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知らない土地の、知らないカフェは、誰かの知ってる憩いの場で。

先日先輩と旅に出ました。

一度も行ったことのなかった、岐阜の飛騨高山、そして下呂。

その中で一番色濃く思い出として残ったのは
飛騨の山々や下呂の温泉ではなく、

下呂の町にあった小さなカフェでした。

お店でご飯は食べようと思っていたため、旅館を素泊まりにして朝食を食べれる場所を探して町を歩き回ろうとしていたのですがいやはや。
下呂にはドトールやタリーズなどのチェーンのお茶屋はなく、大抵の観光客は旅館のモーニングバイキングなどにいくためなのか、町のカフェでもモーニングをやっている所は調べた限りだと極わずか。(まぁ朝の30分での調査なのでもっと調べたら沢山あったのかもしれませんが…)

その代わり11時からランチで開くお店が多いので、朝ごはんは適当に済ませて、ランチで美味しい物を食べればいいか、ともなったのでしょうが…何となーく町を探索しつつ、モーニングのあるお店を探しました。

そんな中で出会ったお店。

外見は色々装飾されていて、悪くいうと雑多でごった返し。

普段はこういうお店に入るのは勇気がいるのですが、モーニングをやっているお店だということ、そして食べたかった岐阜の郷土料理「鶏ちゃん焼き」が看板にあったことでこのお店に入ろうとなりました。

しかし、
モーニングだと鶏ちゃん焼きでないんじゃない?と入る直前で気づきました。

まぁでもさ、お昼はお昼でどっかにまた食べに行こうよ、それよりもお腹空いた!

とお店に入ることを決意。入店すると中もごちゃごちゃと壁に沢山の紙が貼ってあり、沢山のものが置いてあります。

この大きさの蜂蜜初めて見たよ、ってサイズのものとか、謎の調味料もちらほら。ひーひーとか書いてあるの、多分めっちゃ辛いやつ。写真はない。きゃっきゃと撮れる雰囲気じゃなかったのです。

お店のマスターは仏頂面で、モーニング2つ下さい、と言ったあと、「ホットでいいかい?」と聞いたあと、ずっと何も喋らず黙々と作っていました。

なんとなく「やっぱりこういうお店は苦手だなぁ」と思っていたのが的中した気持ちになりました。

お店のBGMはジャズなのに、テレビがついていて普通に民放のニュース番組みたいなものが流れている。やっぱり雑多だ。

モーニングが運ばれてきて、食べていたら人が入ってきました。

うっすー、とか挨拶をしてきて、二三言話した後に出ていったのでお店の方かと思ったのですが、その後にまたご近所の60代くらいのおばあ様がくる。そこで

あぁ、そうか。この町の人たちだ、と分かりました。

東京では、カフェに入っても大抵がチェーンのカフェの為か、こういう光景を目にする事がない。たまにマスターと気さくに話をする人を見るけれど「同じ町に暮らしている仲間」ではなく、「ホストとゲスト」という感じは抜けない。

でもこのカフェは、この町の人たちと共に生活し生きている。

さっきまで仏頂面だったマスターは相変わらず仏頂面ではあるけれど、会話から滲み出ている優しさが少しずつ僕らにも伝わってくる。

そうして食べ終わった頃、マスターが話しかけてくれた。

「この後どっか行くの?」と。

ぶきっちょな優しさ。

すぐに僕たちは答えた。
「合掌村にとりあえず行こうかと思います。」

おばあ様が
「バスがね、そこの角で出てるから乗りな。100円だよ、100円」と教えてくださり、

マスターが地図を取り出す。
「この街の地図、持ってるか?」

現代っ子の僕たちはグーグルマップがあるため、目的地までの地図はある。
でもその好意に甘え、地図をいただくことにしました。町の地図、少しホコリが被ってた。

フリーペーパーのような物も持ってきてくれる。
そこには美味しいおすすめのお店や、温泉ガイドがあった。このお店の名前もある。

「持ってきな」とマスター。

知らない土地の知らないカフェは、僕たちを迎えてくれた。

「お昼時、鶏ちゃん焼きを食べに戻ってきますね」

お店を出る。
おばあ様はまたバスの場所を教えてくれる。


そして約束通り、というか戻って来たくて、またお店に戻ってくる。

「鶏ちゃん焼き、食べに戻りました!」

と元気よく声をかけてお店に入ると、仏頂面のマスターがほんの少し笑ったような気がしました。

僕たちがお昼を食べている頃、また町の人たちがお店にやってきました。
奥様方はマスターと世間話をしつつ、僕らにも話しかけてくれました。

思えば、旅に出てからゆっくりした時間を過ごし、この町の人とちゃんと会話を交わしたのがこのお店が最初だったのかもしれない。

だから嬉しかったし、一番の思い出になったのかもしれない。

帰り際、マスターはおすすめのお風呂屋さんを教えてくれる。わざわざマーカーで先程もらった地図に赤丸までしてくれて。

これはここに行かねばなるまい、と僕たちは下呂最後の湯をマスターおすすめの場所にしました。

いつかまた下呂に行く機会があれば、今度はゆっくりとマスターと世間話をしながら鶏ちゃん焼きをつつきたい。

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