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あんたたちは「ふーん星人」か 芥川龍之介の俳句を読む③

 言葉は意味を持っている。

 解ります?

 言葉は意味を持っている。

 本当に解っていますか?

 解っていないでしょう?

 前にも書いたが子供とお母さんの会話で、

「お昼何食べたい?」

「ソーセージとトマトがつながっているの」

 というものがあった。

 ん?

 私の頭にはこんな絵が浮かんだ。

 しかしさすがは子どもの言語を司る母親、即座に

「えーホットドッグ? モスにあったかな……」と返した。

 言葉が意味を持つということはこういうことだ。

「じゃあソーセージとトマトがつながっているの食べに行きましょうね」と言っても、どこにも辿り着けない。昼飯抜きだ。

 しかしどうも昼飯抜きの人しか見当たらない。

野茨にからまる萩のさかり哉

 芥川にこんな句があります。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 で?

 それだけ?

 それが鑑賞?

 言葉は意味を持っているって解ります?

 そういう人しか見つからない。

 要するに「明星のちろり」を考えない人が、「芥川にこんな句があります」とだけ書いて鑑賞したようなふりをしているのだが、そんなものは鑑賞でも何でもない。そんなことを書いて何になる?「じゃあソーセージとトマトがつながっているの食べに行きましょうね」でしかない。「えーホットドッグ? モスにあったかな……」でないと言葉が意味を持つているという地点にない。

さかり【盛り】
①勢いが盛んなこと。栄えているさま。隆盛。万葉集5「―に咲ける梅の花」。「暑い―」
②強壮な時。青壮年期。体力や気力が最も充実している時期。源氏物語葵「若く―の子におくれ奉りて」。「―を過ぎる」
③人が多く寄り集まり、商売などが盛んであること。繁昌。にぎわい。人情本、春色辰巳園「―の時は十や二十の金はなんのといふやうになるのも土地がら」
④獣類が一定の時期に発情すること。「―がつく」
⑤「…ざかり」の形で、接尾語的にも使う。「花―」「女―」「働き―」

広辞苑

 野茨にからまる萩のさかり哉

 この句は本来つる性の植物で群生する白い野茨に枝垂れるように咲く濃紫の萩が絡みついてさかっているよと「あべこべ」を詠んでいる訳でしょう。

 この「さかり」は明らかにセックスを意味しています。

 これが面白いのは「同宿の或る夫人のために」扇子に書いているところです。要するにHagi is having sex with Noibara.というかなり尖った扇子を作ろうとしているところにある。

