マイナンバー制度の問題点③
個人情報漏洩、監視社会と、さまざまなことが不安視されているマイナンバー制度の中で、最も差し迫った現実的な、所謂「喫緊の課題」というのがマイナ保険証の取り扱いでしょうか。
これは医療機関の負担という問題だけではなく、仮に医療機関が閉鎖された場合、地域医療の問題として患者側への影響の方が大きくなるやもしれません。
実際このオンライン資格確認システム導入に関しては、国からの補助金を前提にして、さらに見積もりを水増ししてくる業者が多かったことから、ここで言われている「恐喝とたかり」という表現はまんざら嘘ではないと思います。
専用回線の契約をし、専用端末を設定し、自力でオンライン資格確認システム導入をしたやり手の開業医も存在しますが、国は飽くまで業者を入れるよう誘導しています。
理由は簡単です。個人で手続きするのはなかなか厄介だからです。細かい文字ですが、「資格確認端末(パソコン)には推奨OS(Windows10 IoT Enterprise 2019 LTSC 64bit版、又は Windows10 Enterprise 2019 LTSC 64bit版)を設けています。」と書かれているのが見えると思います。このパソコンはいわゆるさまざまなソフトを組み込んだファットPCではなく、専用用途に用いるもので結構なお値段がします。ネットでは買えますが普通の家電量販店にはまず置いていないと思います。
……というより、普通の人が買うパソコンではないのです。普通は業者さんが買って納品、セッティングするものです。UPS(無停電電源装置)などと同様に業者さんが持ってきてくれるものです。
そして、セットアップの医療機関向けマニュアルがエンジニア仕様で書かれています。
そんなに難しいこと書いていないとはいえ、確かに業者に丸投げしたくなるマニュアルなのです。
そして、そろそろ気が付きますよね。要するにその医療機関にアドミニが勤務していない限り、オンライン資格確認システムの運用のためには、ITシステム(機器の保守や電子証明書のバージョン管理やセキュリティ指導)を包括的に外部から補助してくれる業者との契約が必要となり、通信費以外の月次管理費用が発生するでしょう。
そして、これで言われているように資格確認が確実になる……というわけではありません。
例えばこれまでは会社を退職する際、他の貸与物と一緒に健康保険証も会社に返却するのが通例だったと思います。しかし会社が健康保険組合に資格喪失届を提出するのは資格を喪失した日の翌日から5日以内とされていて、実際には一ヶ月等の遅延があっても何も言われません。
ここに大きな陥穽が生じることになります。
資格喪失届の提出が遅れても、これまでは健康保険証を会社に返却済みであったために、物理的に資格喪失後受診が牽制されていたわけですが、これがマイナ保険証では牽制が無くなります。
オンライン資格確認システムの情報が更新されるのは、最短で資格喪失届の情報が基幹業務システムに登録される翌々営業日以降です。一日分のデータを締めて副本登録する手続きが二回繰り返される筈(医療保険者等中間サーバと社会保険診療報酬支払基金のサーバはリアルタイムで更新されていないと見受けられる。締め時刻を決め、日次更新であろう。)なので、三日かかると見ています。かりに郵送で一か月後に資格喪失届が郵送されたら、ざっと退職後三十五日間くらいは格喪失後受診が牽制されないことになります。
これではとても資格確認が確実とは言えませんね。
しかしこうした問題点は公報もされなければ報道もされません。おそらく議論さえされていないのだと思います。
繰り返しますがマイナンバー制度の根本的な欠陥は制度全体を見回し、現場に降りて問題を把握する姿勢と人材の不足、そもそもの情報不足にあるのではないでしょうか。
何も調べないで思い付きで陰謀論を吐く人たちには辟易とします。その一方で大政翼賛会のような妙な空気があることも事実です。まず調べましょうよ。
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