【 #パウパー】デッキ解体新書 青単テラー編


現環境を定義するアーキタイプのひとつ

はじめに

本ドキュメントは、2024年9月7日~2024年10月7日までのデータに基づいて作成されたものです。
様々なデッキが群雄割拠する現環境ではありますが、上位は4つのデッキによって占められています。
そのデッキとは、青単テラー繁殖鱗コンボブラッドバーン、そしてファリミアです。
このドキュメントには、全くの素人でも青単テラーを使用して勝てるようになるための情報を詰め込みました。
さっそく、デッキの概要から見ていきましょう。


「青単テラー」とは?

青単テラーとは、その名の通り青単色で組まれたデッキです。

デッキの名前にもなっているテラーとは《トレイリアの恐怖》の英名”Tolarian Terror(とれいりあん・てらー)”の愛称です。

基本的にこのデッキはこのクリーチャーで攻撃し、ライフを削り切る戦略を取ります。
その戦略を支えるために、軽量ドローカードや自分のライブラリーを切削するカード、いくつかの打ち消し呪文、そして追加のアタッカーカードを採用し、戦略の再現性を高めています。
(よく採用されるカードについての具体的な解説は「採用カード」の項に譲ります)

基本戦略

基本戦略は大きく3つあります。

  • 《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》/《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》による早期からの飛行クロック、ならびにパーミッション戦略

  • コスト軽減された《トレイリアの恐怖/Tolarian Terror》と《謎めいた海蛇/Cryptic Serpent》の連続展開

  • 上記のコンビネーション

です。

ドロースペルによって《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》の変身を補佐したり、切削カードの連打によって2種類の海蛇・カードのコストを軽減したりしながら、打ち消し呪文を構えられればそのまま勝利することができます。

海外では”Mono U Tempo(青単テンポ)”とも呼ばれているこのデッキ。本来は7マナもかかるクリーチャーですが、最速で2ターン目に《トレイリアの恐怖/Tolarian Terror》を場に出せるテンポの良さがその名の由来でしょう。

勝ち筋

前述の通り、このデッキの基本戦略を遂行できれば勝利することができます。
すなわち、

  • 《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》/《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》による早期からの飛行クロック、ならびにパーミッション戦略

  • コスト軽減から展開される《トレイリアの恐怖/Tolarian Terror》と《謎めいた海蛇/Cryptic Serpent》の連続展開

  • 上記のコンビネーション

です。

このデッキにとっての《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》はキープ基準にもなるほど重要なカードです。初手に打ち消し呪文+《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》があるだけで勝利を狙えます。

また、《トレイリアの恐怖/Tolarian Terror》と《謎めいた海蛇/Cryptic Serpent》の連続展開による盤面は、全体除去呪文に乏しいPauperでは返すことは至難です。同じカードを採用している青黒、ならびに青赤のカラーリングよりも切削呪文が多いため展開が早く、早期決着を狙えるのが青単テラーの醍醐味です。

負け筋

基本的に一対一交換以上を狙うことができないこと、除去カードが(ほぼ)ないこと、自身がテンポデッキであることから、軽いアクションを連打してくるようなデッキ【例:エルフ、ゴブリン】を苦手とします。
また、サイドボード後の墓地対策カード【例:《虚無の呪文爆弾/Nihil Spellbomb》、《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》】によってテンポを阻害される=各種海蛇・クリーチャーが手札に溜まり続けてしまうことも負け要因になります。
タップインと色事故のない単色デッキだからこそテンポデッキとして活躍しているこのデッキですが、裏を返せば器用に振る舞うことは難しく、特に除去呪文の貧弱さに単色のデメリットが現れていると言えます。

採用カード

2024年9月7日~2024年10月7日までのデータにおいて、青単テラーの入賞数は10ありました。
(各入賞デッキの詳細なリストはこちらに格納しておきました)
以下、上記をもとに絞り込んだ本デッキに主に採用されるカードの紹介です。

