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取り払われた境目『NieR:Automata』

※ネタバレあり

■作品概要:地球奪還を目指すアンドロイドによるRPG
■クリア時間:40時間位(Eエンドまで)

 私の妹はNieRのファンです。

 PS3も持っていないのに、どこから見つけたのか『NieR Replicant』にドはまりし。
 遊んだこともないのに”DRAG-ON DRAGOON 10周年記念BOX”を購入し私に布教しました。

 おかげで私もNieRシリーズに興味が沸いていたのですが、PSを持っていなかったため長らく後回しにされていました。

 そんな頃、ニンテンドーダイレクトにて『NieR:Automata The End of YoRHa Edition』が発売が告知され、これはいよいよプレイできる機会をえたの訳です。

 中々得難い経験をしたので、備忘録がてら残していこうと思います。

『NieR:Automata』とは

遠い未来。
突如侵略してきた異星人。そして、彼らが繰り出す兵器「機械生命体」。圧倒的戦力の前に、人類は地上を追われ月へと逃げ延びていた。
地球を奪還する為に人類側はアンドロイド兵士による抵抗軍を組織、さらに膠着した戦況を打破する為、新型アンドロイドである戦闘歩兵「ヨルハ」部隊を投入する。
人のいない不毛の地で繰り広げられる機械兵器とアンドロイドの熾烈な戦い。やがてそれは知られざる真実の扉を開けてしまう事となる……

『機械』だからこそできるゲームシステム

 『NieR:Automata』における登場人物は全て機械です。
 主人公の2Bや9Sも例外なくアンドロイドであり、ゲームシステムもそれに準じて作られています。

ロード画面.主人公のシステム起動をしている

 読み込みやスキル、オプションといったプレイヤーにしか確認できないシステムが『機械』という設定によって紐づけられることで、ゲーム内にも存在するものとして認識されています。
 つまり、一種のメタ要素ともいえる部分がゲーム内に違和感なく導入されていることで『ゲーム』と『NieR:Automataの世界』を繋げ、時折ある”我に帰る”瞬間を極限まで減らしているように感じます。

プラグインチップというスキルシステム。スマホのストレージ管理のようであり、HPゲージのようなシステム周りのものすら着脱できる
設定もキャラクターがしてくれる

 この『機械である』という特徴はストーリーの要所要所で用いられ「機械なのでバックアップ前の記憶無くしました」とか「攻撃用のシステム壊されて戦えません」とかの演出に一役買っています。

 これが人間だと「記憶?根性で思い出せよ!」「武器ないなら拳でいけ」となりかねないし、多くの作品ではそうなってるから面倒なんですよね。
 戦えなくさせるのに四肢欠損とかを視野に入れざるを得ないので、その辺り今作の設定はかなり業物であるといえます。

視覚に異常が出ると周囲にポリゴンのようなものが見える

没入感を維持するシームレスさ

 平野の長いトンネルを抜けると、そこは遊園地であった 

 と、いうことで『NieR:Automata』ではオープンワールドが採用されています。
 マップ間の読み込みなしでストレスのない移動が行える上、前述の機械設定の補完にも役立っている印象です。

アクセスポイント周りでしかロードが起きないからこそ機械設定が際立つ

 と言っても、ブレスオブザワイルドのような”どこでも行ける”タイプのオープンワールドではなく、マリオ64のような”拠点から他エリアに行ける”タイプのオープンワールドで、どちらかと言えばロードを挟まないJRPGという方が近い気がします。

平原が中心に他エリアの懸け橋になっており、ストーリー進行に応じて順々に開放される

 その為、オープンワールドにありがちな「行ける所が広すぎてどこ行けばいいのか分からない」という選択のパラドックス現象が起きない利点が生じています。
 これはゼノブレイド等で採用されているセミオープンワールドに並ぶ、「ストーリーとの両立」を達成した形態であるように思います。

引いた画面でのサイドビュー

 又、マップ間のシームレスさに呼応するように他要素の境界も取り払われています。
 BGMは展開に応じて流動的に変化し、カメラワーク等の演出と呼応しています。

 カメラワークはゲーム性の変化を生み出し、シームレスに変化するプレイ間は飽きさせないことに成功しています。

2Dゼルダのようなトップビュー

 それらの変化はストーリーをドラマチックにみせることにも成功しています。
 特にその傾向が強いのはエンゲルス戦でしょう。

飛び出し、振り下ろされる腕の圧力

 再序盤と中盤に二度登場する”超大型兵器エンゲルス”、その情報開示と倒すまでの一連の流れは映画のようにすら思えます。
 彩色は失われ、オペラ&クラシック的なBGMは劇伴的になり、サイドやトップと目まぐるしく変化する視点はプレイヤーの感情を亢進させます。

