『ブレイブリーデフォルトII』絵本から人形劇へ、
※ストーリーのネタバレ有
■作品概要:
「勇気を持って果たすべき約束・責任を放棄する」RPGシリーズの最新作。
ターンの貯蓄、前借のできる独自の戦闘システムと、王道かつ枠外のストーリーテリングが魅力
■公式サイト:https://www.jp.square-enix.com/bd2/
■クリア時間:50時間くらい
体験版から、その雰囲気に惚れて遊び続けているブレイブリーシリーズ。
始めてプレイしたのが中学生の頃と考えると、長い付き合いをしているような気もしてしまいます。
この記事は、夏休みの折にクリアしたブレイブリーシリーズ最新作『ブレイブリーデフォルトII』をクリアした感想を、備忘録がてら綴るものとなっております。幼き頃の純粋さを失っております故、否定的な部分も散見されるかもしれませんがご容赦下さい。
『ブレイブリーデフォルトII』のあらすじ
「ブレイブリー」シリーズ完全新作 新たな光の戦士たちの物語
物語の舞台は、5つの国を擁するエクシラント大陸。
漂流しこの大陸に流れ着いた船乗りの青年セス、
クリスタルを奪われ、破滅に追い込まれたミューザ国の王女グローリア、
そして、一冊の魔導書を読み解くための旅をしている学者エルヴィスと、
そのお供をしている傭兵のアデル。
運命に導かれ出会った4人は、それぞれの使命と目的を果たすため共に旅に出る。
物語を紡ぐために変わったデザイン
ブレイブリーデフォルト(BDFF)は略称にFFがつくように「光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝」を元に昔ながらのRPGを現代に生み出すことを目的としたものでした。
その為かフォトリアルかつ現実的なグラフィックは、この作品は用いられていません。
キャラクターの頭身は比較的低くデフォルメされており、点在する街は絵画の中のようなテイストで描かれています。
そこから生み出される温かみのある雰囲気は以前から”絵本風”と評されていましたが、3DSからswitchへとハードが変化したことでより透明感のある”人形劇”の中のような雰囲気を醸し出しています。
前作に比べ、ジョブ服がお洒落になったのもうれしいポイントです。
ジョブ服がお洒落
イベントごとにモーションが細かく組まれておりストーリーに没頭できる
Sound Horizon/Linked HorizonのRevo氏が全曲作曲したBGMも印象的です。
初代ブレイブリーデフォルトでも全曲を担当し「彼の者の名は」は今でも好きな曲の一つですが、今作は前回とは少し雰囲気が違う印象があります。
フィールド・通常戦闘・ボス戦に至る多くのBGMにおいて、進行度合いに応じてアレンジが加わっていく仕掛けはその象徴です。
純粋なBGMの良さだけではなく、よりストーリーに寄り添った音楽は演劇に使われるもののようであり、よりSound Horizonとしての彼の魅力が発揮されているようでした。
ブレイブ・デフォルトを用いた緊迫感のあるバトルシステム
ブレイブリーデフォルトはジョブを元にしたコマンドバトルの他にもターンの前借の出来るブレイブ、貯蓄ができるデフォルトが戦闘の魅力の一つです。
最大で4回連続で行動することが出来るので、ザコ敵に対してターンを前借しまくって一掃したり、ボス戦ではターンを貯蓄しまくって一気に放出する爽快感はメリハリがあって堪りません。
今作では重量・ヘイトの概念やATBゲージが新たに導入されたことにより、ジョブシステムの中に今までにない変化がありました。
味方に即時行動を促す「其は再び相見えん」や、ヘイトが高い程攻撃力が上昇する「狙われるほど強く」など、ゲームバランスが崩壊するのではないかと思えるものが殆どです。
しかし、敵もブレイブ・デフォルトに加えジョブのアビリティや技までも使うため今作の戦闘難易度は非常に高いです。ジョブの少ない序盤は総力を合わせたギリギリの戦いだし、終盤は「僕・私の考えた最強のパーティー」と強敵による目まぐるしい戦いが生まれます。
この「僕・私の考えた最強のパーティー」を考えるのが本当に楽しくて、色んな組み合わせが嚙み合った時の快感は格別です。
硬派になったものの芯のあるストーリー
今作のストーリーは四元素のクリスタルを求め街を巡るパートと大元と絶ち運命を否定するパートの前後編に分かれています。
前編はオムニバス形式のような章完結の形になっており、街が殆ど水没していたり、唐突に巨大成長した樹木に覆われていたりと異常な現象に巻き込まれており、クリスタルのもつ膨大な力とそれを求める人々の物語は章一つで強烈な重みをもっています。
砂漠の街サヴァロン、殆どが水没してしまっている
街ごとの問題に対するテーマもよくて、個人の暴走から集団圧力までよりどりみどりなのもいいですね。
雪の国の章は個人的に一番好きな話です。
後編はブレイブリーシリーズらしい仕掛けが随所にあってよかったのですが、思う所もあったので後に述べさせていただきます。
気になった点
今まで述べた通りブレイブリーデフォルト2は良作です。
ストーリー・BGM・バトルシステムどれをとっても素晴らしく、前作より進歩している点が多々ありました。
