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あんたたちは「ふーん星人」か 芥川龍之介の俳句を読む③
言葉は意味を持っている。
解ります?
言葉は意味を持っている。
本当に解っていますか?
解っていないでしょう?
前にも書いたが子供とお母さんの会話で、
「お昼何食べたい?」
「ソーセージとトマトがつながっているの」
というものがあった。
ん?
![](https://assets.st-note.com/img/1697413957049-vBA2TaBUfD.jpg)
私の頭にはこんな絵が浮かんだ。
しかしさすがは子どもの言語を司る母親、即座に
「えーホットドッグ? モスにあったかな……」と返した。
言葉が意味を持つということはこういうことだ。
「じゃあソーセージとトマトがつながっているの食べに行きましょうね」と言っても、どこにも辿り着けない。昼飯抜きだ。
しかしどうも昼飯抜きの人しか見当たらない。
野茨にからまる萩のさかり哉
芥川にこんな句があります。
……。
……。
……。
……。
で?
それだけ?
それが鑑賞?
言葉は意味を持っているって解ります?
そういう人しか見つからない。
要するに「明星のちろり」を考えない人が、「芥川にこんな句があります」とだけ書いて鑑賞したようなふりをしているのだが、そんなものは鑑賞でも何でもない。そんなことを書いて何になる?「じゃあソーセージとトマトがつながっているの食べに行きましょうね」でしかない。「えーホットドッグ? モスにあったかな……」でないと言葉が意味を持つているという地点にない。
さかり【盛り】
①勢いが盛んなこと。栄えているさま。隆盛。万葉集5「―に咲ける梅の花」。「暑い―」
②強壮な時。青壮年期。体力や気力が最も充実している時期。源氏物語葵「若く―の子におくれ奉りて」。「―を過ぎる」
③人が多く寄り集まり、商売などが盛んであること。繁昌。にぎわい。人情本、春色辰巳園「―の時は十や二十の金はなんのといふやうになるのも土地がら」
④獣類が一定の時期に発情すること。「―がつく」
⑤「…ざかり」の形で、接尾語的にも使う。「花―」「女―」「働き―」
野茨にからまる萩のさかり哉
この句は本来つる性の植物で群生する白い野茨に枝垂れるように咲く濃紫の萩が絡みついてさかっているよと「あべこべ」を詠んでいる訳でしょう。
この「さかり」は明らかにセックスを意味しています。
これが面白いのは「同宿の或る夫人のために」扇子に書いているところです。要するにHagi is having sex with Noibara.というかなり尖った扇子を作ろうとしているところにある。
野茨にからまる萩のさかり哉と書かれたTシャツを着た女性と会ったら、顔を赤らめてもいい。
ベルリンで、親ハマスの人はユダヤ人が住んでいるアパートをマークし始めた。
— ナザレンコ・アンドリー🇺🇦🤝🇯🇵 (@nippon_ukuraina) October 15, 2023
80年前と同じだな pic.twitter.com/fCAeFkhCbw
阪急だから許されるこコノ痛電 pic.twitter.com/sPFGkMye3e
— 雷鳥 (@raityou1gou) October 15, 2023
ほのほのや鼾忽ち絶えて春
我宿や鼾忽ち絶えて春
紀元二千五百五十四年なり
年明けて春まだ立たず梅の花
掃溜にこれはこれはの春も來し
春や來る表に物も案内も
百卷の古書の山こえ春は來ぬ
ほのほのと茜の中や今朝の不二
隻手聲絶えて年立つあした哉
紀元二千五百五十五年哉
紀元二千五百五十五年なり
新年や床は竹の画梅の花
咲にけり筆のさきより年の花
新年の上野寂寞と鴉鳴く
寐んとすれば鷄鳴いて年新なり
恭賀新禧一月一日日野昇
新年の霜と消えたるはかなさよ