 野茨にからまる萩のさかり哉と書かれたTシャツを着た女性と会ったら、顔を赤らめてもいい。



ほのほのや鼾忽ち絶えて春
我宿や鼾忽ち絶えて春
紀元二千五百五十四年なり
年明けて春まだ立たず梅の花
掃溜にこれはこれはの春も來し
春や來る表に物も案内も
百卷の古書の山こえ春は來ぬ
ほのほのと茜の中や今朝の不二
隻手聲絶えて年立つあした哉
紀元二千五百五十五年哉
紀元二千五百五十五年なり
新年や床は竹の画梅の花
咲にけり筆のさきより年の花
新年の上野寂寞と鴉鳴く
寐んとすれば鷄鳴いて年新なり
恭賀新禧一月一日日野昇
新年の霜と消えたるはかなさよ
新年の棺に逢ひぬ夜中頃
新年の墨水語り其村吶る
新年や鶯鳴いてほとゝぎす
蒲団から首出せば年の明けて居る
年こゝにあらたなる梅の莟哉
一月二日奇石瑞草を見る
年徳と布袋とどつと笑ひけり
蟹を得たり新年會の殘り酒
蟹を得つ新年會の殘り酒
新年稿成つて萬斛の血を灑きけり
新年の白紙綴ちたる句帖哉
子の年の鼠にちなむ落語哉
醉蟹や新年會の殘り酒
經ニ曰ク春王の正月日々食たれり
正月の物あはれなり傀儡師
正月や賤の伏屋も文の數
貧乏の正月はうしさりながら
老もいさめ痩せたりといへども午の年
琴鼓ならべかけたる睦月哉
正月を水仙の花のさかり哉
一月となりけり雪もふりにけり
うれしさの過ぎぬ正月四日なり
正月の人あつまりし落語かな
正月や里はきのふの古薄
春王の正月書すと書かれたり
年礼の過ぎぬ正月四日なり
正月や橙投げる屋敷町
一年は正月に一生は今に在り
一年は正月に一生ハ今にあり
正月や餅ならべたる佛の間
正月の末にとゞきぬ支那みかん
水こほる風にさきけり江戸の春
うそうそと蝨はひけり菴の春
猫の顔もみがきあげたり玉の春
あらたまの春としなれば人笑ふ
いくたびの花の莟ぞ庵の春
烏帽子着る世ともならばや花の春
おそろしき殿御めでたし花の春
死ぬものと誰も思はず花の春
死ぬるとハ思ハさりけり花の春
女房によびおこされて花の春
袴着て火ともす庵や花の春
花の春うかれて屠蘇の二日醉
兵隊は國の花なりけふの春
我等まで神の御末そけふの春
明て春暮ても春のうれしさよ
庵の春鏡餅より白みけり
鶯や東よりくる庵の春
うつくしき根岸の春やさゝの雪
閏年や一日遅き花の春
風吹て雨降てさて花の春
風吹て山里春をしらぬ哉
紀元二千五百五十三年の春
君が代を踊りそめけり花の春
鍬に土つかぬ一日や里の春
くれ竹の根岸にすんで花の春
元日の掛乞もあり江戸の春
景に富む庵や山の春水の春
化粧部屋に吾妹子光る宿の春
此隅に門松立てり江戸の春
民の春同胞三千九百萬
つくばねは筆のさきなり庵の春
舶來の牛も日本の花の春
初春やいわけなき兒の兩鼓
初春や七十五年いきのびん
初春や雪の中なる善光寺
母人は江戸はじめての春日哉
春くばる都の文や十二萬
春は曙雲紫のつく波山
東からあれあれ春がくるわいな
目を明て見たれば春となりにけり
餅花にとびつく猫や玉の春
世の中をすてずことしも花の春
梅ハまだ枯木に似たり花の春
梅はまだ枯木にもつとして花の春
烟突の煙にぎはふ民の春
大幅の帶そろひけり京の春
傾城の古郷遠し京の春
三寶に東海南山庵の春
竹の影梅の影あり窓の春
猫の子の眷族ふゑて玉の春
端書あり活版もあり文の春
春もはや運坐賑ふ老梅居
父母います人たれたれそ花の春
盆栽の紅梅さくや女御の春
むつかしき言の葉草や花の春
めでたさやよその言葉も旅の春
あらをかし何に浮世の花の春
紀元二千五百五十五年の春
とにかくに坊主をかしや花の春
竹に葉無し松に雌雄無し江戸の春
初春や赤裝束の牛童
烏帽子着た人の心や神の春
海老にさへ伊勢の名はあり神の春
松の木の注連繩古し神の春
淋しさの尊とさまさる神の春
玉くしげ二見にあける神の春
古杉の花咲かぬ身を神の春
君が代や千嶋よりくる國の春
四方海渺々として國の春
十萬の常備軍あり國の春
僧赤く神主白し國の春
萬國の地圖を開くや國の春
餅花の小判動かず國の春
