
あそさんが今のあそさんになるまでの道筋もしらない。
だからそれを聞いて、会話して、もっと好きになりたいと思った。


あかほし(以下「ほし」):このまえ近所のスーパーで・・・イスラム教かな?頭を布で覆ったお母さんが、生後2,3ヶ月の赤ちゃんを抱いてたんです。その赤ちゃんは、口のところがすこし裂けているような子だった。それだけ、障害をもった赤ちゃんを間近に見たのは。
あそどっぐ(以下「あそ」): あーそっか。へえ・・・でもなんか興味深いね。はじめて見た障害をもった赤ちゃんが、外国籍の人だったっていうのはね。
ほし: そうですね。なんか宗教上の集まりがあったんじゃないかな?その日やたらと多かった、おなじ国籍っぽい人たちが。で、困ってて、そのお母さんが。
あそ: うんうん。
ほし: おなじく赤ちゃん抱えた女友達と、親2人子2人で立ち往生していて、どうしようみたいになってて。なんなんだろうなあと様子を見にいくと、子供にミルクをあげたくって、買おうとしてた。でも、いま手にしている粉ミルクが・・・
あそ: ああ、飲んでいいやつかどうか?
ほし: そうそうそう。「豚肉が入ってないかどうかを確認してほしい」っていう問い合わせをして、店員のおっちゃんが対応してたんですけど言葉の壁があって。おっちゃんは「ラベルを見るかぎり原材料に" 豚 "とは書かれていない。ただ、製造ラインに入ってないかどうかは分からない」っていうことを、そのままの日本語でしゃべってた・・・
あそ: それは伝わんないよね。
ほし: でしょ。おいおい!と思って(笑)
あそ: すげえなあ。
ほし: 一生懸命「製造工程」とか言ってて。あちゃ〜っと思って。
あそ: そこはやさしいよね、製造工程を考えてくれるのは。
ほし: たしかに(笑) で、おっちゃんはう〜んう〜んとか言いながらずっと缶を眺めてるだけだったんですよ。分かるはずねーじゃんと思って、口出ししました。「そこのメーカーに電話で聞いてみたらどうでしょうか」って。
あそ: (笑)
ほし: で、おっちゃん電話してた。そしたらメーカー側は「保証はできない」という回答だったんですよね。
あそ: あ〜なるほどね、うん。
ほし: 「原材料にはもちろん混ぜてないけど、製造ラインにゼロかどうかは、何とも言えない」っていう回答で。・・・っていう話もそのままの日本語でしゃべるわけですよ。
あそ: (笑)
ほし: で、わたしがプアな英語で彼女たちに説明して、おおざっぱに伝えることはできました。っていう一件がありまして。
あそ: なるほど。その時にあれなんだ、その時の子が・・・
ほし: うん、そう。お母さんのおっぱい張ってたから、母乳が出るんじゃないかなあと思って「おっぱいやらんの?」って聞いたら「この子口があれやから飲めないのよ」って言われて。
あそ: なるほどね、吸えないんだ。
ほし: たぶん。
あそ: 流し込むようなかんじになるんか?
ほし: なんか、言ってた。自分が持ってる容器であげないと、あげられないって。
あそ: なるほどなるほど。
ほし: ああ、そうなんやと思って。・・・にしては準備わりーなと思ったけど(笑)
あそ: (笑)
ほし: その後、お母さん達はさてどうしようかということになりまして。そのスーパーには牛乳製のミルクしか置いてなかったんですよね。たまたま、うちの娘が大豆製のミルクを飲んでいたので「ここから20分くらい歩いた薬局には大豆でできた粉ミルクがあるよ」って伝えたんですけど、彼女たちベビーカーもなにも持ってなかったんですよね。女友達が連れた子もけっこう小さかったから・・・。それに、がんばって4人で20分歩いたとしても、その店に置いてあるかどうかは分からないんですよ。しばしば在庫切れになってるから。そういう状況を全て説明して「現状からするとたぶん、目の前の粉ミルクで妥協するか、薬局へ買いに行くかぐらいしか、方法がないと思う」と言って、他になんかできることはあるかと尋ねると「ない」と答えたので帰宅したんですけど・・・すごくソワソワした出来事でした。
あそ: ほんとねえ。
ほし: 準備のわるい親だなあと思ったけど・・・でも、私も母になったばかりの頃はぜんぶが初めてで、本当にいっぱいいっぱいだったから。
あそ: まあしょうがないよね。
ほし: そういうとき、舌打ちせずに助けてくれる人がいるといいなあって思ってたな自分って思って、迷い迷い介入したんですけど・・・で、急いで家に帰って「イスラム教、粉ミルク」で調べたら、一応そのスーパーに置いていた牛乳製の粉ミルクもOKだったっぽい。イスラムの人がブログに「ウチはこれ飲んでるわ」書いてあったから。わが家にある大豆製粉ミルクもイケるってことも分かり・・・ただ、きっと宗教すごいだいじだろうから、なんも知らないでブタ食べさせちゃったら大変じゃないですか。
あそ: うんホントよねえ。
ほし: いろいろ迷ったんだけど、赤ちゃんは生まれて間もないだろうから、きっと早く飲まなきゃ、お腹減ってるだろうなあって思って、とりあえずウチの粉ミルクもって・・・
あそ: 戻ったの?
ほし: そう、戻ったんだけど、もう居なかった。
あそ: う〜ん、そうか。そのおっちゃんに任せておいたらね・・・
ほし: (笑)
あそ: 永遠に伝わらんからね(笑)
ほし: 一生懸命「製造工程が!」「原材料が!」とか・・・ね。でも、国の違いなのか分かんないけど、そのあいだ案外お母さん達はのんびりしてたのが印象的でしたね。そこは見習いたいなあと。もし日本人だったら土下座でもしようかってぐらいヘコヘコするんだろうし、周りもそれを求めがちだし・・・だからそもそも、そういう準備が悪かったっていう状況で「助けて」とすら言ってはいけないような、そんなプレッシャーがありますからね。
あそ: うんうん。
ほし: いろんなことを感じた一件でした。

次回、「ベビーカーと肛門

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。
あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「 "差別"とはなんぞや?

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