私がchange.orgをやめた理由5選

皆さんはChange.orgってご存じでしょうか?
Change.orgとは一言でいうと、オンライン署名を集められるサービスです。
社会や世間に対して声を上げたい人と、それに賛同して応援したい人のためのプラットフォームになっています。

以前、私はこの「change.orgをやめました」という記事を書いてnoteに出したところ、今日見たら12スキ集まっていてびっくりしました。このサービス、日本ではマイナーかと思うのですが、それだけ共感してくださる人がいるとは驚きです。

その時に書いた記事の中で、この「change.orgの欠点はまた改めて書きます」と宣言していたので、今年中にそのとき書きたかったことをまとめてしまいたいと思います。


まず結論から

結論としては、ほとんどの人にとってこのサービスは、やるメリットがないということになります。では、その理由を述べていきましょう。注意点として、私はこのサービスを2023年の8月にやめているので、その後にあった変更点については知らないので、そこらへんについてはご了承ください。


1.署名の重みがなさすぎる

ふつう、署名というと、街頭で通行人に声をかけ→立ち止まってもらい→活動の趣旨を伝え→賛同してもらい→名前を書いてもらいます。物理的な活動範囲や時間の制約、声掛けのハードルなどを考えると非常に大変な作業です。でもだからこそ集めた署名にはそれだけの重みがあり、だからこそ物事を変える力があるのものだと思われているのです。

一方、change.orgの場合はメールのリンクをワンクリックするだけで署名完了です。賛同を示すにはメールアドレスを登録する必要があるのですが、一度メールアドレスを登録すると、毎週結構な頻度で「この活動にご賛同ください!」的なメールが届きます。そしてそのメール内のリンクをタップするだけで驚くほど簡単に賛同したことになってしまいます。正直、内容なんか見ないで脳死でリンクを押した人の一票も、同じ一票としてカウントされます。

私はこれで何回か不用意に賛同してしまったことがあります。問題なのはここからで、一度賛同ボタンを押してしまうとそれが取り消せないのです。私は必ず活動の内容を確認してから賛同するかスルーするかを決めているので、誤って賛同ボタンを押してしまったものについては取り消させてもらわないと気が済まないのです。

こんな感じで、あまりに簡単に署名が完了できてしまい、それでいてその署名を取り消せないUI(ユーザーインターフェース)はふつうに有害だと思います。要は、change.orgは「ただ何も考えず賛同さえしてくれればいい」と、そう考えているようにしか思えないからです。

こんなインチキな方法で集まった署名に価値があるのかということです。もちろん、紙に書いてもらう署名の重みなんてのもそもそもあるのかということにはなりますが、少なくとも紙の署名には泥臭い活動の跡が残るのに比べると、こんなネット上の熱意も感じ取れない署名活動にどんな気持ちで賛同したかもわからないような人の署名はそれ以下の重みしかないことは明らかでしょう。

2.署名の効力が弱すぎる

皆さんはchange.orgの署名活動をニュースやSNSで見たことありますでしょうか?私は会社の関係でこの存在を知るまでchange.orgなんて見たことも聞いたこともありませんでしたし、change.orgに登録したあとにもこれがニュースやSNSで話題になったところを見たことがありません。

要は、このchange.orgの署名への注目度なんてそんなもんだということです。change.orgの署名数って、結構数字だけ見るとあるんですよ。しかも、一応実名で登録しないといけないので、誰が署名したとかリアルタイムででてくるようになってます。それだけ署名が集まったのならそれなりに効力を発揮してくれてもいいと思うのですが、ニュースなどでは全くと言っていいほど取り上げられないんですよね。NHKとかだと、街中で行われているえん罪抗議の署名活動とかは時々取り上げられてますね。それに対して、change.orgの署名活動の実力はこんなもんです。これもやはり理由1で述べさせてもらった署名の重みがなさすぎることに起因すると考えています。

もちろん、署名の数を盾に世の中を変えようというのは到底無理として、署名活動を通して、問題を多くの人に認知してもらうことが目的であればまあそれでいいんですけどね。

3.ん?と思うような問題提起がある

change.orgでは誰でも問題提起をして署名を集めることができます。なので、毎日いろんなジャンルの署名活動が出てきて、その中には「ん?」と思うようなものも混ざっています。これが注意しないと、むやみに「賛同するボタン」を押してしまうので気を付けなければいけません。

具体的にどんなものがあるか。私が特に覚えているのは、中学生か高校生の提起で、「日本の英語の先生のレベルが低いので都に対策を講じてほしい」といった旨のものです。いや、まあわからんでもないけど。詳しく内容を見てみると、具体的に求める内容がなんか浅いんですよね。学生なんでしょうがないんですが、問題の本質をとらえられていない。これじゃあ中高生の戯言として、いくら署名が集まろうが行政は動かないでしょう、と思いました。それで、結局この活動には賛同ボタンを押さず、スルーしました。

