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舞台製作の為にライブアイドルを一から立ち上げたときの話

はじめに

Twitterの方で、久しぶりにはにかみライバーについて触れた所、はにかみライバーが活動していた時期には出会っていなかったけれど、最近になってはにかみライバーを知り、その活動に興味を持って下さった方がいて。

少しお話しする機会があった為、2年前の活動や思いを思い出しながら話していたら、やはり面白い活動だったな、と思い、少し長いですがこちらにお話しさせていただきます。


はにかみライバーのスタート秘話

はにかみライバーというのは
舞台公演「アユカの世界」の為に作った架空のアイドルグループでした。メンバー5人はアイドル活動経験はなく、女優として活動をしていた子達でした。

2017年の12月頃にメンバー募集オーディションを開き、翌2018年1月からレッスンを開始する予定でした。

しかしレッスン初日から早速波乱が待っており、オーディションをした方(唯一のアイドル経験者)が学業の為にやはりアイドル活動は出来ない、といい、急遽別のメンバーを探すことになりました。
配役も変えることになった為、大慌てでしたが、オーディションで一度落としてしまった方に連絡しました。
結果として「アイドル未経験の5人が本気の役作りをして挑む」という、面白い筋書きになりましたし、「はにかみライバーはこの5人以外有り得ない。」と本気で思えたので巡り合わせだったんだな、と今では思っております。

こちらに当時の募集要項を見つけたので掲載致しますね。

映画撮影は頓挫してしまったのですが、代わりにMVを撮影致しました。
はにかみライバー走れ全力坂のMVのリンクはこちら
↓↓↓↓
走れ全力坂

当時のコンセプト
「たとえ弱くてもエールを」
「一人できないことも、みんなとなら乗り越えられる」
は最後まで生きていて(当然か。)
誰かが悩んだときにメンバー同士で支え合って下さっていましたし、ファン(当時はちゃんとヲタと呼んでましたよ)の方とも支え合ってくださっていたような気がします。ファースト&ラストワンマンもファンの方がいて下さったおかげで大大大成功でした。


はにかみライバーのメンバーたち

はにかみライバーのメンバーたちも振り替えらせていただきます。お名前は当時の芸名です。

*書いてる途中で、話の本筋からズレてかなり余談だったことに気づいたので、
「舞台の企画でアイドルグループを立ち上げた話」
をすすすっと読みたい方はこちらは読み飛ばして下さって構いません。


赤色 内田愛花役
内海未希さん

オーディションの時に類まれなる透明感があり、すぐに愛花役だろう、と審査をしたメンバーと話しておりました。
か細いけれど、神秘的。

もう再演することはないのでネタ明かしをしますが、
内田愛花という役は、「アユカ」という伝説のアイドルが、自身の妹が自分のせいで亡くなってしまったことを信じたくないあまりに自分が妹の愛花である、と思い込んでしまったという役でした。

伝説のアイドルというのはそれこそ、きゃりーぱみゅぱみゅさんのような、唯一無二の存在をイメージしておりました。
その人がいわゆる多重人格のように、自分を別人と思い込んでいる、というめちゃくちゃ大変な役だったのですが、見事に。本当に見事に演じ切って下さいました。

内海さん自身、とても情熱的で頑張り屋さんで素敵な方です。


水色(青) 早乙女真理役
掛川純菜さん

オーディションのときに、真理の独白シーンを関西弁でやり通した子でした。関西弁でも全く気にならないと思える程良いお芝居でした。
しかしこの時は夏希役を演じてもらおうと思っていました。真理はみんなのお姉さん、というイメージだったため、人懐っこさのある掛川さんは別の役を想定しておりました。
しかし、先程書きました事件が起こった為、急遽真理を掛川さんに演じてもらうことになります。年齢設定も変更しました。

真理という役は、舞台本編でははにかみライバーを卒業し、結婚して母になろうとしておりました。
しかし、夫が新興宗教にハマり、何とか連れ戻そうとする役で、それは「アユカ」と対立する役でした。

真理には「しんり」という意味も持たせていましたし、「マリア」も掛けていました。母になる、というのも、マリア様を意識しておりました。マリンブルーというのも掛かっています。

この役が実質物語の主人公のような役割を担っていたと思います。

掛川さんはリーダー向いてない、と言っていましたが、ダンスや歌は誰よりも上手く、芝居もとても上手でした。性格だけ、リーダーっぽくはなかったので、相当頑張ってもらっていたと思います。