新しき地圖も出來たり國の春
猫の顏もみかきあけたり御代の春
のら者もあつてめでたし御代の春
君が春箒に掃ふ塵もなし
東京と江戸も變りて君か春
田舎出のけつとう赤く君が春
田舎出のけつとう赤しみよの春
狼は山へ歸るや御代の春
宮城や文武をかぬる君か春
めでたさやいつまでかくて君か春
君が春さゝれ石原玉かしは
君が春背丈にあまる鶴の首
命長く喜び多し御代の春
永代の橋も落ちずに君が春
君が春誰が殿醉ふて神樂歌
草も木も君が春とぞ歌ひける
中の川潺湲として御代の春
立臼の重さも問はず君か春
刀鍛冶は庖丁鍛冶や御代の春
四位五位は升で量るよ君が春
檻の内に麒麟も老いて君か春
甚六の寐言とだえて去年今年
去年の夢さめてことしのうつゝ哉
元日や見直すふじの去年の雪
元日は何も思はで暮らしけり
元日や一輪開く福壽草
元日や門松に照る朝日影
元日やきのふはきのふけふはけふ
元日と知らぬ鼾の高さかな
元日のはれや片鎌大鳥毛
元日や朝日に鶴の羽つくろひ
元日や勅使の橋に松の影
元日や日も出ぬさきの不二の山
元日やふしへものほる人心
元日やふじ見る國はとことこぞ
元日やむしろ屏風に梅のかげ
風吹てても元日の覺束な
元日に海老の死骸ぞめでたけれ
元日に海老の死骸のおもしろや
元日は佛なき世へもどりけり
元日や上野の森に去年の月
元日や蘇鐵に動く風もなし
元日やとてもの事に死で見ん
白妙の不尽見て立てり日の始
禰宜だちよ元日のいはれ物語れ
うつくしや洛陽の元日雪ちらちら
風凪でけさ元日となりにけり
元日に追付かれけり破衾
元日の雀鳴くなり手水鉢
元日の住吉淋し松の音
元日の住吉寒し松の風
元日の夕日になりて哀れ也
元日の夕日になれば哀れ也
元日の芳野に花もなかりけり
元日もたゞ尊とさの涙かな
元日や曙染の振小袖
元日や金の話のかしましき
元日や何やら語る鶴四五羽
元日や二十六年同じこと
元日や都の宿の置巨燵
元日をお濠に眠るかもめ哉
元日を御濠の鴎とも知らず
灯を消して元日と申庵哉
雪ふるや洛陽の元日うつくしき
おもしろや元日暮れて月六日
元日の行燈をかしや枕もと
元日の太鼓聞かばや法華寺
元日も二日も暮れてしまひけり
元日や枯菊殘る庭のさき
元日の馬車見に行くや丸の内
元日の人通りとはなりにけり
元日は是も非もなくて衆生也
元日は除夜のあしたの名也けり
元日も暮れて上野の嵐哉
元日やしろかねの餅こかねの蜜柑
町はづれ元日らしからぬ家よ
うれしかる子に元日の曇りけり
元日や鶴も飛ばざる不二の山
元日を天地和合のはじめ哉
就中梅元日の姿なる
元日の病者見舞ふや駿河臺
大三十日愚なり元日猶愚也
元朝や虚空暗く但不二許り
うつかりと元日の朝の長寢哉
元朝や米くれさうな家はどこ
元朝や皆見覺の紋處
風吹てつめたき年のあした哉
風やんでけさ元日となりにけり
元旦に追つかれけり破衾
元朝やわれは神國の男なり
元朝や車ときめく二重橋
元旦の馬車見る人や丸の内
元朝の上野靜かに灯殘れり
今年はと思ふことなきにしもあらず
まだ夜なり西のはてには今朝の不二
元日や朝からものゝ不平なる
鶯も谷の戸出るやけさの春
けさの春御城も庵も一かすみ
月落て星まばらなりけさの春
我庵は御城を二里やけさの春
我等まで神の御末ぞけさの春
一休は死んでめでたしけさの春
家持て門松立てゝけさの春
風吹て門松うたふけさの春
かばかりのものとしらじをけさの春
今朝の春有明月を見つけたり
けさの春琵琶湖緑に不二白し
城門に槍の林やけさの春
唾壺に龍はかくれてけさの春
天守閣屹然としてけさの春
どこ見ても霞だらけにけさの春
世の中にすめばこそあれけさの春
鶯の隣にすんで今朝の春
君か代や四千萬人けさの春
白河の關むらさきにけさの春
白し青し相生の筑波けさの春
禪僧の寂然として今朝の春
なき親の繪姿笑ふ今朝の春
のどかさは新聞もなしけさの春
吾妹子のうしろ姿やけさの春
裾を引く妻の立居や三ヶ日
門番に餅を賜ふや三ヶ日
口紅や四十の顏も松の内
我門や松はたてねど松の内