メインデッキ

メインデッキに採用されるカードを紹介します。
まずは、デッキに確定で採用されるカードを見ていきましょう。

土地

  • 《島/Island》

このデッキに採用される土地は《島/Island》のみ採用枚数は15〜16枚です。
土地の採用枚数の少ないPauperにおいても少ない枚数に思えますが、《ロリアンの発見/Lórien Revealed》や軽量ドロースペルによってこの枚数での運用が実現できています。

クリーチャー

  • 《トレイリアの恐怖/Tolarian Terror》、《謎めいた海蛇/Cryptic Serpent》、《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》/《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》

青単テラーにおいて、上記3枚は必須のアタッカーです。サンプルとして集計した10デッキ全てにおいて、必ず4枚ずつ採用されています。青単テラーを青単テラーたらしめている”クリーチャー”がこの3枚と言えるでしょう。

呪文

  • 《思考掃き/Thought Scour》、《留意/Mental Note》

青単テラーを青単テラーたらしめている”呪文”がこの2種類。こちらもすべてのデッキに4枚ずつ採用されています。後述する《思案》や《渦まく知識/Brainstorm》とも相性抜群のカードです。


  • 《渦まく知識/Brainstorm》、《ロリアンの発見/Lórien Revealed》

これまでのカードが「青単テラーたらしめている」なら、このカードは青いデッキを青いデッキたらしめていると言っても過言ではないカードです。サンプルの10デッキ全てにおいて、どちらも4枚ずつ採用されています。
序盤から終盤まで腐ることのない強力なカードなうえ、組み合わせても強力なコンボになります。


  • 《対抗呪文/Counterspell》

引き続き、青いデッキを青いデッキたらしめている1枚です。どのデッキでも文句なしの4枚採用
あらゆる脅威を2マナで無力化できるこのカードの強さはもはや語るまでも無いかもしれません。
《島/Island》2枚をアンタップ状態にしておくだけで相手が動きにくくなるという心理的な圧迫感も強力で、このデッキのテンポをささえる一枚でもあります。


  • 《呪文貫き/Spell Pierce》 2〜3枚

《対抗呪文/Counterspell》に続き、デッキに採用されるもう一つの打ち消しカード。こちらは万能とまではいきませんが、クリーチャーではない呪文に追加のマナの支払いを要求できます。やはりテンポを稼ぐために一役買っているカードということで、枚数こそ違いますが各デッキに必ず(3〜2枚)採用されている強力なカードです。


  • 《綿密な分析/Deep Analysis》 1〜2枚

フラッシュバックまで含めれば1枚で4枚もカードを引くことのできるソーサリーです。手札から唱えた強力さは既に書きましたが、前述の《思考掃き/Thought Scour》、《留意/Mental Note》でライブラリーから墓地に落ちた時にも効果を発揮する強力な1枚。少し重いカードなので、デッキには2〜1枚の採用です。

ここからは、採用不確定枠の紹介です。


  • 《ひどい出来/Deem Inferior》または《ブーメラン/Boomerang》 どちらかが4枚

テンポをとるための妨害手段として、青単テラーでは《ひどい出来/Deem Inferior》または《ブーメラン/Boomerang》のどちらかが4枚採用されます
採用率は6:4で《ひどい出来/Deem Inferior》の方がわずかに高くなっています。しかし、タップインする土地の多い「親和」や「グリー」、土地にエンチャントを貼り付けることの多い「続唱」「ボーグル」に対しては《ブーメラン/Boomerang》の方がテンポ効率が高いと言えるでしょう。環境デッキの中で具体的にどんなカードにどう対処したいかが、どちらを採用するかの決め手となるでしょう。


  • 《思案/Ponder》または《考慮/Consider》 (思案2〜3枚、または、考慮4枚)

1マナのドロースペルの枠を奪い合うのはこの2枚。
基本的には多くデッキを掘り下げられたり、他のカードとのシナジーを形成する《思案/Ponder》が優先されます(9:1)が、カウンターを構えながら動ける《考慮/Consider》も候補となります。
使い手の意図が現れる枠と言えるでしょう。


  • 《つぶやく神秘家/Murmuring Mystic》(不採用、または1枚)

  • 《魔力の乱れ/Force Spike》(不採用、または2枚)

  • 《巧みな回避/Artful Dodge》(不採用、または1枚)

ミヤジマ ユウヤ選手の掲載デッキ(掲載リスト数3)には100%採用されている3枚
青単テンポの理念とは反するカードもあるものの、決まれば効果的なカードが多い印象です。おそらく、大会参加時によく対戦するアーキタイプを見ての採用だと思われます。(続唱でしょうか?)

