松風や赤ちょうちんでおでんかな 芥川龍之介の俳句をどう読むか95
原始仏教思想論に註がついて未詳とある。
これか。
とつ国に「四月の莫迦」と云ふならひありてふことを君は知らずや
かぎろひの春の四月のついたちにわが書きし文まことと思ひそ
谷川に佐佐木も落ちず我も亦佐佐木を負ひてかへりしことなし
[大正十二年四月十四日 南部修太郎宛]
松風や紅提灯も秋どなり
[大正十二年八月九日 下島勲宛]
またやらかしていますね。
これ大正七年の句です。
松風や紅提灯も秋どなり
[大正七年九月四日 小島政二郎宛]
松風や紅提灯も秋隣(この句谷崎潤一郎が鵠沼の幽楼を詠ずる句なり勿体をつける為註する事然り)
[大正八年八月十五日 秦豊吉宛]
今回この句を送った意味は
大正十二年の六月二十五日に、
藤の花軒ばの苔の老いにけり
の句を小穴隆一に送っている流れということでしょうか。それにしても
こう自慢するのも尤もで、確かに芥川の博物の知識はすごい。
リンク先を眺めてもらえばわかる通り、紅提灯の花期は四月半ばで秋隣りまで咲いていることはない。関東大震災の年藤の花や山吹が季節外れに咲いていて何かおかしいという予感は確かにあったようだ。
それにしても紅提灯はマダガスカル原産とのこと。よくもまあ、そんな花のことまで知っているなと感心するよりない。
鏡花の紅提灯も白秋の紅提灯もなんのことはない赤ちょうちんである。花としての紅提灯を書いたのは、芥川が初めてじゃ…
いや、もしかして芥川の紅提灯も赤ちょうちん?
『門』は花をセーブした小説。
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