新年の棺に逢ひぬ夜中頃
新年の墨水語り其村吶る
新年や鶯鳴いてほとゝぎす
蒲団から首出せば年の明けて居る
年こゝにあらたなる梅の莟哉
一月二日奇石瑞草を見る
年徳と布袋とどつと笑ひけり
蟹を得たり新年會の殘り酒
蟹を得つ新年會の殘り酒
新年稿成つて萬斛の血を灑きけり
新年の白紙綴ちたる句帖哉
子の年の鼠にちなむ落語哉
醉蟹や新年會の殘り酒
經ニ曰ク春王の正月日々食たれり
正月の物あはれなり傀儡師
正月や賤の伏屋も文の數
貧乏の正月はうしさりながら
老もいさめ痩せたりといへども午の年
琴鼓ならべかけたる睦月哉
正月を水仙の花のさかり哉
一月となりけり雪もふりにけり
うれしさの過ぎぬ正月四日なり
正月の人あつまりし落語かな
正月や里はきのふの古薄
春王の正月書すと書かれたり
年礼の過ぎぬ正月四日なり
正月や橙投げる屋敷町
一年は正月に一生は今に在り
一年は正月に一生ハ今にあり
正月や餅ならべたる佛の間
正月の末にとゞきぬ支那みかん
水こほる風にさきけり江戸の春
うそうそと蝨はひけり菴の春
猫の顔もみがきあげたり玉の春
あらたまの春としなれば人笑ふ
いくたびの花の莟ぞ庵の春
烏帽子着る世ともならばや花の春
おそろしき殿御めでたし花の春
死ぬものと誰も思はず花の春
死ぬるとハ思ハさりけり花の春
女房によびおこされて花の春
袴着て火ともす庵や花の春
花の春うかれて屠蘇の二日醉
兵隊は國の花なりけふの春
我等まで神の御末そけふの春
明て春暮ても春のうれしさよ
庵の春鏡餅より白みけり
鶯や東よりくる庵の春
うつくしき根岸の春やさゝの雪
閏年や一日遅き花の春
風吹て雨降てさて花の春
風吹て山里春をしらぬ哉
紀元二千五百五十三年の春
君が代を踊りそめけり花の春
鍬に土つかぬ一日や里の春
くれ竹の根岸にすんで花の春
元日の掛乞もあり江戸の春
景に富む庵や山の春水の春
化粧部屋に吾妹子光る宿の春
此隅に門松立てり江戸の春
民の春同胞三千九百萬
つくばねは筆のさきなり庵の春
舶來の牛も日本の花の春
初春やいわけなき兒の兩鼓
初春や七十五年いきのびん
初春や雪の中なる善光寺
母人は江戸はじめての春日哉
春くばる都の文や十二萬
春は曙雲紫のつく波山
東からあれあれ春がくるわいな
目を明て見たれば春となりにけり
餅花にとびつく猫や玉の春
世の中をすてずことしも花の春
梅ハまだ枯木に似たり花の春
梅はまだ枯木にもつとして花の春
烟突の煙にぎはふ民の春
大幅の帶そろひけり京の春
傾城の古郷遠し京の春
三寶に東海南山庵の春
竹の影梅の影あり窓の春
猫の子の眷族ふゑて玉の春
端書あり活版もあり文の春
春もはや運坐賑ふ老梅居
父母います人たれたれそ花の春
盆栽の紅梅さくや女御の春
むつかしき言の葉草や花の春
めでたさやよその言葉も旅の春
あらをかし何に浮世の花の春
紀元二千五百五十五年の春
とにかくに坊主をかしや花の春
竹に葉無し松に雌雄無し江戸の春
初春や赤裝束の牛童
烏帽子着た人の心や神の春
海老にさへ伊勢の名はあり神の春
松の木の注連繩古し神の春
淋しさの尊とさまさる神の春
玉くしげ二見にあける神の春
古杉の花咲かぬ身を神の春
君が代や千嶋よりくる國の春
四方海渺々として國の春
十萬の常備軍あり國の春
僧赤く神主白し國の春
萬國の地圖を開くや國の春
餅花の小判動かず國の春
新しき地圖も出來たり國の春
猫の顏もみかきあけたり御代の春
のら者もあつてめでたし御代の春
君が春箒に掃ふ塵もなし
東京と江戸も變りて君か春
田舎出のけつとう赤く君が春
田舎出のけつとう赤しみよの春
狼は山へ歸るや御代の春
宮城や文武をかぬる君か春
めでたさやいつまでかくて君か春
君が春さゝれ石原玉かしは
君が春背丈にあまる鶴の首
命長く喜び多し御代の春
永代の橋も落ちずに君が春
君が春誰が殿醉ふて神樂歌
草も木も君が春とぞ歌ひける
中の川潺湲として御代の春
立臼の重さも問はず君か春
