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『Cris Tales(クリステイルズ)』シンプルな物の掛け合わせ

※ストーリーのネタバレ有・体験版有(海外アカウントの場合のみ)

■作品概要:コロンビアのゲーム開発スタジオが送るJRPGへのラブレター

■公式サイト:https://modusgames.com/cris-tales/ (海外版)
       https://www.o-amuzio.co.jp/games/cristales/(日本版)

■クリア時間:40時間くらい

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 一時期、お金はないけどゲームがしたい衝動に駆られ、switchの体験版をダウンロードしまくっていたことがありました。
 あらかた遊び終え、それでも物足りず、海外アカウントでダウンロードできるソフト探し始めた頃に見つけたのが『Cris Tales』です。

 抽象的ながらセンスのある背景、スタイリッシュなUI、時間を操作するゲームシステム、英語力が皆無な為プレイできるか気になりながらもダウンロードせずにはいられませんでした。
 遊び終えた後、魅力に惹かれ購入しようとしたところ日本語版は存在しておらず、Google翻訳でストーリーを悲鳴上げながら解釈した身としては中々腰が上がりませんでした。

 そんなクリステイルズが去年の春に発売されましたので、セールの折に購入。プレイしたので備忘録がてら感想を残していきます。

『Cris Tales(クリステイルズ)』とは

 滅びゆく未来から人々を救うべく、時を操る少女”クリスベル”は世界を巡る旅に出る。
 過去をかいまみ、現在で行動することでダイナミックに変化する未来。そのすべてがひとつの画面で繰り広げられ、プレイヤーの選択によって世界の行く末は変わっていく。

過去から学び、現在を生き、そして未来を作り変えろ

過去は左に、未来は右に

『クリステイルズ』で主軸に据えられているのは、時間です。
過去に干渉し、現在を有利に動かすことで、凄惨な未来を変えることが今回のストーリーにおけるテンプレであり、ゲーム画面からそれを象徴しています、

画像2クリステイルズのゲーム画面、一画面に三つの時間が見える

 クリステイルズのゲーム画面は過去・現在・未来三つを一画面に収めた特殊な形式で構成されています
 基本的に街の風景はこのスタイルが貫かれており、決まって未来の画面では禄でもない未来が描かれています。街が水没していたり、溶岩に流された跡地になっていたり、寂れていたり。それを何とかして、変えるのがクリステイルズ基本構成です。
 こういった場面を常に見せられるとなんだか「どうにかしなくちゃ」みたいな感覚が直に伝わってきて感情が揺れ動かされて良かったですね。

 また、このスタイルは戦闘中にも同様です。

画像2過去に送られた敵は幼くなり、未来に送られた敵は老いた姿になる

 今作のバトルスタイルは両脇に敵がいる状態となっており、主人公”クリスベル”の力を使って過去や未来に敵を送ることが出来ます。
 この時間経過を使い、毒にした敵に時間を与え超ダメージを与えたり、硬い盾を錆びさせることもでき、このギミックはゲームにおける面白さの軸を担っています。

詰め込まれてた作り手の”スキ”

 今作は「JRPGへのラブレター」を公言しているように、随所に他作品を彷彿とさせる部分があります。

画像2戦闘画面 言われてみればP5的趣きがある

 戦闘画面は特にその傾向が高く、割れたガラスのようなUIやカットインはお洒落デザインの代名詞『ペルソナ5』を彷彿とさせます。
 バトルシステム的な面からみても、タイムラインバトルやアクションコマンドはJRPGの作品群を想像せずにはいられません。

 ストーリーの構成にもJRPG敵雰囲気を感じ取ることが出来、壮大且つ純粋な、あの頃の冒険を感じ取ることが出来るでしょう。
 個人的には、終盤の展開には『Bravely Default』を彷彿としましたし、制作チームの造詣と愛の深さを感じざるを得ませんでした。

 勿論ただJRPGの好きな部分をまとめ上げただけではありません
 制作チームのある国、コロンビアに所縁のある建造物やデザインもあることが以下の記事から分かります。

 作中にある「ナリムの教会」「虹の川」「塩の大聖堂」はコロンビアに実在しそれを美しく描き出す手腕は見事です。

画像2ステンドグラスと教会。街に存在する象徴的な存在

傲慢で純粋なストーリー

『クリステイルズ』は現代の作品としては、あり得ない程純粋です。

画像2クリスベル、最後まで全部を救おうとする

 今作はゲームシステム上いつでも未来が見えますが、それを全て変えられる訳ではありません
 何故なら彼女達の力は有限で、時間を見れても自在に操れるわけではないからです。

