CX-3 小排気量ディーゼルのキャラ変は難しい
モノのヒストリーと、手元に有る必然性を求める古いタイプの人間には、車を買い替えるというのは一大事だったりします。2022年も暮れ押し迫った中、ひょんなことから目の前に現れがマツダ車に乗って見ることになりました。車種はCX-3、
1.8リットルのディーゼルで、6速のマニュアル車、SUVなのにFFのパッケージ。地元のディラーに下取りされたホヤホヤで待っていてくれました。
小排気量ディーゼルという選択
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと同じレシプロ(往復ピストン)エンジンです。でも、空気に混ぜて火花を散らせば簡単に爆発するガソリンと違い、空気を先に圧縮して高温にした上で、そこに燃料(発火点が225℃ぐらいあれば雑食なそう)を噴射することで自己発火し、その膨張力を利用して駆動します。いっつも空気は押し込んでおき(スロットルは要らない!)、しっかり圧縮して必要なだけ燃料を高圧噴射し、燃えるように燃やす(制御できない!)。容積あたりの出力は小さいが熱効率は高く、大きな背圧(いつも空気とりこんでるから)を生かしターボチャージャーで効率よく過給できる。
こういう仕組みなので、どんどん容積を大きくして、ターボで空気ガツンと入れて、効率良く燃料をちょっと吹くと、トータルとして効率良くデカいものを動かせる。海運物流や非電化区間の電車はこれで支えられている。
これが昔のディーゼル。それなのに、内燃機関を極めると宣言するマツダは、ガソリンエンジンとの技術的大統一を図ろうとして、スカイアクティブディーゼルを開発しています。ガソリンエンジンはディーゼルのように圧縮点火を目指し、逆にディーゼルエンジンは低圧縮化してクリーンな燃焼を目指す。
私のCX-3のディーゼルエンジンは、そのディーゼル側、デミオに搭載される1.5リットルに次いで小さい容量です。エンジンをかけると、「カラカラ」という乾いた燃焼音が響きます。ガソリンエンジンでのノッキングの様な急速な爆発がずっと起こっているのだから仕方なし。コストは掛かっても、効率も良くパワーもある、アイドリングの時の音ぐらい文句言うな、すぐ慣れるよ、、と思うのですが。
キャラ変の間の深い溝
結論から言うと、難しいエンジンなんです。
マニュアル車は、そこそこのスピードレンジまでだと、好きな様にギヤを選ぶことが出来ます。ガソリン車であったら、コーナーの手前でシフトダウンして、あらかじめ回転数を上げておいて、出口では軽くアクセルを踏み足して上げると、、みたいなそういう感じ。
アイドリング付近からきっちりトルクが出るので、1000回転切るぐらいまでギヤは好きな様に選べます。道の先を読んで負荷が必要になりそうなことがなければ、ギヤをどんどん上げると、めっちゃ燃費は良くなります。オルガンペダルにきっちり足をくっつけて、どちらのギヤの方が燃料を消費しているか感じながら走ると、それはもうぐんぐんと。スタッドレスタイヤ履いているのに、、、。
加速力が欲しい時は、2500回転ぐらいから5000回転まで綺麗に回ります。アクセルを強く踏み込まなくても、ぐんぐん回転が上がっていき、ターボチャージャーの過給で空気がしっかり送り込まれて、追い越しも登り坂も楽々楽しむことが出来ます。ただし、アクセル踏み足しても馬力が出るわけではないのですが(絶対的な馬力は全然大したことありません)。
問題は、その2つのキャラの「間」にあります。
ガソリンエンジン的な発想だと、1000回転で巡航していて追い抜きをしよう、ギヤを2つ落として、3000回転ぐらいからスロットルをガツンと入れると、弾かれるように加速して、安全に追い越しを終える、、、みたいな。ところが、私の
車だとギヤを落とすと回転は上がりますが、そこから暫くは「待ち」が必要だったりします。ちょっと待ってね、今タービン回して空気貰ってきて準備するから、みたいな感じ?ひょっとすると、このタイミングで燃料を吹くと盛大にススになってしまうから、マツダの愛で燃料を絞っているのかも。めっちゃ乗りにくい。。。この感じはオートマチックだとあまり関係ないかもしれませんが、単純にレスポンスが悪いと感じちゃうのかも。2.2リットルだと、ターボチャージャーも違うのでまた様子が違うのかも。
違和感の言語化と意図
燃費も良くていい感じなんだけど、なんなんだろうこの違和感、と思っていて何か改善する簡単な方法はないかなぁ、と思っていたら、自動車評論家の池田さんが、
完璧に言葉にしてくださっていました。改めてすごいなぁと思います。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00164/041400009/
以前にMX-30(EV)の試乗をさせてもらった時にも思ったのですが、マツダのHMIに対する真摯なアプローチは脱帽です。でも、このエンジンに関していうと、この排気量のディーゼルで、そのガソリンとのコストさを正当化するために、燃費性能とトルクを生かした加速力の両方が欲しかった。かつ、エミッションとDPFの問題もあり双方をシームレスに繋げていない。
ある意味、吹きにくい楽器と同じなのかも知れません。そういう作りなのだから、使い手があわせてあげることが求められる。だんだん萌えてきました、、。
ちなみに、奥さんに乗ってもらったら(うちは家族全員マニュアル乗れる免許)、役場のバン(多分プロボックス)と同じ様なもんだとおっしゃってました。2000回転ぐらいまででガコガコとギヤを変えて、トルクでゴリゴリ走らせてました。なるほど、高回転キャラを封印しちゃえばいいのか。いざという時のために上の3000回転分は取っておく。そういう手もありますね。
何にせよ、機械とその背景にある歴史と哲学に向き合うのは楽しいものですね。しばらく、意図と限界を感じながら距離稼いでみよう、と思いました。でも、
ちょっと2.2リットルのマニュアルも乗ってみたいな。
追伸: 2.2リットルディーゼルのアテンザワゴン(MT)を購入しました!全然違う、遥かに乗りやすい、でも燃費は1.8リットルのほうがめちゃくちゃいい(3km/l位は違う感じ)。キャラ変した後の加速の伸びはあまり変わらない気がするのですが、間が無くてシームレスに加速できます。