刀鍛冶は庖丁鍛冶や御代の春
四位五位は升で量るよ君が春
檻の内に麒麟も老いて君か春
甚六の寐言とだえて去年今年
去年の夢さめてことしのうつゝ哉
元日や見直すふじの去年の雪
元日は何も思はで暮らしけり
元日や一輪開く福壽草
元日や門松に照る朝日影
元日やきのふはきのふけふはけふ
元日と知らぬ鼾の高さかな
元日のはれや片鎌大鳥毛
元日や朝日に鶴の羽つくろひ
元日や勅使の橋に松の影
元日や日も出ぬさきの不二の山
元日やふしへものほる人心
元日やふじ見る國はとことこぞ
元日やむしろ屏風に梅のかげ
風吹てても元日の覺束な
元日に海老の死骸ぞめでたけれ
元日に海老の死骸のおもしろや
元日は佛なき世へもどりけり
元日や上野の森に去年の月
元日や蘇鐵に動く風もなし
元日やとてもの事に死で見ん
白妙の不尽見て立てり日の始
禰宜だちよ元日のいはれ物語れ
うつくしや洛陽の元日雪ちらちら
風凪でけさ元日となりにけり
元日に追付かれけり破衾
元日の雀鳴くなり手水鉢
元日の住吉淋し松の音
元日の住吉寒し松の風
元日の夕日になりて哀れ也
元日の夕日になれば哀れ也
元日の芳野に花もなかりけり
元日もたゞ尊とさの涙かな
元日や曙染の振小袖
元日や金の話のかしましき
元日や何やら語る鶴四五羽
元日や二十六年同じこと
元日や都の宿の置巨燵
元日をお濠に眠るかもめ哉
元日を御濠の鴎とも知らず
灯を消して元日と申庵哉
雪ふるや洛陽の元日うつくしき
おもしろや元日暮れて月六日
元日の行燈をかしや枕もと
元日の太鼓聞かばや法華寺
元日も二日も暮れてしまひけり
元日や枯菊殘る庭のさき
元日の馬車見に行くや丸の内
元日の人通りとはなりにけり
元日は是も非もなくて衆生也
元日は除夜のあしたの名也けり
元日も暮れて上野の嵐哉
元日やしろかねの餅こかねの蜜柑
町はづれ元日らしからぬ家よ
うれしかる子に元日の曇りけり
元日や鶴も飛ばざる不二の山
元日を天地和合のはじめ哉
就中梅元日の姿なる
元日の病者見舞ふや駿河臺
大三十日愚なり元日猶愚也
元朝や虚空暗く但不二許り
うつかりと元日の朝の長寢哉
元朝や米くれさうな家はどこ
元朝や皆見覺の紋處
風吹てつめたき年のあした哉
風やんでけさ元日となりにけり
元旦に追つかれけり破衾
元朝やわれは神國の男なり
元朝や車ときめく二重橋
元旦の馬車見る人や丸の内
元朝の上野靜かに灯殘れり
今年はと思ふことなきにしもあらず
まだ夜なり西のはてには今朝の不二
元日や朝からものゝ不平なる
鶯も谷の戸出るやけさの春
けさの春御城も庵も一かすみ
月落て星まばらなりけさの春
我庵は御城を二里やけさの春
我等まで神の御末ぞけさの春
一休は死んでめでたしけさの春
家持て門松立てゝけさの春
風吹て門松うたふけさの春
かばかりのものとしらじをけさの春
今朝の春有明月を見つけたり
けさの春琵琶湖緑に不二白し
城門に槍の林やけさの春
唾壺に龍はかくれてけさの春
天守閣屹然としてけさの春
どこ見ても霞だらけにけさの春
世の中にすめばこそあれけさの春
鶯の隣にすんで今朝の春
君か代や四千萬人けさの春
白河の關むらさきにけさの春
白し青し相生の筑波けさの春
禪僧の寂然として今朝の春
なき親の繪姿笑ふ今朝の春
のどかさは新聞もなしけさの春
吾妹子のうしろ姿やけさの春
裾を引く妻の立居や三ヶ日
門番に餅を賜ふや三ヶ日
口紅や四十の顏も松の内
我門や松はたてねど松の内
裏門や遣羽子はやる松の内
袴着た町人見ゆる松の内
錢湯に善き衣著たり松の内
松の内薺うつ日も過ぎにけり
吉原の禿遊ふや松の内
吉原に禿遊ふや松の内
宮人や御喪に籠る松の内
門番に餅をたまふや松の内
借著して湯に行く旅の松の内
廻向院の相撲はじまる松の内
錢湯を出づる美人や松の内
錢湯を早くしまふや松の内
錢金を湯水に使ふ松の内
よひよひの鼓の音や松の内
ふんどしややうやう黒む初明り