裏門や遣羽子はやる松の内
袴着た町人見ゆる松の内
錢湯に善き衣著たり松の内
松の内薺うつ日も過ぎにけり
吉原の禿遊ふや松の内
吉原に禿遊ふや松の内
宮人や御喪に籠る松の内
門番に餅をたまふや松の内
借著して湯に行く旅の松の内
廻向院の相撲はじまる松の内
錢湯を出づる美人や松の内
錢湯を早くしまふや松の内
錢金を湯水に使ふ松の内
よひよひの鼓の音や松の内
ふんどしややうやう黒む初明り
初日の出隣のむすめお白粉未だつけず
毘沙門や松にはさんで初日出
不盡赤し筑波を見れは初日の出
蓬莱の松にさしけり初日の出
墨梅の軸にさしこむや初日の出
ゆらゆらと柳動くや初日の出
今年も東より出る初日哉
筑波根は二見に似たり初日の出
初日さす硯の海に波もなし
星は消え月はしらみて初日の出
我庵はお城の上に初日哉
鴉一羽初日の中を通りけり
初日浮くや金波銀波の太平洋
海のはてにあれあれ初日浮き給ふ
大船のへさきに浮ぶ初日哉
空近くあまりまばゆき初日哉
初日のつと萬歳の聲どよみけり
初日漏るおはらひ箱のほこり哉
帆檣に人かき上る初日かな
山里や初日を拜む十時頃
雪きらきら初日のぼりぬ馬の耳
鴉飛ぶや初日見えそむる山の上
初日呑むと夢みて發句榮ゆべく
初日見ばや海に向いて松くねる處
初日拜むべく思はずわれ無精なり
新聞を門で受け取る初日哉
伊勢人のはがきに刷りし初日哉
蛤の口より伊勢の初日哉
墨梅の軸にさしけり初日影
はらはらと柳動くや初日影
ゆらゆらと柳うごくや初日影
初空や鳥は黒く富士白し
初空や裾野も冨士と成りにけり
初空や初日初鷄初鴉
初空や日の本明くる櫻色
目にさはる塵一つなし初みそら
初空へつゝとのべけり鶴の首
初空や江戸は火の子の花の春
初空や下より明くる相模灘
初み空去年の眼を開きけり
初空に去年の星の殘りかな
宮城や五色にそろふ初霞
初霞蒲團の裾にかゝるなり
古城を前にひかへて初霞
なすりつける繪筆のあとや初霞
星消えてあとは五色の初霞
水引のやうな雲あり初霞
烏帽子著た人ばかり也初霞
初東風に吹きちる顏の櫻哉
初東風の網にたまるや浦の春
初東風をうしろにうけて凧
馬の耳立てゝ東風吹くあした哉
初東風や空は朝より晴れちきり
初東風や日の丸の皺吹きのばし
樋の口や東風吹渡る獺の顏
女つれて東風に吹かれに東山
初東風の烏帽子わつかに動く哉
初東風の吹くになびかぬ髯はあらじ
御降の氷の上にたまりけり
御降りの流れいでけり御所の溝
御降りの雪にならぬも面白き
海人か家の若水猶も汐はゆし
若水や瓶の底なる去年の水
風吹て若水氷る星の影
仁齋の裃でくむ若井哉
若水や天廣うして星の數
若水に浮くや錢龜二つ三つ
若水や檜垣の嫗の其むかし
若水やふりわけ髪の共白髪
若水や星汲みこぼし汲みこぼし
船の人若水汲んで歸りけり
まゝにならば宇治の若水不二の齒朶
若水になつて落たる筧かな
若水になつてこほるゝ筧かな
若水になつて流るゝ筧かな
若水になりてこぼるゝ筧かな
若水の須磨に御題の心あり
初釣瓶曉の星の影ちらちら
四方拜其時朝日のほりつゝ
四方拜のお庭の霜や初鴉
活版の名剌ほりこむ御慶哉
朝比奈も同じ事いふ御慶哉
隣から御慶の聲の霞けり
年々や御慶の言葉かはりけり
鶯の宿に投げこむ名札かな
梅さげて新年の御慶申けり
唐人の日本語つかふ御慶かな
御慶申す加賀のなまりや加賀屋敷
乳母が子の袴著て來る御慶哉
土佐人の紙布を著て來る御慶哉
年禮や鳴翁住める眞砂町
門禮や草の庵にも隣あり
禮者わたる錦帶橋の夜明哉
輪かざりに標札探る禮者かな
梅いけて禮者ことわる病かな
梅さげて來る禮者や七日過
友につれて知らぬ禮者の來りけり
病牀を圍む禮者や五六人
病床をめぐる五人の禮者かな
年玉に上の字を書く試筆哉
年玉や長崎鯣蝦夷昆布
年玉や長崎の鯣蝦夷昆布
年玉や何ともしれぬ紙包み
年玉の鴨提げて書生戸を叩く
年玉や同穴の契り番ひ鴨
年玉を竝べて置くや枕もと
君が住む方を吾家の恵方哉
盗人の暦見て出る惠方かな
