94歳のきょうだい喧嘩

祖父とその家族は、わりかし長寿の家系だ。

祖父の姉は、94歳。見た目はぜんぜん90代に見えず、シャキッとおしゃれして、あちこちに顔を出している。

「これね、いいでしょう」
品のいいスカーフにつけた、きらっとしたブローチを指差す。その指には何かの石の指輪。くつ下だってこだわって、繊細なレースのもの。
私の毛玉のついたくつ下がはずかしい。

「私はね、敬老の日まで忙しいのよー」
誰かがお祝いでもしてくれるのかな、と思って聞いていると、呼ばれた老人ホームで踊りを披露するらしい。
まさかの、もてなす側だった。

長生きの秘訣を見つけたいと観察してみると、とにかくしゃべる、しゃべる、しゃべる。
思ったことを忖度なしに口にする。

多少自分勝手にあることがストレスをためずにすみ、長生きにつながるのかなと考える。

口が達者な姉と、その弟の祖父。
90代、80代になってもいまだにきょうだい喧嘩をしていて、少しおかしくなってしまった。

80代後半の祖父が、なにかを聞いた時に姉の答え方が気に食わなかったらしく。

「なんだその上からの言い方は!」
と怒り出す。

それに対して94歳姉は、すかさず反撃。
「上からってね、私はあなたより、六つも七つも歳上よ?」

うーむ!
90代になってからの、七つの年の差かぁ。それってどんな意味を持つんだろう。
その歳でも、上とか下とかあるんだって、ちょっとおかしくなってしまう。
私から見たら2人とも充分上なんだけど。

カリカリし合うのもほどほどにね、と遠巻きに考える。私が間に入るなんてとんでもないからね。返り討ちされちゃう。

だけどそういう言い合いが、案外二人の張り合いになっていたりするのかも。

長寿の秘訣は、きょうだい喧嘩?

#エッセイ

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