 一つの政治体制が傾いたとき、皆が融資を求めていた時、どうしても避けれれない災害が迫ってきたとき…
 その時、彼女達は何か一つを選択しなくてはいけません。どちらかを守りどちらかを切り捨てなくてはならないときがある。そういった言葉が敵や彼女の師から言われ続けます。

画像2全てを救うのは難しい

 でも、どうしても、皆が幸せになってほしい。
 そう思うプレイヤーの心に呼応するように、クリスベルは最善の道を探します。時に自らの身を削ってまで。

 その行動に対し、誰がかクリスベルを「傲慢」と称したのですが、この喩えが私は凄く好きで堪りません。
 彼女は迷うことはあっても、それは方法や手段のことであって目的は常に      「全ての人を救う」ことにあるからです。
 この純粋さを私はずっと求めていました。

シンプルで美しい絵画

 ここまで見てきた人は気づいているかもしれませんが、今作のゲーム画面は非常に美しいです。
 簡単な図形の集合体を合わせたゲーム画面は『切り絵』と称されることもあり、シンプルながら心惹かれる絵の数々はゲームプレイの高揚感を高めてくれます。
 少し好きな写真を張りますね。

画像3ナリムの街
画像3ナリムの街2
画像3ザスかわいい
画像3Demo版のスクショ、物語始まりの地

いくつかの問題点

 クリステイルズは私にとって非常に刺さった作品でしたが、どうみても問題としか思えない部分が散見されるためご紹介します。

・低すぎる翻訳度
 今作は海外のインディーゲームスタジオの制作した作品であるため、日本語訳を通しているのですが、その精度は低いと言わざるを得ません。
 その内実は、殆ど翻訳ソフトをかけたような状態であり、長文であれば哲学的な雰囲気を醸し出していますが、短文であるとかなり酷いです。

 一部訳が分からないところや、英語のままの部分もあり、中学レベルの英語を解しているか、雰囲気を楽しむことが出来なければ「クリステイルズ」を面白いと感じることはできないでしょう。

 英語ではありますが、ボイスは殆どフルで入っており、演技は日本語しか分からぬ私でも素晴らしい出来ではあったので、雰囲気を感じる「土台」はあるものと思っていいでしょう

・長いロード時間
 今作はロードが長いです。そして多い。
 体感5~10秒程度かかるロードがマップの切り替え、戦闘開始・終了、ムービーの開始。事あるごとに入るロードにストレスを感じる人は多いかもしれません。

画像2ロード画面、修道女姿のクリスベルがトコトコ歩く

 常に流れている音楽に耳を傾けたり、歩いているクリスベルを眺めたりと決して悪い時間ではないのですが、ロードが長い&多いのも事実なので買う際はご注意ください。

・擁護できないバグ
 このゲーム、意外とバグります。
 私はswitch版でプレイしましたが、ソフトリセットがかかるようなバグが2時間に1回ぐらい起こる為、セーブをしていないと悲しい目に合うことがあります。

画像3スクリプトが剝がれるバグ(※直撮り)
画像3二人ともカオナシになってしまった

 自分はキャラのスクリプトが剥がれるバグに良く遭遇し、その度にゲームが落ちたので、セーブをしていなかったらプレイ欲がなくなっていたかもしれません、
 今作はいつでもセーブ出来る訳でも、自動セーブがあるわけでもないので、こまめにセーブをしないと痛い目に会います。

総評

 まず、今まで貼ってきたゲームアートに惹かれたのなら買って損はありません。

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 最初から最後まで、絵から醸し出した雰囲気を失うことは無く。センスのあるBGM、特殊なゲームシステム、ストーリーが互いを補強しあっています。
 ゲームをよくやる人は、その根本的なシステムの古さに辟易することもあるかもしれません。しかし、シンプルで分かりやすいゲーム構成はゲームプレイを阻害することはありません。
 新規性を求めた結果、煩雑になり、面白さを感じられなくなったゲームを見るようになった昨今、このようなゲームをやるのも一興かもしれません。

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