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現代の生物学者が知らなかった千二百年前の雌鳥の浮気

1. はじめに、現代の生物学では一夫一婦制の鳥は浮気をしないと信じられていました


先日(2007年)、テレビで放送大学を見ていましたら、生物学の授業で大変面白いことを言っていました。生物学の最近十年間の一番の進歩は、雌鳥の七割が浮気をすることがわかったことだというのです。一夫一婦制の一つがいの鳥の夫婦がいます。その夫婦が育てた子供の鳥の遺伝子を、沢山のつがいで広範囲に調べたところ、夫の鳥以外の遺伝子を持つものが七割もあった。永らく生物学者は一生一夫一婦制を続けている鳥の夫婦に、まさかそんなことがあるとは想像だにせず、大変な驚きであったといいます。何故、妻の鳥がそんなに浮気をするのか、今大変研究が盛んで、放送大学の女の先生は、今まで報告されているいくつかの説を解説されておられました。

2. でも、千二百年前の日本霊異記には雌鳥の浮気の話がちゃんと書かれている


私はこのテレビを見ながら、「おかしいなあ、今まで雌鳥が浮気をするのが全く知られていなかったなんて。そんなこともう千二百年も前の日本霊異記(中巻第二話)に書かれているじゃないか。」と思ったのでした。日本霊異記の話は、確かこんな話でした。

和泉国泉郡の大領が、家の軒先に一つがいの烏(カラス)が巣を作り、子育てをしているのに気付きました。そして、大領は微笑みながら、毎日それとなくながめていました。巣で妻の烏が子烏達を守っている、その巣に、夫の烏はけなげに餌を運び、妻の烏が食事に飛び立つ時は、代わりに自分が巣にいて子の烏達を守っていました。しかし、この妻の烏は、夫の留守中近くに若い雄の烏が来ると、盛んに浮気をしていることに、この大領は気がつきました。そして暫くすると、妻の烏はとうとうその若い雄とどっかへ行っていなくなってしまったのです。しかしそれを知らない夫の烏は、巣にとどまって子の烏達を守り、妻の鳥が餌を運んでくるのをいつまでもいつまでも待ち続けました。そしてとうとう父子ともに餓死してしまいました。大領はこれを見て大変嘆き、人生の無常を感じて大領の職を捨て、出家して仏門に入ったといいます。

3. 古典を読もう


このように、1200年前の日本霊異記には、ちゃんと一夫一婦制の烏の雌が浮気をしていることが明確に書かれています。なのに、現代の生物学者は今まで本当に世界中の誰一人としてこの話を知らなかったのかなあと私は疑問に思ったのでした。私たちは、自分の専門範囲の専門書だけを読んでいると視野が狭くなってしまうという例じゃあないかと思いました。

4. おわりに


したがって、理系の出身でも、是非、古典の名著、日本霊異記や今昔物語は読んでおきたいですね。理想は、文理両道!!!


*なお、冒頭の写真は次のURLのフリー画像を引用させて頂きました。
https://www.photo-ac.com/main/detail/26916904


平成19年(2007年)10月3日 随筆
令和5年(2023年)9月14日 加筆

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