緑色 藤宮碧役
瀬名波響華さん

瀬名波さんは実はオファー組でした。
彼女のお芝居を過去に見たことがあり、また、ダンスを楽しく踊っている姿も見ていたので一緒に一年間戦いませんか、と声をかけました。
しかし、ちゃんとオーディション受けに行きます。と言い来てくれました。実際に審査メンバーからの評価も高かったのです。

碧という役はみんなの妹、しかし根はクールで腹黒。という役柄だったのですが、瀬名波さんは誰よりも精神的に大人でした笑。
メンバーだけでなくスタッフ全体を気遣い、支えて下さっていました。
彼女がいなかったらもしかしたら最後まで駆け抜けられなかったんじゃないかな、というくらい助けてもらいました。

一番役の設定を意識し続けてくれてたのも瀬名波さんでした。みんなの妹!って言うキャラじゃなかっただろうに、本当にありがとうという気持ちです。


黄色 宮本夏希役
杉浦花香さん

稽古初日の真理役降板で急遽の連絡にも答えてくれた杉浦さん。当時年齢が19歳だったので年齢的には碧、しかし見た目容姿的には真理や夏希。という風にこれだ!という配役にならなかった為にお声かけを諦めていたのですが、
「舞台本番までまだ時間があるんだ、台本を書き直せばいい」と、当初の設定と大きく変えて杉浦さんに夏希を演じていただくことになりました。

「元気印な夏希」は初期台本では化物語の戦場ヶ原ひたぎさんのような皮肉屋な口調だったのです。
杉浦さんのオーディション時の元気な姿は印象的でした。

本編ではこの元気な夏希が誰よりも「理想のアイドル」と「今の自分たち」のギャップに悩み、アイドルを辞めようとする言わば「等身大の女の子」を演じていただきました。
誰よりも繊細に自分と見つめ合ってくれていた杉浦さんは誰よりも等身大であり続けてくれていました。


白色 梅園眞白役
齋藤あまねさん

彼女もオファー組でした。一度一緒に舞台で共演した経験があり、その時に魅力的な女優さんだなと思っておりました。主演も出来るだろうし、人のサポートも出来る方だという認識でした。
しかし、ダンスがとても苦手だったそうで、レッスン開始の時に最もしんどい顔をしていたことが今でも思い出せます。確か、最初のステージに立ち、だんだん慣れていくまでヤダ、やりたくないと苦しみ続けていたような記憶があります。

後半はとても伸びやかで楽しそうで、僕の手の届かない細かいところにこだわってくれていました。


はにかみライバーはこの5人でよかったと思えた所以は、みんなとちゃんとコミュニケーションが取れ、相談や連携が出来ていたからだと思っています。
誰かが苦しんでいるときに報告がありましたし、運営チームが相談事を持ち掛けたときに前向きに検討し、行動してくれていました。チーム一丸という言葉がぴったりなメンバーたちでした。


はにかみライバー裏のコンセプト

ここが他のアイドルグループとは明確に違い、そしてそれが成功に繋がっていったのではないかと思います。


「女優たちである」ということを全面に出したこと

「物語から飛び出したアイドル」というキャッチコピーのもと活動をしていたのですが、どういうこと?と食いつきがありました。
興味を持っていただけたら大チャンス。このグループは舞台の為に立ち上がった女優たちによるアイドルグループであり、公演が終わってしまったら解散してしまう。
しかし遊びでやっているのではなく、本気で役作りをしている。一緒に物語を作りませんか。


ライブアイドルがひしめく地下界隈の中であえて女優である、と伝えることはオリジナリティを生みました。

また、
「偽物だったから本物を目指せた」
のだと思っています。
本物のアイドルはオリジナリティを求められてしまうので王道から外れてしまったり、無理な個性を付与して自分を追い込んでしまったり、売れることに囚われてしまいますが「アイドルを演じる」ことですでにオリジナリティがあるので、王道を目指せましたし、キャラクターも分けられました。
売れることは大切ではありますが、物語を描くことという目的もあったため、その努力はしていただきましたが、シビアに「売れなきゃ解散」というものがあったわけではありませんでした。


また、解散することが最初から決まっているというのも大事で、もちろんアイドルが出世していくのを楽しみにして応援しているファンがいるので、「なんだ解散しちゃうのか、それじゃあ推せない」と言われることもありましたが、いつ終わるかわからないのは不安だろうし、脱退や解散は裏切りに思う場合もあるかと思います。
しかし終わりが決まっているならその期間清々しく応援できますし、メンバー内の空気もゴールがあるのでひたむきで前向きでした。
活動後半は「あともう数回しか見れない」という希少性も出てきました。