鶯の惠方を向て鳴にけり
目をやれば惠方にたてりふしの山
惠方向て行くや道々梅の花
蜑か家の惠方は廣し大日の出
寐具合や惠方に尻を向けて居る
君か代や二十六度の初暦
初暦日曜の日をしらべける
初暦花時鳥月時雨
人の手にはや古りそめぬ初暦
今年は青き標紙や初暦
神宮の判すわりけり初暦
新宅に掛くる釘なし初暦
初暦一枚あけてなかめけり
初暦今年も人にもらひけり
初暦五月の中に死ぬ日あり
早ぐりの年數表や初暦
初暦今年は遅き初卯哉
初暦鼠の尿によごれけり
灰の中に落てよこれぬ初暦
初ゆめや女郎と論語の卷の一
初梦や貘にくはした後家の顏
うれしさにはつ夢いふてしまひけり
初梦や松の柱に芽がふいて
はつ夢や吉野龍田の花盛
女來よ初梦語りなぐさまん
初梦の思ひしことを見ざりける
初夢や申の年には山の幸
初夢の何も見ずして明けにけり
雜煮くふてよき初夢を忘れけり
初夢に尾のある者を見たりけり
鼻息に飛んでは輕し寶舟
世渡りの波をのかれて寶舟
寶舟須磨の波音聞えけり
弘法は何と書きしぞ筆始
年玉や上の一字を筆はじめ
書初や髪の小旗の日のしるし
立札や法三章の筆始
書初の今年も拙かりけるよ
書初や尊円親王の流を汲む
書初や羽子に負けたる君が顔
聖徳を頌する文や筆始
書初に鶴の歌書く檀紙哉
齒固や鼠もためす鏡餅
齒固やいで海のもの山のもの
小松曳袴の泥も畫にかゝん
春日野に野守の妻の子日哉
春日野や子の日も過きて鶴の聲
君が手やわが手も添へて小松引
小松曳わが思ふ人は霞みけり
小松曳わきもこどこに霞むらん
子の日せん小松の中の小松哉
ほろほろと袴きれたり小松曳
我庵は門松引て子の日せん
我戀はひく手なぎさの小松哉
幾千代を引きすてられて姫小松
春日野の子の日に出たり六歌仙
小松かくれ鶴の子見ゆる子日哉
鶴の子のあとを子の日の小松哉
引かんとや小松かくれの緋の袴
春日野に女引くべき小松哉
烏帽子著た人ばかり也小松曳
君か代の薺をはやす拍子哉
其雪をそのままはやす薺かな
薺うつ都はづれの伏家かな
女王祿やねびまさりたる御笑顔
乘そめの足も亂れず雪のあと
一の矢は不二へそれけりゆみはしめ
一の矢は富士を目かけて年始
弓始其夜は鬼を退治けり
打ちまはす幕に眼のあり弓始
若殿の片肌ぬきや弓はじめ
君が代や鳥驚かぬ弓はじめ
ふじのねの矢先に霞む弓始
やせ腕や三千石の弓始
初荷ふんで天へものぼる八聲哉
牛引の初荷の山よ人の波
踊りけり初荷の山も崩れよと
提灯や初荷の山の山かつら
飾りかけし馬車集ひけり日本橋
窓あけて見れば淋しき初荷哉
痩馬をかざり立てたる初荷哉
ウレシキカナト蕎麥フルマヒヌ店卸
笑ひあふ十日夷の烏帽子哉
鬼瓦笑ふ朝日や藏ひらき
ふるくさき去年の匂ひや藏開
さつとあけて東風吹き入るゝ藏の中
象も來つ雀も下りつ鍬始
天は晴れ地は濕ふや鍬始
水仙をうつすや庵の鍬始
人の世の工夫ではなし削り掛
傲る世に伽羅は用ゐず削り掛
大内も伽羅は用ゐず削掛
甚五郎は何と削るぞ削り掛
乘そめや惠方參りの渡し舟
紙衣あり庵いかめしき着衣始
名所や絹商人の着衣始
うら返す其古衣の着衣始
風引きし初卯參りの美人哉
一日はとんとけぶるや鳥邊山
左義長の一日めでたし鳥部山
飾燒く坐敷の庭の日向哉
枯菊にどんどの灰のかゝりけり
綱引ややゝしばらくは聲もなし
綱引や通りかゝりし小山伏
綱引や山かけ下る悪法師
藪入の足跡多し畔の雪
藪入の二人落ちあふ渡し哉
藪入は都の梅をみやげ哉
藪入や牛の匂ひも珍しき
藪入や縁きる咄よもすから
藪入や思ひは同じ姉妹
藪入や鯛一匹を隣あひ
藪入や甥姪どもになぶらるゝ
藪入の八瀬や大原清閑寺
やぶ入のみやけをさげて來りけり
やぶ入の親もなき子や芝居好キ
やぶ入の佛壇拜む名殘哉
若樣をかりてめのとの里居哉
鶯にとばしるかかる水祝ひ
年玉に何まゐらせん水祝ひ
我妹子にわれから屠蘇の水祝
大君の來ませ御肴水祝ひ
嫁つれて鼠も出たり水祝ひ
若殿の若き程こそ水祝ひ
おとつれる昔念者や水祝
風引の男に水を祝ひけり