初日の出隣のむすめお白粉未だつけず
毘沙門や松にはさんで初日出
不盡赤し筑波を見れは初日の出
蓬莱の松にさしけり初日の出
墨梅の軸にさしこむや初日の出
ゆらゆらと柳動くや初日の出
今年も東より出る初日哉
筑波根は二見に似たり初日の出
初日さす硯の海に波もなし
星は消え月はしらみて初日の出
我庵はお城の上に初日哉
鴉一羽初日の中を通りけり
初日浮くや金波銀波の太平洋
海のはてにあれあれ初日浮き給ふ
大船のへさきに浮ぶ初日哉
空近くあまりまばゆき初日哉
初日のつと萬歳の聲どよみけり
初日漏るおはらひ箱のほこり哉
帆檣に人かき上る初日かな
山里や初日を拜む十時頃
雪きらきら初日のぼりぬ馬の耳
鴉飛ぶや初日見えそむる山の上
初日呑むと夢みて發句榮ゆべく
初日見ばや海に向いて松くねる處
初日拜むべく思はずわれ無精なり
新聞を門で受け取る初日哉
伊勢人のはがきに刷りし初日哉
蛤の口より伊勢の初日哉
墨梅の軸にさしけり初日影
はらはらと柳動くや初日影
ゆらゆらと柳うごくや初日影
初空や鳥は黒く富士白し
初空や裾野も冨士と成りにけり
初空や初日初鷄初鴉
初空や日の本明くる櫻色
目にさはる塵一つなし初みそら
初空へつゝとのべけり鶴の首
初空や江戸は火の子の花の春
初空や下より明くる相模灘
初み空去年の眼を開きけり
初空に去年の星の殘りかな
宮城や五色にそろふ初霞
初霞蒲團の裾にかゝるなり
古城を前にひかへて初霞
なすりつける繪筆のあとや初霞
星消えてあとは五色の初霞
水引のやうな雲あり初霞
烏帽子著た人ばかり也初霞
初東風に吹きちる顏の櫻哉
初東風の網にたまるや浦の春
初東風をうしろにうけて凧
馬の耳立てゝ東風吹くあした哉
初東風や空は朝より晴れちきり
初東風や日の丸の皺吹きのばし
樋の口や東風吹渡る獺の顏
女つれて東風に吹かれに東山
初東風の烏帽子わつかに動く哉
初東風の吹くになびかぬ髯はあらじ
御降の氷の上にたまりけり
御降りの流れいでけり御所の溝
御降りの雪にならぬも面白き
海人か家の若水猶も汐はゆし
若水や瓶の底なる去年の水
風吹て若水氷る星の影
仁齋の裃でくむ若井哉
若水や天廣うして星の數
若水に浮くや錢龜二つ三つ
若水や檜垣の嫗の其むかし
若水やふりわけ髪の共白髪
若水や星汲みこぼし汲みこぼし
船の人若水汲んで歸りけり
まゝにならば宇治の若水不二の齒朶
若水になつて落たる筧かな
若水になつてこほるゝ筧かな
若水になつて流るゝ筧かな
若水になりてこぼるゝ筧かな
若水の須磨に御題の心あり
初釣瓶曉の星の影ちらちら
四方拜其時朝日のほりつゝ
四方拜のお庭の霜や初鴉
活版の名剌ほりこむ御慶哉
朝比奈も同じ事いふ御慶哉
隣から御慶の聲の霞けり
年々や御慶の言葉かはりけり
鶯の宿に投げこむ名札かな
梅さげて新年の御慶申けり
唐人の日本語つかふ御慶かな
御慶申す加賀のなまりや加賀屋敷
乳母が子の袴著て來る御慶哉
土佐人の紙布を著て來る御慶哉
年禮や鳴翁住める眞砂町
門禮や草の庵にも隣あり
禮者わたる錦帶橋の夜明哉
輪かざりに標札探る禮者かな
梅いけて禮者ことわる病かな
梅さげて來る禮者や七日過
友につれて知らぬ禮者の來りけり
病牀を圍む禮者や五六人
病床をめぐる五人の禮者かな
年玉に上の字を書く試筆哉
年玉や長崎鯣蝦夷昆布
年玉や長崎の鯣蝦夷昆布
年玉や何ともしれぬ紙包み
年玉の鴨提げて書生戸を叩く
年玉や同穴の契り番ひ鴨
年玉を竝べて置くや枕もと
君が住む方を吾家の恵方哉
盗人の暦見て出る惠方かな
鶯の惠方を向て鳴にけり
目をやれば惠方にたてりふしの山
惠方向て行くや道々梅の花
蜑か家の惠方は廣し大日の出
寐具合や惠方に尻を向けて居る
君か代や二十六度の初暦
初暦日曜の日をしらべける
初暦花時鳥月時雨
人の手にはや古りそめぬ初暦
今年は青き標紙や初暦
神宮の判すわりけり初暦
新宅に掛くる釘なし初暦
初暦一枚あけてなかめけり
