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芥川龍之介 「僕はいやになるほど文がまづい」

僕は

いやになるほど

文がまづい

いくらほんとうをかいている気でも

みなほすとうそとしか思へないやうな語がならべてあるんでいやになる

[大正三年十一月三十日 恒藤恭宛書簡]








 いや、あんたは相当に文がうまいよ。

 もうすぐ坪内逍遥が褒めてくれるから頑張れ。

惜しいことをしたものです。紅葉山人以後、文章にあれほど苦心した人は有るまいと思ふ。全集が出たらよく讀んで見たいと思つてゐる。

 死んでから褒められたか。

 わしもそうなるのか。

世の中には

いやな奴がうじやうじやゐる

そいつが皆自己を主張してゐるんだからたまらない

一体自己の表現と云ふ事には自己の価値は問題にならないものかしら

ゴーホも「己は何を持つてゐるか世間にみせてやる」とは云つたが、

「どんなに醜いものを持つてゐるかみせてやる」とは云はなかつた。

[大正三年十一月三十日 恒藤恭宛書簡]


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