門口や這入る處を水祝
心安き友やしたゝか水祝
尋常に水祝はれん酒の醉
存分に水祝はゝや思ひ妻
樽提けて宵寐起すや水祝
つめたくて嬉しきものや水祝
年若き肌うつくし水祝
水祝戀の敵と名のりけり
高砂の松の二タ子が門の松
蓮莱の嶋の緑や門の松
兄の子の背丈のひけり門の松
兄の子の背丈のびたり門の松
兄の子の背丈ハのひて門の松
門松のない家もあり榮螺町
風吹て門松生けるものゝ如し
風吹て門松琴をしらべけり
門松や門なき家の門はしら
萬歳の入口せばし門の松
萬歳の袖かざしけり松かさり
我庵は明家にあらず門の松
明家や門松の齒拔面白き
門松や上手下手なき筆使ひ
門松や八百八屋町のその外も
呉竹の根岸の里や松飾り
ふじのねや麓は三保の松飾り
いさゝかの松結ひつけぬ門柱
大家や出口出口の松かざり
門松と門松と接す裏家哉
御所の門門松もなき尊さよ
門松に右し左す矢來町
門松やわがほとゝきす發行所
福藁に雀の下りる日向かな
奥山や人こぬ家の門かざり
橙や都の家数四十萬
ながながと又ながながと注連餝り
輪餝りに鶯ゆれる根岸哉
輪餝りを茅の輪にくゞる鶯か
木曽を出てこの三寳のかさり炭
木曽を出て都の家のかざり炭
禰宜が門注連繩の上なる注繩飾
めでたさや餝りの蜜柑盗まれて
裏門や小さ輪飾齒朶勝に
小蔀や暖簾の上の注連餝
古辻や地藏の堂のしめ飾り
おかざりの橙落す童かな
輪飾の橙落す童哉
飾小く門と知らで人の行き過ぎぬ
赤門の橙小き飾り哉
裏門の輪飾人に取られけり
三寳に蓬莱の山靜なり
輪かざりに〆切りてある小門哉
輪かざりや町人這入る勝手口
兩側に長き三井の飾り哉
簑笠を蓬莱にして草の庵
簑笠を蓬莱にして旅のはる
動きなき蓬莱山の姿哉
蓬莱に我身ちゞめてはいらうよ
蓬莱の上にしたるゝ柳哉
蓬莱や鶯のぞく籠の外
蓬莱や窓は睦月の薄月夜
蓬莱や山のものより海の物
大内は蓬莱山の姿かな
君か家は蓬莱橋をかざし哉
蓬莱に橙の朝日昇りけり
蓬莱に似たり小窓の松の山
蓬莱の山も動かぬ代なりけり
蓬莱や南山の蜜柑東海の鰕
包みたるものには根松藪柑子
鼠どもの蓬莱をくふてしまひけり
蓬莱に喰ひたきものもなかりけり
蓬莱に貧乏見ゆるあはれなり
鶏ないて蓬莱の山明けんとす
蓬莱にすこしなゐふる夜中哉
蓬莱に俳句の神を祭らんか
蓬莱の陰や鼠のさゝめ言
蓬莱の小く見ゆる書院かな
蓬莱の麓に寐たる夫婦かな
大なる蓬莱見ゆる町家哉
蓬莱にテーブル狹き硯哉
蓬莱に根松包むや昔ぶり
蓬莱のうしろの壁を漏る日哉
蓬莱や上野の山と相對す
蓬莱の齒朶蹈みはづす鼠哉
かたよせて蓬莱小し梅がもと
蓬莱に一斗の酒を盡しけり
蓬莱にくふべきものを探りけり
蓬莱に我生きて居る今年哉
蓬莱に我は死なざる今年哉
蓬莱のかち栗かぢる七日哉
蓬莱の小さき山を崩しけり
蓬莱の蜜柑ころげし座敷哉
蓬莱や襖あけたる病の間
蓬莱や名士あつまる上根岸
蓬莱に鼠のうからやから哉
蓬莱の鼠に祟る疫かな
蓬莱や襖を開く病の間
蓬莱やふゞきを祝ふ吹雪の句
蓬莱ノ松ノ茂リヤ鶴百羽
蓬莱も家越車や松の内
黴生て曇るといふらん鏡餅
橙は赤し鏡の餅白し
丸きもの初日輪飾り鏡餅
玄翁でわるや鍛冶屋の鏡餅
女の子二人かさねや鏡餅
海老赤く穂俵黒し鏡餅
海老野老草庵のあるじ愚老といふ
繭玉や東風に吹かるゝ店の先
繭玉や仰向にねて一人見る
父母妻子串柿のごと竝びけり
萬歳が笑へば山もわらひけり
萬歳の顔のやつれや田植笠
萬歳も煙草すふなり町はづれ
朝な朝な萬才東へ霞み行く
萬歳と相のりしたる渡し哉
萬歳の家にめでたし古鼓
萬歳の歸るあとより霞みけり
萬才のはなし給ふや國なまり
萬才の目出たくしたるいほり哉
萬歳や黒き手を出し足を出し
無雜作に萬歳樂の鼓哉
萬歳に見つけられけり草の庵
萬歳の鼓を倒す枕かな
萬歳や四條をもどる夕日影
松あれば則ち入るや萬歳樂
萬歳の踊りかけたり町はつれ
澤龜の萬歳見せう御國ぶり
戸あくるや萬歳來る東より
萬歳の鼓聞ゆる朝日かな
才藏は葛西あたりの訛かな
萬歳は今も烏帽子そ都鳥