初暦今年も人にもらひけり
初暦五月の中に死ぬ日あり
早ぐりの年數表や初暦
初暦今年は遅き初卯哉
初暦鼠の尿によごれけり
灰の中に落てよこれぬ初暦
初ゆめや女郎と論語の卷の一
初梦や貘にくはした後家の顏
うれしさにはつ夢いふてしまひけり
初梦や松の柱に芽がふいて
はつ夢や吉野龍田の花盛
女來よ初梦語りなぐさまん
初梦の思ひしことを見ざりける
初夢や申の年には山の幸
初夢の何も見ずして明けにけり
雜煮くふてよき初夢を忘れけり
初夢に尾のある者を見たりけり
鼻息に飛んでは輕し寶舟
世渡りの波をのかれて寶舟
寶舟須磨の波音聞えけり
弘法は何と書きしぞ筆始
年玉や上の一字を筆はじめ
書初や髪の小旗の日のしるし
立札や法三章の筆始
書初の今年も拙かりけるよ
書初や尊円親王の流を汲む
書初や羽子に負けたる君が顔
聖徳を頌する文や筆始
書初に鶴の歌書く檀紙哉
齒固や鼠もためす鏡餅
齒固やいで海のもの山のもの
小松曳袴の泥も畫にかゝん
春日野に野守の妻の子日哉
春日野や子の日も過きて鶴の聲
君が手やわが手も添へて小松引
小松曳わが思ふ人は霞みけり
小松曳わきもこどこに霞むらん
子の日せん小松の中の小松哉
ほろほろと袴きれたり小松曳
我庵は門松引て子の日せん
我戀はひく手なぎさの小松哉
幾千代を引きすてられて姫小松
春日野の子の日に出たり六歌仙
小松かくれ鶴の子見ゆる子日哉
鶴の子のあとを子の日の小松哉
引かんとや小松かくれの緋の袴
春日野に女引くべき小松哉
烏帽子著た人ばかり也小松曳
君か代の薺をはやす拍子哉
其雪をそのままはやす薺かな
薺うつ都はづれの伏家かな
女王祿やねびまさりたる御笑顔
乘そめの足も亂れず雪のあと
一の矢は不二へそれけりゆみはしめ
一の矢は富士を目かけて年始
弓始其夜は鬼を退治けり
打ちまはす幕に眼のあり弓始
若殿の片肌ぬきや弓はじめ
君が代や鳥驚かぬ弓はじめ
ふじのねの矢先に霞む弓始
やせ腕や三千石の弓始
初荷ふんで天へものぼる八聲哉
牛引の初荷の山よ人の波
踊りけり初荷の山も崩れよと
提灯や初荷の山の山かつら
飾りかけし馬車集ひけり日本橋
窓あけて見れば淋しき初荷哉
痩馬をかざり立てたる初荷哉
ウレシキカナト蕎麥フルマヒヌ店卸
笑ひあふ十日夷の烏帽子哉
鬼瓦笑ふ朝日や藏ひらき
ふるくさき去年の匂ひや藏開
さつとあけて東風吹き入るゝ藏の中
象も來つ雀も下りつ鍬始
天は晴れ地は濕ふや鍬始
水仙をうつすや庵の鍬始
人の世の工夫ではなし削り掛
傲る世に伽羅は用ゐず削り掛
大内も伽羅は用ゐず削掛
甚五郎は何と削るぞ削り掛
乘そめや惠方參りの渡し舟
紙衣あり庵いかめしき着衣始
名所や絹商人の着衣始
うら返す其古衣の着衣始
風引きし初卯參りの美人哉
一日はとんとけぶるや鳥邊山
左義長の一日めでたし鳥部山
飾燒く坐敷の庭の日向哉
枯菊にどんどの灰のかゝりけり
綱引ややゝしばらくは聲もなし
綱引や通りかゝりし小山伏
綱引や山かけ下る悪法師
藪入の足跡多し畔の雪
藪入の二人落ちあふ渡し哉
藪入は都の梅をみやげ哉
藪入や牛の匂ひも珍しき
藪入や縁きる咄よもすから
藪入や思ひは同じ姉妹
藪入や鯛一匹を隣あひ
藪入や甥姪どもになぶらるゝ
藪入の八瀬や大原清閑寺
やぶ入のみやけをさげて來りけり
やぶ入の親もなき子や芝居好キ
やぶ入の佛壇拜む名殘哉
若樣をかりてめのとの里居哉
鶯にとばしるかかる水祝ひ
年玉に何まゐらせん水祝ひ
我妹子にわれから屠蘇の水祝
大君の來ませ御肴水祝ひ
嫁つれて鼠も出たり水祝ひ
若殿の若き程こそ水祝ひ
おとつれる昔念者や水祝
風引の男に水を祝ひけり
門口や這入る處を水祝
心安き友やしたゝか水祝
尋常に水祝はれん酒の醉
存分に水祝はゝや思ひ妻
樽提けて宵寐起すや水祝
つめたくて嬉しきものや水祝
年若き肌うつくし水祝
水祝戀の敵と名のりけり
高砂の松の二タ子が門の松
蓮莱の嶋の緑や門の松