続いて、サイドボードのカードを見ていこうと思います。


サイドボード

  • 《無効/Annul》 1〜4枚

「親和」ならびに「グリー」を見たサイドボードです。


  • 《青霊破/Blue Elemental Blast》、《水流破/Hydroblast》 合計で6〜8枚

赤対策のカードである《青霊破/Blue Elemental Blast》、《水流破/Hydroblast》が2種類ともサイドボードに取られています。後述しますが、青単テラーは本環境における赤いデッキの筆頭である「ブラッドバーン」にやや不利です。メタゲーム上に赤いデッキがどれくらい存在するかによっても採用枚数は変わりますが、最低でも6枚のカードが取られていることからも赤いデッキへの苦手意識が伺えます。


  • 《払拭/Dispel》 1〜2枚

インスタント・呪文をカウンターする呪文《払拭/Dispel》もサイドボードに取られています。


  • 《死者の眠り/Sleep of the Dead》不採用〜2枚

《死者の眠り/Sleep of the Dead》は擬似的な除去カードとして使われます。


  • 《つぶやく神秘家/Murmuring Mystic》 不採用〜2枚

  • 《鋼の妨害/Steel Sabotage》 不採用〜3枚

  • 《残響する真実/Echoing Truth》 不採用〜1枚

  • 《ジェイスの幻/Jace's Phantasm》 不採用〜1枚

上記4枚はミヤジマ ユウヤ選手の掲載デッキ(掲載リスト数3)に採用されている4枚です。
大会への熱意と試行錯誤がサイドボードから伺えます。

デッキ内のコンボ・小テク

  • 《トレイリアの恐怖/Tolarian Terror》、《謎めいた海蛇/Cryptic Serpent》+《思考掃き/Thought Scour》、《留意/Mental Note》

「積極的に墓地を肥やして、海蛇・クリーチャーの早期着地を目指す」。このデッキの基本的な動きです。


  • 《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》+《渦まく知識/Brainstorm》、または《思案/Ponder》

「ライブラリーを操作、一番上のカードをインスタントやソーサリーにして《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を変身させる」。イニストラード発売以来、マジックの定番となったコンボです。
《渦まく知識/Brainstorm》はインスタントなので、自分のターンの始めにライブラリーをチェックするのにスタックしてライブラリーの上2枚を操作することができます。


  • 《渦まく知識/Brainstorm》、または《思案/Ponder》+《ロリアンの発見/Lórien Revealed》または《思考掃き/Thought Scour》、《留意/Mental Note》

ライブラリーを操作して欲しいカードを手札に入れたあと、不要なカードをデッキに戻し、切り直してしまうテクニックです。いわゆる[ブレストフェッチ]と呼ばれるテクニックの応用にあたります。
ちなみに青単テラーでは、フェッチランドである《進化する未開地/Evolving Wilds》や《灰のやせ地/Ash Barrens》の採用実績はありません。テンポで優位に立つデッキですので、シャッフル手段として採用したつもりが裏目に出るタップインや色事故を嫌ってのことでしょう。

  • 《ひどい出来/Deem Inferior》+《思考掃き/Thought Scour》

相手がライブラリーの上にカードを置くことを選択した際にのみ有効な小テクです。相手を対象に《思考掃き/Thought Scour》を使うことで、デッキに戻るはずだったカードは墓地に落ちることになります。
なお、切削する対象を選べるのは《思考掃き/Thought Scour》のみ。《留意/Mental Note》も似た効果を持つカードですが、こちらでは実現できません。