こんな感じで、思い付きレベルの署名活動や、老害のワガママみたいな内容で署名を求めてくるケースが少なくない数あるので、だんだんいやになってきます。

4.議論の場が提供されていない

「これは鋭い指摘だな」という活動がある一方で、幼稚な内容の署名活動も多数存在するのがchange.orgというプラットフォームです。誰もが問題提起をして多くの人と共有できるというのはすばらしい構想ですが、それが思考停止の「賛同」によって支持されてしまうというのはあまり気分が良くないし、そうあるべきではないと思います。

先に述べた「一度賛同ボタンを押すと取り消せない」というシステムは害悪なのはもちろん、「この署名活動、どうなの?」というものに対して物申せないというのもよくないと感じていました。例えば、神宮球場移設に関して、活動を推進している人の考えがあまりに偏っているのを感じ、少し質問や反対意見を述べたいということがありました。が、どこを探しても受け手の選択肢は「賛同する」か「無視する」かしかありません。

これでは独りよがりな問題提起者の活動が一方的に推進されていくだけなことは容易に想像できます。建設的な議論というのはある程度反論を踏まえながらより良い方向を目指す中で行われるものです。無批判な賛同者の表だけを集めた署名によって活動者の少し偏った見方・考え方がより強化されてしまうだけです。

署名に参加する以上、活動自体が何を問題ととらえていて、どういった方向に進もうとしているのかが分かったうえで賛同したいものです。そのために受け手から活動者へ質問する機会や別視点の考え方を提供する場があったほうが絶対にいいと思います。ただ、残念なことにchange.orgはそのような仕組みを作る気はなさそうです。なぜなら、そもそもchange.orgに対してそういうことを言う仕組みがないのですから。

だからこうやってnoteという別のプラットフォームでだらだらと私見を述べているんですけどね。

5.運営母体の資金力が脆弱すぎる

この5番目の理由が、私がchange.orgに嫌気がさした一番の理由です。どういうことかというと、change.orgは何かと金を出させようとしてきます。おそらく一番の資金源は、署名した人が自主的に支払う寄付金でしょう。

change.orgでは、署名後に「この活動をもっと応援しませんか」と言って一口500円からお金を寄付できるようになっています。これはインターネット決済で簡単に寄付ができます。ただ、よく考えてください。署名ってお金集めるものでしたっけ?change.orgは寄付金が活動者の支援になるといって署名した人にお金を出させ、そのうちの結構な割合をマージンとして取ってるんじゃないかと見ています。

私がそう考える理由は2つです。1つは、活動者が必要としているのはお金じゃないということ。活動者が署名を集めるのは、それによる影響力を欲しているからであって、それに付随するお金はおまけ的な支援でしかありません。そしてもう1つは、頻繁に「change.orgを支援してください」という旨のメールが送られてくることです。メールの送り主は「change.orgの〇〇です」という感じで、おそらく運営の人の個人名を名乗り、ビジョンを語って、そのためにはあなたの支援が必要です!という内容で手段も選ばぬ方法でなんとかお金を集めようと必死なのが伝わってきます。

そもそも収益モデルが確立できていない組織に、しかも本当に社会的意義があるかどうかもよくわからない活動に、誰がお金を出すのかという話です。もちろん寄付は任意なので、メールはスルーしてればいいのですが、あまりに頻繁にそういったメールが飛んでくるのでさすがに煩わしくてやめました。change.orgをやめた一番の理由はこれです。

change.orgをやる理由

ここまで散々change.orgの良くないところをあげてきましたが、これではあまりにいやな奴の文章になってしまうので、最後にchange.orgに参加するメリットを絞り出して締めようと思います。

私がchange.orgに数か月間参加して気づいた、このサービスのメリットは、世の中のいろんなジャンルの社会課題に敏感になれることです。問題のスケールには大きいものから小さいものまであるし、問題提起の質はピンキリで、中には署名する価値のないものや理想論、左右に偏りすぎのものもあります。ただそれでも、世の中にはこんなことを問題として考えている人がいるんだ、とか、ニュースにはなっていないけど確かにこれって課題があるよな、というものにたまに出会うことができます。

署名集めをする人と署名をする人をつなぐインターフェースがすべてネットで完結してしまうため、その活動の熱量や行動力、集まった署名のもつ影響力には疑問が残りますが、社会の課題にアンテナを張り続けるという面では一役買っていると思います。

まとめにかえて

change.orgのビジョン自体はなかなか面白いものです。運営基盤がしっかりすること、存在価値を高めて社会全体に認知され、信頼を得ることでその可能性は広がると思います。

ただ、そのためには個人情報保護の問題や、組織自体が自立すること、プラットフォームの質の維持など、乗り越えなければいけない課題がまだまだ多くあると考えています。

私はこれらの課題がなかなか解決されそうな方向にないことを感じ、change.orgを退会しました。今change.orgに登録している人や、登録すべきか迷っている方は、この辺の問題を意識している人がいるよということを念頭において継続もしくは新規登録を検討していただければと思います。


とてつもなくニッチな記事にもかかわらず、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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