兄の子の背丈のひけり門の松
兄の子の背丈のびたり門の松
兄の子の背丈ハのひて門の松
門松のない家もあり榮螺町
風吹て門松生けるものゝ如し
風吹て門松琴をしらべけり
門松や門なき家の門はしら
萬歳の入口せばし門の松
萬歳の袖かざしけり松かさり
我庵は明家にあらず門の松
明家や門松の齒拔面白き
門松や上手下手なき筆使ひ
門松や八百八屋町のその外も
呉竹の根岸の里や松飾り
ふじのねや麓は三保の松飾り
いさゝかの松結ひつけぬ門柱
大家や出口出口の松かざり
門松と門松と接す裏家哉
御所の門門松もなき尊さよ
門松に右し左す矢來町
門松やわがほとゝきす發行所
福藁に雀の下りる日向かな
奥山や人こぬ家の門かざり
橙や都の家数四十萬
ながながと又ながながと注連餝り
輪餝りに鶯ゆれる根岸哉
輪餝りを茅の輪にくゞる鶯か
木曽を出てこの三寳のかさり炭
木曽を出て都の家のかざり炭
禰宜が門注連繩の上なる注繩飾
めでたさや餝りの蜜柑盗まれて
裏門や小さ輪飾齒朶勝に
小蔀や暖簾の上の注連餝
古辻や地藏の堂のしめ飾り
おかざりの橙落す童かな
輪飾の橙落す童哉
飾小く門と知らで人の行き過ぎぬ
赤門の橙小き飾り哉
裏門の輪飾人に取られけり
三寳に蓬莱の山靜なり
輪かざりに〆切りてある小門哉
輪かざりや町人這入る勝手口
兩側に長き三井の飾り哉
簑笠を蓬莱にして草の庵
簑笠を蓬莱にして旅のはる
動きなき蓬莱山の姿哉
蓬莱に我身ちゞめてはいらうよ
蓬莱の上にしたるゝ柳哉
蓬莱や鶯のぞく籠の外
蓬莱や窓は睦月の薄月夜
蓬莱や山のものより海の物
大内は蓬莱山の姿かな
君か家は蓬莱橋をかざし哉
蓬莱に橙の朝日昇りけり
蓬莱に似たり小窓の松の山
蓬莱の山も動かぬ代なりけり
蓬莱や南山の蜜柑東海の鰕
包みたるものには根松藪柑子
鼠どもの蓬莱をくふてしまひけり
蓬莱に喰ひたきものもなかりけり
蓬莱に貧乏見ゆるあはれなり
鶏ないて蓬莱の山明けんとす
蓬莱にすこしなゐふる夜中哉
蓬莱に俳句の神を祭らんか
蓬莱の陰や鼠のさゝめ言
蓬莱の小く見ゆる書院かな
蓬莱の麓に寐たる夫婦かな
大なる蓬莱見ゆる町家哉
蓬莱にテーブル狹き硯哉
蓬莱に根松包むや昔ぶり
蓬莱のうしろの壁を漏る日哉
蓬莱や上野の山と相對す
蓬莱の齒朶蹈みはづす鼠哉
かたよせて蓬莱小し梅がもと
蓬莱に一斗の酒を盡しけり
蓬莱にくふべきものを探りけり
蓬莱に我生きて居る今年哉
蓬莱に我は死なざる今年哉
蓬莱のかち栗かぢる七日哉
蓬莱の小さき山を崩しけり
蓬莱の蜜柑ころげし座敷哉
蓬莱や襖あけたる病の間
蓬莱や名士あつまる上根岸
蓬莱に鼠のうからやから哉
蓬莱の鼠に祟る疫かな
蓬莱や襖を開く病の間
蓬莱やふゞきを祝ふ吹雪の句
蓬莱ノ松ノ茂リヤ鶴百羽
蓬莱も家越車や松の内
黴生て曇るといふらん鏡餅
橙は赤し鏡の餅白し
丸きもの初日輪飾り鏡餅
玄翁でわるや鍛冶屋の鏡餅
女の子二人かさねや鏡餅
海老赤く穂俵黒し鏡餅
海老野老草庵のあるじ愚老といふ
繭玉や東風に吹かるゝ店の先
繭玉や仰向にねて一人見る
父母妻子串柿のごと竝びけり
萬歳が笑へば山もわらひけり
萬歳の顔のやつれや田植笠
萬歳も煙草すふなり町はづれ
朝な朝な萬才東へ霞み行く
萬歳と相のりしたる渡し哉
萬歳の家にめでたし古鼓
萬歳の歸るあとより霞みけり
萬才のはなし給ふや國なまり
萬才の目出たくしたるいほり哉
萬歳や黒き手を出し足を出し
無雜作に萬歳樂の鼓哉
萬歳に見つけられけり草の庵
萬歳の鼓を倒す枕かな
萬歳や四條をもどる夕日影
松あれば則ち入るや萬歳樂
萬歳の踊りかけたり町はつれ
澤龜の萬歳見せう御國ぶり
戸あくるや萬歳來る東より
萬歳の鼓聞ゆる朝日かな
才藏は葛西あたりの訛かな
萬歳は今も烏帽子そ都鳥
萬歳や三河町出て淡路町
猿曳も猿も見とれて傀儡師
猿曳の紙子裂かるゝ猿の爪に
猿引や猿のきよろつく日本橋
猿曳の巴峽を下る小舟かな
猿曳や猿に着せたる晴小袖
