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甘い卵焼きと恋の終わり

昨年ハマったドラマに『リコカツ』があります。

バリキャリ編集者の咲(北川景子)は自分の仕事に誇りを持ってて、ずっと続けたいと思ってる。
一方カタブツ自衛官の紘一(瑛太)は
『男は女を守るもの、女は男を支えるもの』という確固たる信念がある。

二人とも相手の価値観を受け入れられずすれ違うんだけど、基本的にはコメディ調で要所要所では演技にぐっと来ちゃうドラマ。

彼とふたりでどハマりして、毎週金曜は二人でごはんを食べながらリコカツを観るのが楽しみでした。


印象に残ったシーンに『卵焼き』があります。

ある日紘一の父(超亭主関白)は妻から離婚を言い渡されてしまうが、まともに取り合わずいつもの調子で「お茶」とか言ってるんですよ。


母が出ていって数日後、紘一は父に言います。

「うちの卵焼きは甘いけど、母さんが甘い卵焼きが苦手だと知っていましたか?母さんは父さんに合わせて自分は食べない甘い卵焼きを作り続けていた」

夫婦なのにいつもどちらか一方が我慢するのはおかしい。父さんは母さんのために自分を曲げて我慢したことはありますか?

自分の育った家庭を『理想』としてた紘一の価値観が変容したことがわかるシーンでした。

我慢ばかりしてた母は幸せじゃなかったのかも。
だから出ていったのかも…

自分が信じてた幸せの形に疑念を抱いたわけです。



前置き長くなりましたが、ここから本題で…
この一連の卵焼きのくだりをみた彼氏がね

「っっかーーーーっ!!いい嫁!!!」

ってビールぐいっと飲んで叫んだんですよ。



えっ、

そういう話だった?


そういえば逃げ恥の新春スペシャルで
妊娠したみくりちゃんが平匡さんに

「フォローしますって何?私も初めてのことで不安だらけなのに、私が1から10まで調べて指示出ししなきゃいけないの?私は一緒に悩んで乗り越えたいよ」

みたいなこと(うろ覚え)を言ったシーンがあった。


ここでも彼は

「こッざかしいーーーーーwwww」

ってケラケラ笑っていた。

もうこれは気のせいなんかじゃない。見ないふりしてただけで、思い当たる節はたくさんあった。

自分の中の大事なあったかい感情が
スーッと一気に冷えていくのがわかった。
喉になにかつっかえたような感覚が取れない。

3年間見ないふりしてきた彼の根っこのところ、
そして私の人生にそろそろ正面から向き合わないといけない。


わたしは甘い卵焼きは食べれない

でも私はきっと、相手に合わせて甘く作ってしまう

それでも「ありがとう」さえちゃんとくれるなら
きっと笑顔で甘く作る



リコカツを最終回まで一緒に見届けて
翌週わたしは誕生日を迎えた。

ドラマはハッピーエンドだったけど、
わたしは歳を重ねたその日に、彼に別れようと言った。

向こうに結婚願望がまだないということも、
ありがとうをくれない人だとも分かったからだった。


リコカツ1話の冒頭は、
5年付き合った相手に結婚する気はないと言われ、
別れることを選んだ咲の叫びから始まる。

「これだけ一緒にいたら当たり前に結婚するものだと思ってた。いまから好きな人探して付き合って結婚して子供って…何年かかると思ってんだ⸺
私いま、33なんですけどー!
貴重な5年間…返せ⸺!!」


共感しすぎて今でもこのシーンは胸が痛む。

一方で、彼との時間はわたしにとって必要だった、と冷静にみつめて『終わったこと』として気持ちよく消化できてる自分に驚き、喜んでもいる。


私は彼とリコカツを観ていたときの自分より
今のわたしの方がすき。

「わたしはしょっぱい卵焼きが食べたい」と
遠慮せず言える人になりたい。

いや、今はきっと言える

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