  • 《渦まく知識/Brainstorm》、または《思案/Ponder》+《思考掃き/Thought Scour》+《綿密な分析/Deep Analysis》

必要なカードは3枚と多いですが、アドバンテージを獲得するために重要なコンボです。特にマリガンを繰り返したゲームなどではリソースの回復のために積極的に狙っていきましょう。
余談ですが、《綿密な分析/Deep Analysis》は対戦相手を対象にしすることもできますので覚えておくと良いでしょう。実際にそうすることは稀ですが、ライブラリーアウトが目前の場面などでは輝く知識です。

主要メタデッキとの相性

https://mtgdecks.net/ による


  • VS グリーコンボ 勝率63%

  • VS ブラッドバーン 勝率40%

  • VS ファミリア 勝率50%

  • 総合勝率(すべてのアーキタイプでの勝率) 勝率48%

サイドボードガイド

VS グリーコンボ

  • 相手のサイドボード

    • 《紅蓮破/Pyroblast》(3〜4枚)

    • 《虚無の呪文爆弾/Nihil Spellbomb》

    • 《強迫/Duress》

  • サイドイン候補のカード

    • 《無効/Annul》:メインデッキの《サディスト的喜び/Sadistic Glee》を止めるために《無効/Annul》は有効です。グリーには《サディスト的喜び/Sadistic Glee》以外にも、《シルヴォクの生命杖》や《間に合わせの砲弾/Makeshift Munitions》、《虚無の呪文爆弾/Nihil Spellbomb》など対象には困りません。積極的に採用しましょう。

    • 《払拭/Dispel》:《払拭/Dispel》は《命取りの論争/Deadly Dispute》や《タミヨウの保管/Tamiyo's Safekeeping》や《巨森の蔦/Vines of Vastwood》のほか、相手がサイドインする《紅蓮破/Pyroblast》にも当たります。

    • 《死者の眠り/Sleep of the Dead》:《死者の眠り/Sleep of the Dead》は、無限パワー/タフネスを達成したクリーチャーに対して、あるいはサイズアップした《のたうつ蛹/Writhing Chrysalis》に有効です。

    • サイドアウトする候補として、《思案/Ponder》《綿密な分析/Deep Analysis》などのソーサリータイミングのドローソースが挙げられます。カウンターを構えるのに適さないカードから抜いてしまうのがいいでしょう。

VS ブラッドバーン

  • 相手のサイドボード

    • 《紅蓮破/Pyroblast》(3〜4枚)

    • 《虚無の呪文爆弾/Nihil Spellbomb》

  • サイドイン候補のカード

    • 《払拭/Dispel》:《払拭/Dispel》は《稲妻/Lightning Bolt》、《癇しゃく/Fiery Temper》、そして《感電破/Galvanic Blast》のほか、相手がサイドインする《紅蓮破/Pyroblast》にも当たります。

    • 《青霊破/Blue Elemental Blast》と《水流破/Hydroblast》:ブラッドバーンには土地を除くと通常11種類のカードが採用されており、そのうち7種類25枚が赤いカードです。当てどころに決して困らないため、サイドボードに採用されている分だけサイドインしても問題ありません。

    • サイドアウトする候補として、《ひどい出来/Deem Inferior》《綿密な分析/Deep Analysis》などの重めのカードが挙げられます。特に《ひどい出来/Deem Inferior》はメインボードでは対象にとれるパーマネントが非常に少なく腐り気味になりがち。積極的にサイドアウトしましょう。

VS ファミリア

  • 相手のサイドボード

    • 《スレイベンの魔除け/Thraben Charm》

    • 《対抗呪文/Counterspell》

    • 《殺し/Snuff Out》

  • サイドイン候補のカード

    • 《払拭/Dispel》:《払拭/Dispel》は《幽霊のゆらめき/Ghostly Flicker》、《儚い存在/Ephemerate》や相手のメインボードの打ち消し呪文のほか、相手がサイドインする追加の打ち消し呪文、さらに墓地対策の《スレイベンの魔除け/Thraben Charm》にも効果があります。入れない理由がないと言っても過言ではありません。

    • サイドアウトする候補として、消去法で《思案/Ponder》が挙げられます。

参考・引用元

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