猿引の過ぎ行く村の眞晝哉
御停止を猿引と猿と鳴きにけり
猿引も猿も鳴きけり十五日
猿曳の綱のばしたる一間哉
猿曳や若君抱きしお乳の人
猿引を親猿と思ふ夜もあらむ
猿曳や狆抱いて立つ思ひ者
病牀に猿曳を見る日和かな
烏帽子来て幣ふる猿や花の春
うつくしき妹をもてり猿まはし
梅のさく背戸へ入けり猿廻し
鹽尻をうしろになして猿まはし
正月は浮世に出たり猿まはし
鞭あげて入日招くや猿まはし
洗濯や追ひ返したる猿廻し
梅の咲く背戸へはいるや傀儡師
傀儡師宿はと聞けば丹波哉
其箱のうちのぞかせよ傀儡師
辨慶に吠つく犬や傀儡師
睦月から泣いて見せけり傀儡師
傀儡師梅の花道歩み來る
一休の賣りに出でけり掛想文
鶯の音もなし梅の懸想文
懸想文詩か萬葉か催馬樂か
鶯がのぞく鳥追の笠の中
鳥追や夜更けて歸る屋しき町
鳥追のあとから笑ふ雀かな
鳥追や夕日に下る九段阪
屠蘇くむや下戸大盃をとりあげて
屠蘇に醉ふて龜も躍るや岩の上
屠蘇に醉ふ龜岩ふんで躍りけり
屠蘇袋花色絹の匂ひ哉
汲むや屠蘇猩々舞の亂れ足
屠蘇かけて見ばや枯木の梅の枝
屠蘇の醉風頻りに吹く頬のあたり
古妻の屠蘇の銚子をさゝげける
養老の屠蘇にもならぬめでたさよ
掛物の松は屠蘇の海に映ずべく
元日の雨を記すや屠蘇の醉
拜領の盃屠蘇を飲み初めぬ
屠蘇強ふや鴨汁盡きて蠣の汁
病牀に蜜柑剥くなり屠蘇の醉
福祿が行事に立つや屠蘇の醉
若餅や草津の里の姥が軒
若餅や薺の七日過ぎて後
風吹て下戸の負けたる雜煮哉
傾城も猫もそろふて雜煮哉
すき腹のはるとしいへば雜煮餅
うたはゞや雜煮の腹をうちながら
謳はゞや雜煮の腹を敲きつゝ
三椀の雜煮喰ひぬ小傾城
七椀の雜煮くひけり梅の花
膳の上に繪の嶋のせて雜煮哉
旅人の雜煮喰ふたる鞠子哉
草の戸や雜煮の夜明酒の暮
雜煮餅くひなやみたる女かな
お雜煮をすゝめ參らす局哉
塗椀の家に久しき雜煮哉
兀椀の家に久しき雜煮哉
病む人の雜煮喰ひけり直り口
此山の黍の雜煮や日本一
徳川の昔男や雜煮くひ
めでたさも一茶位や雜煮餅
雜煮くふて第一號をいはひけり
參内の時間に近き雜煮哉
下戸狸雜煮の腹を叩いて曰く
下戸狸雜煮の腹を叩きけり
長病の今年も參る雜煮哉
百八人堂に聚まる雜煮かな
解しかぬる碧巖集や雜煮腹
雜煮腹本ヲ讀ンデモ猶ヘラズ
太箸を持ちあましたる子供哉
一つ子の太箸握る太鼓哉
太箸の太しき程ぞめでたけれ
太箸や草の庵も旅心
覺束な太箸握る花嫁御
痩腕の太箸にだも恥づるかな
大福の窓に見えけり東山
大福や枯木に似たる梅の花
大福や松の柱に竹の杓
風吹て大服たまふ日なる哉
大服や家に傳はる霰釜
田つくりや庵の肴も海のもの
世の中に馴れぬごまめの形かな
田つくりを掛けて置きけり鼠罠
かち栗もごまめも君を祝ひけり
君と共に發句話さん事始
裏棚に浪人住んでうたひ初
此奧に又家のありうたひぞめ
盆栽に松あり梅あり謠初
磯の家や誰が公達の謠ひ初
諷初須磨と明石を窓の前
草の戸や雜煮の腹の謠初
謠初老いにけらしな人の聲
あつらえの扇出來たり謠初
扇取るわらべ可愛し謠初
謠初謠ひをさめて餘興かな
謠初近くきこゆる鼓かな
謠初七日をえらぶ嘉例かな
謠初羽衣すでに半なり
謠初寶生太夫參りけり
梅いけて謠はじめの儀式かな
草の家の隣に遠く謠初
膳立の茶の間かしまし謠初
舞そめや金泥ひかる京扇
寵愛の狆抱く後家やはつ芝居
歌舞伎座の前通りけり初芝居
さそはれし妻を遣りけり二の替
初芝居團十郎の烏帽子かな
初芝居見て來て曠著いまだ脱がず
初曾我や團十菊五左團小團
サソハレテ妻ヲヤリケリ二ノ替
春木座へさそはれ行やはつ芝居
子を負て子守鞠つく片手業
目の黒い人に生れて手鞠哉
目の黒ひ人と生れて手鞠かな
手鞠つき羽子遣る程になりにけり
歌かるた戀ならなくに胴氣哉
歌かるた女ばかりの夜は更けぬ
蓬莱の一間明るし歌かるた
歌かるた知らぬ女と竝びけり
遣羽子の下にかすむやふしの山
