嫌いな彼女たちのこと

これまでの人生の中で、どうしても嫌いな人が二人いる。許した、と思っても、また少ししたら記憶の中でその人の態度を反芻してしまって、また腹が立つ。

どっちも女性。一人は大学で出会った"同い年の後輩"で、もう一人は会社で出会った"ひとつ年上の部下"。

そう、年齢と立場がごちゃまぜになったときに、私はその人とうまく付き合えなかったのだ。これは私の問題なのかもしれない。
年上のくせに年下のくせに、先輩のくせに後輩のくせに、上司のくせに部下のくせに。そういうのが絡んで来たら、なんでかな、とたんに色んな我慢がしにくくなってたんだと思う。上に立つのが苦手なのもある。私の幼さ。

もちろん、そういう同い年や年上の後輩や部下は他にもいて、うまくやれる人とはうまくやってきた(はず)。逆の、"年下の先輩"だって新しい職場にはいたけど、仲良くやった。
なのに、どうしてこの二人とはこんなにうまくいかなかったかと考えると、二人には共通点がある。どっちも気が荒いこと。

そして、そうなるってことは、多分私だって気が荒いのだ。普段は隠してるけど。どことなく似てるんだ。私たちは。

彼女たちの連絡先は、すぐに消したし、ラインもブロックした(荒い)。

だけど、知り合いのフェイスブックに、誰かの話題に、ときどき彼女たちは出てきて、その度に私は彼女たちの記憶を消去しようとがんばる。その反面、どんなに嫌な女性だったかを事細かに思い出そうとがんばる。

嫌い、大嫌い。その気持ちをずっとずっと握りしめたあとで、こわごわその手を開いてみると、私は本当は、その二人に、認めてもらいたかったんだって気がした。
ずっとあとになった、今さら、気が付いたけど。

「ねぇ、私もっとあなたに認めてほしかったよ。
そりゃ頼りなかったと思うけど、もっとお互いの立場も大変だねって分かり合えたらよかった。私も自分のプライドを折れなかったんだ。
別の場所で会ってたら、もう少しうまくやれたかな。
ねぇ、本当はどんなことを毎日考えて、どんなことを寝る前に祈って、休日は何をしているのが好きなの?」

本当に言いたかったことに思い当たったとき、嫌い、がするっとほどけた気がした。ほんとは嫌い、じゃなかったかも。認めてくれないから意地はっただけで。

もし偶然彼女たちに会ったら?

あなたのことなんて今までこれっぽっちも思い出さなかったって顔をして、私は笑って「久しぶり」って言う。

「認めてほしかった」なんて彼女たちには言わない。自分で知ってれば充分。

彼女たちだって。賢くてプライドが高いから、「ほんと、久しぶり」ってきっと笑って言うと思う。それで充分。

#エッセイ

もしも「いいな」と思われたら、ぜひサポートお願いします♩ZINE作成の資金にさせていただきます。