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ダブ・アイコン、リー・ペリーの魅力と偉大さ

良いニュースと悪いニュース、まずどっちを聞きたいですか?

というか、今回は悪いニュースです。リー・ペリーが亡くなりましたね。これを機会に一ダブファンとして、彼の魅力を改めて振り返ってみたいと思います。

1.まずはやっぱり、ボブ・マーリー&ウェイラーズを発掘したこと

アフリカン・ハーブスマンという曲をちょっと前に紹介したけれど、この曲がリー・ペリープロデュースです。

2.ダブを発明した人
ダブの生みの親みたいな言い方をされるけど、残念ながらキング・タビーとか他にも功労者はいて、ダブは彼一人の発明というわけではなく。
でも、キング・タビーは89年に殺されてしまうし、生き残った彼はダブのアイコンとなった。

スカくらいまでジャマイカの音楽はほぼほぼアメリカ黒人音楽の影響下にあったが、レゲエとダブは違った。
ダブは、ジャマイカ独自の、エクスペリメンタルな音楽ジャンルだった。ボブ・マーリーのレゲエが極めて強烈な社会的メッセージを歌い上げたのに対し、ダブには歌がない。メッセージがない。

ここがリー・ペリーが愛されたところだと思う。
人種差別とか南北問題とか政府の腐敗とか、そういう白人にとって耳の痛いことを言わなかった。単に関心がなかったのかもしれないけど。ボブ・マーリーとは対極に、ある意味音楽的な実験に専念した。

ダブという分野自体もそうでしょう。そういう所は、イギリスの白人のミュージシャンやリスナーにとっても受け入れやすかったと思う。リー・ペリーはパーティで野暮な話はやめようぜ、って感じだった。

独特の比喩や言い回しで、そういうことを仄めかすことはあったかもしれないが、基本的には意味不明な、逝っちゃってる感じの気違いじみた話をした。そこからどういう意味を汲み取るかは、人によって全然違う。ある種の禅問答みたいなことをやっていたように思う。

だから、彼には一種の呪術師とか伝承や古代神話の語り部みたいな、そういう雰囲気があった。この辺りがフェスなんかで彼が来ると盛り上がった理由かも。

ギスギスした家庭で、犬や猫のペットを飼ったら、ペットが吠えたり鳴いたり尻尾振ったりして、家族がそこに色々意味を見出して皆が和む、みたいな感じに近い笑 空気読んでバカやってくれる人。こういう人って本当はめちゃくちゃコミュ二ケーション能力が高いですよね。

とはいえ、彼の独自の世界観・宇宙観は、ジョージ・クリントンやサン・ラに連なっていた。グラフィティアートでいえば、ラメルジー。文学でいえばエイモス・チュツオーラか。
いずれにせよ、アフロ・サイケデリックの世界だ。
案外ジェフ・ミルズなんかも近い所にいると思う。

他方で、いまやロックやテクノで、環境音のサンプリングなんて珍しくもなんともない。犬の鳴き声だとか銃声だとか滝の音とかもう普通。
だから、リー・ペリー&アップセッターズの70年代の曲で、そういうサウンドアプローチ的なものは、今聴いても新鮮味はあまりないような気がする。

それよりもリー・ペリーの偉大さは、やっぱりその存在感だと思う。ダブのアイコンとして世界中を飛び回って我々を喜ばせてくれた。一瞬一時とはいえ、彼の語る壮大な宇宙で思いっきり遊泳することができた。

彼の魅力はそういうところじゃないでしょうか。R.I.P.

ファンだった笑福亭仁鶴さんが亡くなったのに続いた訃報で、今まで見上げていた人が次々と去っていって寂しいですね。自分の年齢って肉体の老化もありますが、環境としてこういう風に実感するんだなと改めて思いました。

頂けるなら音楽ストリーミングサービスの費用に充てたいと思います。