萬歳や三河町出て淡路町
猿曳も猿も見とれて傀儡師
猿曳の紙子裂かるゝ猿の爪に
猿引や猿のきよろつく日本橋
猿曳の巴峽を下る小舟かな
猿曳や猿に着せたる晴小袖
猿引の過ぎ行く村の眞晝哉
御停止を猿引と猿と鳴きにけり
猿引も猿も鳴きけり十五日
猿曳の綱のばしたる一間哉
猿曳や若君抱きしお乳の人
猿引を親猿と思ふ夜もあらむ
猿曳や狆抱いて立つ思ひ者
病牀に猿曳を見る日和かな
烏帽子来て幣ふる猿や花の春
うつくしき妹をもてり猿まはし
梅のさく背戸へ入けり猿廻し
鹽尻をうしろになして猿まはし
正月は浮世に出たり猿まはし
鞭あげて入日招くや猿まはし
洗濯や追ひ返したる猿廻し
梅の咲く背戸へはいるや傀儡師
傀儡師宿はと聞けば丹波哉
其箱のうちのぞかせよ傀儡師
辨慶に吠つく犬や傀儡師
睦月から泣いて見せけり傀儡師
傀儡師梅の花道歩み來る
一休の賣りに出でけり掛想文
鶯の音もなし梅の懸想文
懸想文詩か萬葉か催馬樂か
鶯がのぞく鳥追の笠の中
鳥追や夜更けて歸る屋しき町
鳥追のあとから笑ふ雀かな
鳥追や夕日に下る九段阪
屠蘇くむや下戸大盃をとりあげて
屠蘇に醉ふて龜も躍るや岩の上
屠蘇に醉ふ龜岩ふんで躍りけり
屠蘇袋花色絹の匂ひ哉
汲むや屠蘇猩々舞の亂れ足
屠蘇かけて見ばや枯木の梅の枝
屠蘇の醉風頻りに吹く頬のあたり
古妻の屠蘇の銚子をさゝげける
養老の屠蘇にもならぬめでたさよ
掛物の松は屠蘇の海に映ずべく
元日の雨を記すや屠蘇の醉
拜領の盃屠蘇を飲み初めぬ
屠蘇強ふや鴨汁盡きて蠣の汁
病牀に蜜柑剥くなり屠蘇の醉
福祿が行事に立つや屠蘇の醉
若餅や草津の里の姥が軒
若餅や薺の七日過ぎて後
風吹て下戸の負けたる雜煮哉
傾城も猫もそろふて雜煮哉
すき腹のはるとしいへば雜煮餅
うたはゞや雜煮の腹をうちながら
謳はゞや雜煮の腹を敲きつゝ
三椀の雜煮喰ひぬ小傾城
七椀の雜煮くひけり梅の花
膳の上に繪の嶋のせて雜煮哉
旅人の雜煮喰ふたる鞠子哉
草の戸や雜煮の夜明酒の暮
雜煮餅くひなやみたる女かな
お雜煮をすゝめ參らす局哉
塗椀の家に久しき雜煮哉
兀椀の家に久しき雜煮哉
病む人の雜煮喰ひけり直り口
此山の黍の雜煮や日本一
徳川の昔男や雜煮くひ
めでたさも一茶位や雜煮餅
雜煮くふて第一號をいはひけり
參内の時間に近き雜煮哉
下戸狸雜煮の腹を叩いて曰く
下戸狸雜煮の腹を叩きけり
長病の今年も參る雜煮哉
百八人堂に聚まる雜煮かな
解しかぬる碧巖集や雜煮腹
雜煮腹本ヲ讀ンデモ猶ヘラズ
太箸を持ちあましたる子供哉
一つ子の太箸握る太鼓哉
太箸の太しき程ぞめでたけれ
太箸や草の庵も旅心
覺束な太箸握る花嫁御
痩腕の太箸にだも恥づるかな
大福の窓に見えけり東山
大福や枯木に似たる梅の花
大福や松の柱に竹の杓
風吹て大服たまふ日なる哉
大服や家に傳はる霰釜
田つくりや庵の肴も海のもの
世の中に馴れぬごまめの形かな
田つくりを掛けて置きけり鼠罠
かち栗もごまめも君を祝ひけり
君と共に發句話さん事始
裏棚に浪人住んでうたひ初
此奧に又家のありうたひぞめ
盆栽に松あり梅あり謠初
磯の家や誰が公達の謠ひ初
諷初須磨と明石を窓の前
草の戸や雜煮の腹の謠初
謠初老いにけらしな人の聲
あつらえの扇出來たり謠初
扇取るわらべ可愛し謠初
謠初謠ひをさめて餘興かな
謠初近くきこゆる鼓かな
謠初七日をえらぶ嘉例かな
謠初羽衣すでに半なり
謠初寶生太夫參りけり
梅いけて謠はじめの儀式かな
草の家の隣に遠く謠初
膳立の茶の間かしまし謠初
舞そめや金泥ひかる京扇
寵愛の狆抱く後家やはつ芝居
歌舞伎座の前通りけり初芝居
さそはれし妻を遣りけり二の替
初芝居團十郎の烏帽子かな
初芝居見て來て曠著いまだ脱がず
初曾我や團十菊五左團小團
サソハレテ妻ヲヤリケリ二ノ替
春木座へさそはれ行やはつ芝居
子を負て子守鞠つく片手業
目の黒い人に生れて手鞠哉
目の黒ひ人と生れて手鞠かな
手鞠つき羽子遣る程になりにけり
歌かるた戀ならなくに胴氣哉
歌かるた女ばかりの夜は更けぬ
