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芥川龍之介の『河童』をどう読むか⑲ 何故身の毛がよだつのか?

 夏目漱石の小説を読んでいて気が付いたことに「どういう了見か」などという形で書いてあるところで、「どういう了見か」と考えてみると、これまで解らなかったことが見えてきて、筋がつながるということがある。文章読本として知られている本は全て読んできて、小説に関する様々な作法の本も読んできたが、小説とは何かを書かないと決めてそれを隠しながら書くものだ、とはどこにも書かれていなかったと思う。勿論ミステリー小説ではそんなことはむしろ当たり前すぎて気が付かないが、例えば『三四郎』では徹底的に色が隠されていることに気が付いてみれば、ざっと108個くらいは謎が見つかる。

 そして改めて『三四郎』について語るものの殆どが野々宮の捜しものに気がついてもいないし、美禰子の下駄の鼻緒が左右で色違いであることにさえ気が付いていないという状況に呆れてしまう。

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