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マネジメントにクリエイティビティが必要な理由

マネジメントとは対象となる何かを経営することであり、成長のためにあの手この手を画策してやり繰りすることです。

対象は、チーム、会社、国などの組織や、プロジェクトなどのある単位の仕事など多岐に渡ります。基本的には何らかの「ゴール」があって、それに到達することが求められるなら、そこにはマネジメントが求められると言って良いです。規模は関係なく、1人のプロジェクトでも、10人のチームでも、100人の部門でも、1,000人の会社でも、10,000人の自治体でもマネジメントなくして立ち行きません。

ゴールがなければ、成長も改善もないので、マネジメントにはゴールを示す力が求められます。その際、勘違いしてはいけないことは、ゴールを設定する力と、ゴール内容そのものの善し悪しは別モノである、ということです。

ゴールを設定することで、賛成・反対などのさまざまな意見が生まれ、支持されなければいずれ淘汰されていくと思いますが、一番重要なのは、ゴールを設定することがマネジメントの役割(のひとつ)だということです。批判を恐れてゴールを設定しないことは、成長や改善を放棄することであり、停滞は全体の緩やかな死を意味します。

ちなみに、成長とは何も規模の拡大や経済的利益のことだけを意味している訳ではありません。どのような成長を目指すのかもマネジメントの腕の見せどころです。但し、現状維持をするためにも成長や改善に向けた努力は不可欠です。

その上で、そのゴール設定に対して、そこに到達するための施策をやり繰りしていくことがマネジメントのふたつめの役割です。ゴールが設定されていることで、それに近づいているのか、離れていっているのかを可視化できるようになるので、PDCAを回しながら、試行錯誤を繰り返しながら、ゴールに向けて策を立て、船をゴールに向けて進めていきます。

この2つの能力をマネジメントは兼ね備えておくことがベストです。ただ、ひとりでこの2つの能力を発揮できないのであれば、複数人のチームでやっても問題ありません。但し、その際、重要なことは、マネジメント自身が何ができるのかを自覚し、必要なアセットをマネジメントチームに設定する決断をすることです。「自分が全部できる」と誤認したり、「誰かがやってくれればよい」と他責にしているようではマネジメントチームは成立しません。自己の能力を把握し、必要な責任や権限を明確な意志のもとで、他者に委譲しましょう。

さて、ここまでが一般的なマネジメントの話なのですが、そのマネジメントにおいて、クリエイティビティという要素が重要になってくるのではないか、というのが今回の話です。前段が長くてすみません。

ここからはコンパクトに行きます。

クリエイティビティと書きましたが、この言葉は誤解を生みやすいので、敢えて言い換えると、「伝えるべき相手に正しく伝えること」です。

長い前段で書いたように、マネジメントの本質は「ゴール設定」と「それを実現させること」の2つです。それは変わらないのですが、多くの場合、マネジメント行為を阻害する要因となるのは、その2つが伝えるべき相手に正しく伝わらず、結果として、違う手段を用いてしまい、間違ったゴールに向かってしまうことです。

伝えるべき相手に正しいことを伝える。

これの何が難しいのでしょうか?

「ちゃんと話せば分かって貰える」そう思う人もいると思います。伝えるべき相手が数名なら、それでうまく行くかもしれません。ただ、相手が増えるほど、困難さは増しますし、いちばん誤解しやすいのは、「伝えるべき相手」を見誤ることだと思います。設定したゴールに辿り着くためには、思いのほか多くのステークホルダーがいるものです。大抵はもっと少ない相手で済ませようという思い込みがあります。別の言い方をすれば、手抜きです。

そこを是正して、正しく伝えるべき相手を見直すことで次に問題になってくるのは、多くの相手にどうやって伝えるのか?という手段です。

全員とFace to Faceで話をするには限界があります。また、Face to Faceで話したからといって必ずしも正しく伝わるとも限りません。さまざまな手段を駆使して、相手に正しく伝達させるための特別な工夫。それがクリエイティビティです。「きれいなもの」や「かっこいいもの」ではありません。それは見た目上の装飾の話であって本質ではなく、伝えるべき相手に正しく伝えるために必要な手段を見極めて、選別して、必要な行動を取ることがクリエイティブの本質と言えます。

特に日本の場合、クリエイティブというスキルが、広告やマーケティング的な領域に限定されてしまう傾向がありますが、本来的には、マネジメント全般にクリエイティビティは非常に有用であり、逆に言えばクリエイティビティが弱いために、折角のゴール設定や施策が正しく伝えられず、絵に描いた餅で終わる、ということがそこかしこで起きているのではないでしょうか。

もしそういう現場が身近にあるのであれば、ぜひ、クリエイティビティを充足させることを考えてみてください。もし、自分がマネジメントであり、自身のクリエイティビティに不安があるのであれば、それを補うためのチームビルディングを検討することをお薦めします。

クリエイティビティに求められるのは、必ずしも表層的なデザインスキルではなく、伝えるべき相手に正しく伝えるために試行錯誤を繰り返せる行動力ではないかと思っています。

・伝えるべき相手に正しく伝える意識。
・「話せば分かる」というのは慢心。
・「人間は誤解する生き物」という前提を持つ。
・正しく伝わっているかどうかを常に気にする。改善する。



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