空中戦はよりドラマティックに遷移する

 映画や演劇にも思える映像・音楽は正に”劇”的です。

意外と効果的なイクラ弾

 ニーアシリーズにおいて特徴的な物の一つに弾があります。

 暗い球状の造形、やや遅い射出速度、射撃や打撃で打ち消せる性質。
 何よりイクラとも呼称される見た目は、他にはそうそうない特徴でしょう。

写真では止まって見える程の鈍足

 このイクラ弾、多少の外連味こそあれど、攻撃としての表象としては弱いように見えたので、リアリティラインを下げてしまうのではないのかと考えていました。
 つまりは「世界感の崩壊」を起こしかねない存在の一つになりかねないと感じていたのです。

 しかし、意外にもイクラ弾によって戦闘が面白くなっています

トレーラー発表時に出された写真、イクラ弾が波状攻撃の如く繰り出される

 遅い弾速は画面の占有率を増やし、数か増えれば増える程、圧は強く派手になっていきます。
 その結果「先に撃たれた弾に当たる」現象が発生し、隙間を縫うような移動や攻撃を求められるという面白いゲーム性が生まれています。

 点のような形から、並べて放てば波紋状・同心円状にも打ち出すことができ、敵によって特徴を持たせることにも成功しています。

見えない選択が物語を変える

 本作の物語にはマルチエンディング方式が採用されています。

 通常のストーリー進行において展開されるA~Eエンドの他に、特定の行動をとることで現れるG~Zの「隠しエンド」が存在します
 唐突に釣り人になるエンド、復讐に駆られ機械生命体を殺すエンド、アジを食べるエンド。と、その豊富さは驚異的です。

 また、その条件は伏せられていることに関しても特筆すべきことです。

操作確認をしていると起きるエンドもある

 ふと思いついた行動、なんとなく言われた頼まれごと、しようと思って結果出来なかった事。
 そういった、本来例外と処理されるであろう行動に答えが提示されている。[はい][いいえ]以外の選択にここまでのアンサーがあるのは中々珍しく思います。

 また、些細な行動によるレスポンスも豊富です。
 ビルの頂上から飛び降りる。攻撃を受けている機械生命体を助ける。クエストを受けたまま進めない。

狂信者に襲われている信者を助けるとお礼がもらえる

 そういった二者択一では測れない選択にさりげなく反応してくれることが物語に説得力や深みを与え、やや難解なストーリーを違和感なく受け入れ感動する一助になっています。

二元論では論ぜない複雑さがある

気になった点

 重箱の隅を突くような話ではありますが、探せば粗があるものです。
 記録であるため簡単に書き残しておきます。

ロックオンの仕様

 敵を視認し固定するロックオン機能ですが、なんだか微妙に使いにくいです。

 ロックオンでの追尾性や切り替え、認識がやりにくいのです。

 システム内の優先順位の問題なのかな?とは思うのですが、うっかり騎乗用のシカを誤射してしまうことが多く「ごめんよ」と度々口走ってしまう程です。

忌まわしき[パレード防衛]クエストのロケーション
何故かシカに攻撃が吸収される

 加えて、ロックオンを切り替えようと思ったら、ただカメラが動くだけという現象が多く、人によって煮え湯を飲まされ続けることになります。

世界観を保つ為に切り捨てられたもの

本作のロケーションは退廃的な雰囲気を持ち、非常に美しいです。
 ポストアポカリプスな世界感であるからか、廃墟や瓦礫・沈没都市等が打ち捨てられており、風情を感じます

やや淡く、美しい世界感

 しかし、それを道として見たとき非常に分かりにくく
 宝箱の回収の為に周囲に歩きまわっていたら、帰り道が分からなくなることが割と多かったです。

中央の屋根の上に乗れる、わからん

総評

 いいゲームでした
 なにより、ストーリー方面においてこんなに違和感なく感動できたJRPGは久しぶりです。

 やっぱりゲームにおけるストーリーテリングって難しいのだと、好例をみて更に実感しました。

 まあ、本作はストーリー自体が飛び道具みたいなものなので、あまり参考になりませんけどね……

参考

 今回は記録を残すにあたって色々参考にしたのでこの項目を設けます。
 今後見る予定の記事まで雑多に乗せるのでご了承下さい。

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