芥川龍之介の手帳のメモ、それもちょうど『鬼ごっこ』に関するものと思われるメモのすぐ前にこんなことが書いてある。
吉田精一はスルーしているが、これは『三つの窓』の「2 三人」に関するものであろう。
これが一つ目の死、戦死だ。
作中ではこれも戦士と呼ばれているが、これが「水死」であろう。そうなると三つ目の死を芥川は「狂死」として書いたのだということになる。
私はこの三っ目の死が、
木村重成にちなんだ強烈なブラックジョークだとみなしている。薫陶化育にしくじって燻製もできそこなったのだ。
人を教え導くことの困難さは教師になり切れなかった芥川の最もよく知るところであろう。だからこそ三人目の死は「狂死」でなければならなかったのだ。
芥川の手帳にはまだ書かれていない作品のアイデアが詰まっており、ネタ切れで死んだという俗説だけは確実に覆してくれるものになっている。同時に昭和二年六月十日の作とされているこの作品が、案外早く着想されていたのではないかという話でした。
夏日のあなただよ。