僕には終わりの美学があります。
おそらく演劇活動をしているからだと思いますが、演劇は必ず終わり、そしてセットを壊します。ほとんどの舞台は再演はしないので、もう二度と演じない役というものがあります。
だからこそ、その瞬間を必死に生きようとしてきているし、その瞬間を体験してもらいたい。心に残したい。それがこのアイドル活動にも表れていたんだと思います。

「終わってしまうからこそ、生き抜く」


そして本気の役作りというのも面白い要素だったかと思います。

「あのアイドルは自分たちが育てた」と言われるように、アイドルの応援は育成感覚があります。
売れてないとき自分たちが支えた、どんどんあか抜けていった。という成長を見守っているからだと思います。そこに更に「役作り」という新しい要素が付与されます。
それぞれのキャラクター設定を公表している為、ファンの方々とキャラクターの話で盛り上がれます。こういうポーズとか面白いんじゃない?というのも役に沿わせて話せるので個性が出ます。

更に、リアリティショーにフィクションを織り交ぜることで、アイドルたちの本質的な部分を護ることが出来たのです。
実際、途中でメンバーに質問したことがあります。

「役と自分は今どういう関係にあるか」と。

そうしたら「私だったら言えないことでもこの子だったらこういう風に言うだろうな、と思って言えるようになった」自分と役がいい距離感で居られたとき、役が自分を支えることがある、と気づけたことはプロジェクトとして大変有意義な発見でした。

物語の一部になってくれませんか、
という誘い文句も面白かったなと思います。

自分が劇作もしている為、半年間であった出来事を劇中に盛り込むこともできたので、面白いエピソードをファンと一緒に考えることが出来ました。
「自分たちの行動が物語になっていく」という体験は殆どないことなのでファンにとっても特殊で面白い企画になったのではないかと思います。
運営サイドも、面白いことが起きるように企てをしていこうとするので必然、色々と行動を起こしていきます。
半年間しかない、というのも大きく、結果、関ケ原唄姫合戦、愛踊祭、海での野外ライブなど、挑戦できることにはどんどん挑戦していきました。

広報として何ができるかということは常に考えていたので、色々な方にDMなどで連絡をしていました。特徴があったので説明もしやすかったです。
目的意識もあり、コンセプトもしっかりしていたので、やることが明確だったのも良かったのかもしれません。


半年の活動でできたこと

ここは運も絡んだものが結構ありましたが、女優としてそれぞれに舞台や撮影など、アイドル活動にだけ集中できなかったであろう中、半年間でぎゅっと詰め込んだいい時間になったかと思います。

・楽曲を4曲作れたこと

・衣装を2着作れたこと

・関ケ原唄姫合戦、愛踊祭等、予選ではあるが挑戦できたこと

・CITTAやQUATTROといったライブハウスに立ったこと

・FMラジオに出演させていただいたこと

・MUSICるTVにライブシーンや練習シーンを映していただいたこと

・MV制作が出来たこと

・ラストワンマンで70人以上も来場していただけたこと

・クラウドファンディングが100万円を超えるほど応援してもらえたこと

・本番舞台でもライブが出来たこと


などでしょうか。
後半は舞台稽古も入ってきた中、かなり精力的に活動できたなと思っています。活動当時に振り返りをしているブログもありますのでこちらもご参照ください。
こちらは当時の写真や歌詞、MVなどの制作秘話も話しております。

はにかみライバーブログ

そしてラストワンマンの動画も上げているのでご視聴ください。

はにかみライバーラストワンマン

こちらはクラウドファンディングのページです。

アイドル×演劇 物語からとび出したアイドルたちの1年懸けたプロジェクト

こちらは受けたインタビューです。

【はにかみライバーインタビュー】10月28日の舞台千秋楽で解散! 女優が「役」としてアイドルを演じているグループ「はにかみライバー」について色々聞いてきた!


最後に

現在、アートにエールを!の企画で作品を作ろうとしています。まだ正式に決定ではないのですが。その作品をはにかみライバーのその後を描こうと思っております。僕が何も出来なくて苦しんでいた時に見返した、はにかみライバーたちが背中を押してくれたからです。時が経っても、終わってしまっていても応援してくれた彼女たちの物語の続きを僕自身がどうしても見たくなってしまったのです。ここを読んでくださった方々、はにかみライバーの活動自体は終わってしまっておりますが、物語はまだそこかしこに残っています。ぜひそちらを見ていただいて、新たに生まれる物語を一緒に楽しんでください。


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