蓬莱の一間明るし歌かるた
歌かるた知らぬ女と竝びけり
遣羽子の下にかすむやふしの山
遣羽子に鶯にげる流し哉
遣羽子をつきつきよける車哉
人ごみの中に羽子つくをとめ哉
遣羽子や小尼見返る町はつれ
遣羽子や根岸の奧の明地面
遣羽子に京の男のやさしさよ
遣羽子のちらちら雪となりにけり
遣羽子や京の六條數珠屋町
遣羽子や官女老いたる緋の袴
遣羽子や下宿の窓の品定め
遣羽子や十七八のうしろつき
遣羽子や十六七のうしろつき
遣羽子や皆君が代の女ぶり
遣羽子に去年の娘見えぬかな
遣羽子の笑ひ聞ゆる小道かな
遣羽子の吹かれて風に斜なり
いもうとの羽子板すこし劣りたる
羽子板や十五かしらに皆女
遣羽子の終に負けたる娘かな
遣羽子や誰が塗られて笑ひ聲
遣羽子や我墨つける君が顔
たらし髪羽子遣るあこに菓子やらん
遣羽子に負けてくやしき夕餉哉
遣羽子の風に上手を盡しけり
遣羽子の尻叩きけり泣きにけり
遣羽子や五人の中の思ひ人
遣羽子や邪魔して過る白袴隊
遣羽子や鼻の白粉頬の墨
遣羽子や往來の繁き拔小路
遣羽子や夕飯くふて歌かるた
遣羽子に負けし美人の怒哉
雙六のどこへころげて樂まん
雙六や盧生の夢のふりあがり
寶引やあとにものうき包み紙
寶引や花蝋燭のぽっぽっぽ
福引の坐敷を照すラムプ哉
福引の何やら知れぬ包み哉
福引のわれ大なる物を得たり
福引のわれ貧に十能を得たり
福引に耻をかきたる女哉
福引の笑ひどよめく隣哉
福引のあとで素人の落後哉
福引に公孫勝の手づま哉
福引の曉鐘と題す包哉
姑のくはぬ餅ありよめが君
猫もかはず一人ぐらしよ嫁が君
鐵漿壺をはね返しけり嫁が君
蓬莱の山を崩すや嫁が君
行燈の油なめけり嫁が君
かた餅やそろそろかぢる嫁が君
肴には數の子よけん嫁が君
餅殿を戀に夜毎の嫁か君
さゝやくは誰そ小殿原嫁か君
嫁か君の通ひ路多し破障子
灯を消して待たずしもあらず嫁が君
灯を消して待つ夜更たり嫁が君
鐵漿壺をふみなかへしそ嫁か君
金屏に群れつゝ嫁が君走る
枕邊に明けかゝる夜や嫁か君
嫁が君の通ひ路狹し升落し
一羽來て屋根にもなくや初烏
朝日影羽紫に初烏
風吹て悲しさうなり初烏
初鴉上野の闇をはなれけり
初烏お城の森にさわぐなり
ほのほのや朝日よび出す初烏
初鴉きぬきぬの恨みなかりけり
初烏熊野の御寺靜かなり
初鴉不二か筑波かそれかあらぬ
古妻のいきたなしとや初鴉
山里や枯木の枝の初烏
よき衣の枕邊に在り初鴉
銀座出る新聞賣や初鴉
初とりや先年禮のいひはじめ
初鷄もしるや義農の米の恩
初鷄やねぐらの闇をいでゝ行
初鷄の枕の上にうたひける
初鷄や百萬石の聲つくり
初鷄に眼をあく花の莟哉
初鷄の二聲ばかり鳴きにけり
初鷄の鳴くかと待てば犬吠ゆる
ゆづり葉や齒朶や都は山くさし
賤が家に置くも笑ふや福壽草
どこ向けて見てもやさしや福壽草
何もかもめでたけれども福壽草
日あたりや小窓に開く福壽艸
ふゝと笑ふ夫婦二人や福壽草
柴の戸や黄金花さく福壽艸
正月のはでな花なり福壽草
水仙の冬にならんで福壽草
南山をかざすや窓の福壽草
俗な名を色を形を福壽草
福壽草影三寸の日向哉
福壽草貧乏艸もあらまほし
盆栽や梅つぼみ福壽草黄なり
莟太く開かぬを愛す福壽草
取合ヒや梅に鄙しき福壽草
里昂製のテーブル掛や福壽草
ガラス越に日のあたりけり福壽草
句を好む書生の室や福壽草
煎餅賣る根岸の家や福壽草
名をかへてことぶき草や歌に詠む
猫の居る椽の日南や福壽草
病室の煖爐の側や福壽草
福壽草の蕾をいぢる机かな
窓掛の房さがりけり福壽草
水入の水をやりけり福壽草
善き鉢の殊にいやしや福壽草
ストーヴにほとりして置く福壽草
盆栽の梅早く福壽草遲し
裏白のある夜伊勢海老に語って曰く
裏白のひんとはねたる姿哉
橙や裏白がくれなつかしき
名こそかはれ江戸の裏白京の齒朶
風吹て齒朶山鳥の尾に似たり
齒朶の羽蓬莱鶴の如く也

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