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『A Short Hike』小さなオープンワールド

■作品概要:穏やかで温かい出会いにあふれるアドベンチャーゲーム
■クリア時間:3時間くらい

 『広大な世界を心の赴くまま冒険しよう』みたいなゲームが、実は少し苦手です。
 広大な世界は迷いやすく、目的がないと何をすればいいのか分からなくなってしまってしまう性質なので、結局のところ当てもなく彷徨うしか出来なくなるのではないかと不安もあり、そういった文言が使われがちなオープンワールドになんとなく忌避感を感じていました。

 食わず嫌いは良くないと感じていながら、何か琴線に触れるものはないものかという時に見つけたのが『A Short Hike』です。

 曰く、ハイキングというテーマをもとに山の頂上を目指す、非常に小さいオープンワールドらしく、オープンワールド初心者にもお勧めだそうで。
 穏やかな雰囲気や値段が安いこともあり、プレイすることにしました。

 この記事は、そんな『A Short Hike』の感想を備忘録がてら綴るものとなっています。

『A Short Hike』とは

都会に住む鳥の少女「クレア」が、親戚のおばさんに連れてこられて「ホークピーク州立公園」を訪れたある夏のこと。

自然に囲まれた島の中で、クレアは携帯の電波が入る場所を求めて「ホークピーク」の山頂を目指すことに…。

そのハイキングの途中でちょっとだけ変わった動物たちと出会いながら、クレアが山頂で目にする素敵な何かを一緒に体験しよう!

簡素かつ柔らかなデザイン

 『A Short Hike』は3Dピクセルで描かれた、ややドットの趣きを感じるグラフィックです。
 設定でピクセルサイズを変えることは出来ますが、初期状態では画素の荒く懐かしい雰囲気のものとなっています。
 どちらが好みかは人によって分かれると思いますが、非常に柔らかなタッチで描かれています。

ピクセルサイズを変更すると滑らかになる(左:旧/右:新)

 又、シンプルな画面構成でできているのも特徴の一つです。
 情報が限りなく削ぎ落されているため辺りの風景を阻害しないようになっています。
 マップの表示を消す代わりに、掲示板や標識を使うことで居場所をわかるようにしたり、エリア毎に音楽を変わるようにすることで各エリアの印象が残るようになっています。

基本的に表示されないUIが多い
船に乗ると一時的に全てのUIが消え、景色と船旅を楽しめる

 こういった、不要なものを可能な限り削ぎ落し、整えられたUIではなくゲーム内の穏やかな世界を見せようとするデザインが、穏やかな世界を作り出しています。

ホークピークの頂上を目指そう

 プレイヤーであるクレアの目的は、「ホークピーク」の山頂でお母さんと電話をすることです。
 というのも、本作の舞台である「ホークピーク州立公園」は、都会の狂騒とは離れた田舎町で、電波が届いていないからです。

お母さんの電話が来るのを待っていたクレア

 しかしホークピーク山道はそこそこ険しく、山頂を目指す過程において「羽ばたき」をする回数が増える”黄金の羽”を手に入れる必要があり、それが探索やクエストする動機づけになっています。
 どうやって”黄金の羽”を手に入れるのか?何個手に入れるのか?どういった道のりで行くのか?……といった要素がゲームの動機づけになっています。

ゲームスタートからクリアまでのチャート。過程も楽しく、
頑張れば一枚も黄金の羽をとることなくクリアすることもできる。

 黄金の羽によってアクションの自由度が増加していくのも楽しい部分です。
 「羽ばたき」の回数が増えるといくらでも高く飛べるようになるので、どんな悪路も超えられるようになります。そうすると探索や動物たちのお願いも簡単に叶えられるようになり、テンポも速くなるので楽しさが持続します。

羽さえあれば何処へでも飛べる

 勿論これらをことをするかどうかも、プレイヤーの自由意思によって選択できるので、オープンワールドらしいゲーム体験を楽しむことが出来ます。

住民たちとの暮らしを生きる

 「ホークピーク州立公園」での住民である動物たちとの掛け合いも魅力的です。
 この島に住まう人々は魅力的な人々は多く、その言葉を聞いたり、お手伝いするだけでも楽しい部分があります。
 本作はカナダのインディーゲームスタジオが制作していますが、そのローカライズは秀逸で、その世界感に没頭することができます。 

展示会の作品を作っている画家、どんな作品を作ればいいのか迷っている
山の中腹まで行くと、メイおばさんと会話することが出来る。
個人的には晩御飯の話が好き
釣り竿をくれるおじさんから釣りの仕方を教えてもらう
勝ち負けのない純粋な協力ゲーム

 又、ホークピークの頂上に上り終えた時、メイおばさんにどんな事が起きたのかを話すのですが、それをみるのがとても嬉しいです。
 なんというか、親に「今日こんなことがあった」と話す子供を見ているような安堵感と、「そうそう、こんなことやったなぁ」と出来事を思い出す瞬間がなんとも素晴らしい瞬間でした。

終わりに

 とても良いゲームだったように思います。
 短く、柔らかで、夏休みのちょっとした冒険のゲームプレイは私の心を穏やかにしてくれました。
 切った張ったのゲームや重苦しい現実世界に疲れた人たちに、是非お勧めしたい作品です。

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