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ただ生きていこうと宣言したくなるような、旅の記録【歳を重ねた日】

またひとつ、歳を重ねた。

初めて出会った人たちに囲まれ、私はお祝いされていた。27回繰り返したこの日の過ごし方としては、初めてのこと。


自分の節目は、自分でつくる。

その言葉の意味を実感したくて、ホステルへの滞在を決めていた。ずっと泊まってみたかった、DENIM HOSTEL float。1年間の振り返りに勤しむつもりが多くの人との出会いを果たし、図らずとも、いろいろな感情が押しよせた3日間の滞在だった。


おいしいごはんと酒を囲み、
いろいろな話をして、
いろいろな話を聞いた。

毎月行くのを楽しみにしている本屋さんで、初めておすすめを聞いた。漆が日常に溶け込む姿を見て、ぐっと身近に感じた。思考の記録を、ノートに残す術を目の当たりにした。仲間同士の輪に入れてもらい、旅や恋、仕事の話をした。「SNSでお見かけしたことがあって」と声をかけられた。移住の少し先の先輩と、話ができた。詩の楽しさと、奥深さを知った。


初めて知るそれぞれの生き方がものすごく遠くに感じて、
勝手に悔しい気持ちになったり、
人と比べて落ち込んだり、
私は今まで何をしていたのだろうと思ったり、
いやいや私は私なんだと思い直したり。

そばにはいつも、だいすきな瀬戸内海の波音がおだやかに響きつづけていた。


いつもの旅なら2泊3日なんてあっという間に終わる。
ただ今回は、すごく長かった。

長いというのは、私が全部の感情をここにあるものとして気づこうとしていたから。仮に落ち込んだとしても、紛れもない私の感情である事実を、私が一番認めてあげたかった。

大丈夫。私は、ここにいる。
そう思えるようになったのが、この1年での私の変化を物語っている。

でも正直、心が忙しなくて、1年間を振り返るための余白は滞在最終日にやっとの思いで手繰り寄せるくらいだった。


自分のnoteが、私を救ってくれた気がした。書けないときが多かったけれど、私にとって大事なことは、たぶんnoteにも残せていた。丸々1年間をフリーランスの働き方で過ごした私は、本当によく生きたと思う。そう思えたときにはもう、人と比べるとかはたいしたことではなかったと思い直していた。


人と出会うと、心が揺れ動く。
私の場合、自分が思っているよりも大きく揺れる。
心が自分の場所ではないどこかへ、持っていかれそうになる。
その度にいつも、必死に引き戻そうとする自分がいる。

同時に、人と出会うことでしか見えない世界があるとも思う。
知りえない価値観が、まだまだ山のようにある。

自分と自分以外の狭間で私はきっと、この1年間も生きるのだと思った。



「行ってらっしゃい」

ホステルを後にするとき、私の節目を祝ってくださったスタッフの方の言葉に思わず振り返る。

今回の滞在で、どんな1年間にしたいかまでを考えることはできなかった。
けれど送り出された瞬間、「生きよう」とだけは思えた。

毎秒をただ、生きていく。
「生きる」という言葉をわざわざ口にしたくなって、今こうして言葉を書きつらねている。


ただいま、と言えるくらいには、私は私を生きようと誓った節目の旅。通いたい場所が、またひとつ増えた。




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