遣羽子に鶯にげる流し哉
遣羽子をつきつきよける車哉
人ごみの中に羽子つくをとめ哉
遣羽子や小尼見返る町はつれ
遣羽子や根岸の奧の明地面
遣羽子に京の男のやさしさよ
遣羽子のちらちら雪となりにけり
遣羽子や京の六條數珠屋町
遣羽子や官女老いたる緋の袴
遣羽子や下宿の窓の品定め
遣羽子や十七八のうしろつき
遣羽子や十六七のうしろつき
遣羽子や皆君が代の女ぶり
遣羽子に去年の娘見えぬかな
遣羽子の笑ひ聞ゆる小道かな
遣羽子の吹かれて風に斜なり
いもうとの羽子板すこし劣りたる
羽子板や十五かしらに皆女
遣羽子の終に負けたる娘かな
遣羽子や誰が塗られて笑ひ聲
遣羽子や我墨つける君が顔
たらし髪羽子遣るあこに菓子やらん
遣羽子に負けてくやしき夕餉哉
遣羽子の風に上手を盡しけり
遣羽子の尻叩きけり泣きにけり
遣羽子や五人の中の思ひ人
遣羽子や邪魔して過る白袴隊
遣羽子や鼻の白粉頬の墨
遣羽子や往來の繁き拔小路
遣羽子や夕飯くふて歌かるた
遣羽子に負けし美人の怒哉
雙六のどこへころげて樂まん
雙六や盧生の夢のふりあがり
寶引やあとにものうき包み紙
寶引や花蝋燭のぽっぽっぽ
福引の坐敷を照すラムプ哉
福引の何やら知れぬ包み哉
福引のわれ大なる物を得たり
福引のわれ貧に十能を得たり
福引に耻をかきたる女哉
福引の笑ひどよめく隣哉
福引のあとで素人の落後哉
福引に公孫勝の手づま哉
福引の曉鐘と題す包哉
姑のくはぬ餅ありよめが君
猫もかはず一人ぐらしよ嫁が君
鐵漿壺をはね返しけり嫁が君
蓬莱の山を崩すや嫁が君
行燈の油なめけり嫁が君
かた餅やそろそろかぢる嫁が君
肴には數の子よけん嫁が君
餅殿を戀に夜毎の嫁か君
さゝやくは誰そ小殿原嫁か君
嫁か君の通ひ路多し破障子
灯を消して待たずしもあらず嫁が君
灯を消して待つ夜更たり嫁が君
鐵漿壺をふみなかへしそ嫁か君
金屏に群れつゝ嫁が君走る
枕邊に明けかゝる夜や嫁か君
嫁が君の通ひ路狹し升落し
一羽來て屋根にもなくや初烏
朝日影羽紫に初烏
風吹て悲しさうなり初烏
初鴉上野の闇をはなれけり
初烏お城の森にさわぐなり
ほのほのや朝日よび出す初烏
初鴉きぬきぬの恨みなかりけり
初烏熊野の御寺靜かなり
初鴉不二か筑波かそれかあらぬ
古妻のいきたなしとや初鴉
山里や枯木の枝の初烏
よき衣の枕邊に在り初鴉
銀座出る新聞賣や初鴉
初とりや先年禮のいひはじめ
初鷄もしるや義農の米の恩
初鷄やねぐらの闇をいでゝ行
初鷄の枕の上にうたひける
初鷄や百萬石の聲つくり
初鷄に眼をあく花の莟哉
初鷄の二聲ばかり鳴きにけり
初鷄の鳴くかと待てば犬吠ゆる
ゆづり葉や齒朶や都は山くさし
賤が家に置くも笑ふや福壽草
どこ向けて見てもやさしや福壽草
何もかもめでたけれども福壽草
日あたりや小窓に開く福壽艸
ふゝと笑ふ夫婦二人や福壽草
柴の戸や黄金花さく福壽艸
正月のはでな花なり福壽草
水仙の冬にならんで福壽草
南山をかざすや窓の福壽草
俗な名を色を形を福壽草
福壽草影三寸の日向哉
福壽草貧乏艸もあらまほし
盆栽や梅つぼみ福壽草黄なり
莟太く開かぬを愛す福壽草
取合ヒや梅に鄙しき福壽草
里昂製のテーブル掛や福壽草
ガラス越に日のあたりけり福壽草
句を好む書生の室や福壽草
煎餅賣る根岸の家や福壽草
名をかへてことぶき草や歌に詠む
猫の居る椽の日南や福壽草
病室の煖爐の側や福壽草
福壽草の蕾をいぢる机かな
窓掛の房さがりけり福壽草
水入の水をやりけり福壽草
善き鉢の殊にいやしや福壽草
ストーヴにほとりして置く福壽草
盆栽の梅早く福壽草遲し
裏白のある夜伊勢海老に語って曰く
裏白のひんとはねたる姿哉
橙や裏白がくれなつかしき
名こそかはれ江戸の裏白京の齒朶
風吹て齒朶山鳥の尾に似たり
齒朶の羽蓬莱鶴の如く也
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