見出し画像

「恋人ができたんだ」

3月の終わり、スマホに残った意味深な写真を見て頭に流れたのはこの曲だった。

その写真には、ライトアップされた桜が写っている。綺麗さも追究してない。ただ目の前にあるから撮っただけ、と言わんばかりの拙い1枚。前後のストーリーももうあまり覚えていない。
その1年後に撮ったのが見出し画像。1年前と同じ場所、同じ日、一眼レフと共に桜を写真に収めた。あえて1年前の写真を意識したのか、我ながらわざとらしい美しさを感じた。

さて、さらにその1年後、今年の3月末。桜はまだ咲いていない。今ではもう見慣れた国道を走る車の中、私は助手席に座ってある曲を流していた。

「何かあったの」

横から問われる。私は特に、という一言に留めた。
本当はないわけではない。3月29日は、私が始めて記念日というものを意識した日だったから。でも、たったそれだけのこと。
初めて一緒に遊園地に行ったのは。初めて旅行に行ったのは。初めて先のことを意識したのは。全て、隣の彼と。

忌み嫌う過去であれど、その過去がなければ私の上(←?)で寝ている彼は、今の幸せな日々は存在しない。 頭の片隅のなくてもいいものだけど、その小さな記憶は確かに私の短い生涯の糧になっている。

そんな汚い過去の話はさておき、就活やバイトに苦しんでいたらもう4月も終わりがけになっていた。4月。春休みが終わり、日も長くなり、学校生活にもなんとなく慣れてきた中旬は時間が経つのが遅く感じた。しかし下旬になり、片足には現実、もう片足には自分に残る楽しみを履いて日々を過ごした結果、光の速さで進んで今に至る。もはや毎日泣いている。就活の怖さは覚悟していたが、他にものしかかる面倒事の多さは想像以上だった。

まあなんだかんだ、この将来への不安を抱えてはなんとか解消してここまで来たので、苦しいのはここ1ヶ月だけと言い聞かせて今日も戦場を生きている。
就活っていうシステムの苦しさ。教授も辞めればいいのに、って言ってたけど難しいよね。
相変わらずこの世界は生きづらくて、それでいて見捨てきれない美しさがある。

久々に1曲ワンフレーズ。

「愛し合ってしまった 繋がってしまった それは消せないけど
奪ってしまった 奪われていった心 返してもう眠ろう」

「恋人ができたんだ」/♪My Hair is Bad

忘れてしまおうと、その事実は消せない。
彼が大切だと、支えてあげたいと思えるのも、私の色んな過去があってこそ。
昔の記憶は、あるようで形だけの何か。もう私は今を、そして未来を生きている。

コハク

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