でも、だからこそ悪目立ちしてしまう点もありました。
そのあたりもつらつらと残しておきます。
・戦闘内にあるストレス要素
今作は戦闘面において新しい要素が複数導入されていますが、その弊害として幾つかのストレス要素を生み出しています
⑴バトルUIが見にくい
今作の戦闘は[ATBシステム] [装備重量の概念] [カウンター・ジャマー]等、新規要素が多く追加された結果、分かりにくい部分があります
その一つが行動順の分かりにくさです
DEMO版からの改善点の一つ。全く分からない状況ではなくなったものの、それでも分かりにくい
旧作のFFのようにATBゲージを導入していますが、正直オクトパストラベラーにあった行動順表示の方が分かりやすいです。
同じ開発チームが作った作品なのに、何故この表示方法を選ばなかったのでしょうか。
オクトパストラベラーの行動順(上部)、比べるとこっちの方が分かりやすい
又、バトルインフォに関しても記載してない部分が多いのですが、下の項でまとめて述べます
⑵ジャマー・カウンターの問題点
先に戦闘は歯ごたえあり爽快感ありと言いましたが問題点もややあります。
それが、特定の行動に対する反撃要素「ジャマー」「カウンター」です。
物理攻撃や属性攻撃、ブレイブ・デフォルトなど対象は様々ですが、それに対し攻撃・状態異常・BP回復までしてくるので厄介です。
これの問題点の一つが反撃が確率であるという点で、どの攻撃がアウトなのか分からないので迂闊にフルブレイブできず爽快感に欠けてしまっています。
正直反撃要素があるのも嫌なのですが、それを推定するのにも手間がかかるのはストレスでした。
そして、最大の問題はバトルインフォで確認できないことで、メモや記憶を頼りにしないといけないのがストレスに拍車をかけています。
敵のバトルインフォ、ジャマー・カウンターのみならず半減吸収なども書かれておらず不便、さらに魔法不遇の一因となっている
・後半の締りが悪い
今作のストーリーの後編にあたる、大元と絶ち運命を否定するパートに締りの悪さのようなものを感じました。
例えば、ミューザ王国を侵攻した元締めであるアダマス軍王閣下の行動原理が弱いです。
彼曰く「今ある平和は虚像であり、力あるものが世界統一しなければ戦乱の世が訪れる」といってますが、 その原因作ってるのアンタなんだよなぁと言いたい
ミューザのみならずライムダールにも侵攻して多くの人殺してる。フォリイとかの明らかにヤバい奴らを徒党に入れて放置。クリスタル奪って何をするのかと思えば飛空艇つくってイキリだします
しかも各国の問題の原因の大半閣下のせいだし、水の枯渇とか信仰問題とか武力で解決できるのでしょうか。問題が多すぎる……
その混迷の原因はお前だ
まあ、それだけならいいんです。これだけならアダマス軍王閣下は狂った正義が生んだ哀れな人なんですが、彼の死に際でセスを助けているのがおかしい。閣下のキャラが明らかにブレているんです。セスを助ける事によって、愚かながら芯のあるキャラだった筈がこれではただの小僧です。
このように敵キャラを後で良い風見せるイベントが時々あるのですが、どうにも腑に落ちない感じが拭えません。ダグとセレネのサブクエストとかそんな感じです。スローンさんに暴力ふるったの忘れないよ。
又、エドゥナやイナンナ等のラスボスの行動原理が殆ど分からないのも問題です。
街中の書物とかで一端が分かるのですが、それも僅かであり、ストーリー内で丁寧に演出して欲しい部分でした
それでも全然悪い訳ではないのですが序盤の構成の良いいぶん、終盤の悪さが目立ってしまっているのは間違いないでしょう。
・パーティーキャラの掘り下げが少ない
今作のパーティーキャラ達は精神的に成熟しているせいか、キャラの意外な一面・挫折・葛藤が描かれにくい傾向にあるような気がします。
特にグローリアはその傾向が顕著で、過去話に王族としての信念や国を失った事による悲しみは語られるものの、どうしても個性が弱いという印象が拭えません。セスも船乗りだったという設定がありながらも序盤以降生かされずただの好青年でしかないのはなんだかなぁと思ってしまいました。
アデルやエルヴィスは設定やキャラの濃さがあったのですが、セスとグローリアには魅力が少なく印象は非常に薄くなってしまいました、
又、今作のパーティーキャラが精神的に成熟しているというのは対照的に敵キャラクター達が幼稚に見えてしまうというのにつながっています。
私がアダマスを愚かに感じてしまうのはパーティーキャラクターが成熟しきっているせいでもあるでしょう。
後「光の4戦士」についての言及殆どないのに終盤で誇らしげに語ってるのとかも説明不足感がありました。
・振り切れていないメタ要素
ブレイブリーシリーズには終盤にどんでん返しとしてメタ要素を加えるのが恒例になっています。
それはストーリー中にある雰囲気づくりの為のアクションコマンドであったり、戦闘システムにある特殊コマンドであったり、はたまたゲームのメニュー画面だったりします。
それらは一貫としてシステム・ストーリー等のゲーム設計に叛逆する形で組み込まれ、今まであった悲惨な運命を否定する形は、「勇気を持って、果たすべき約束・責任を放棄する」という題名であるブレイブリーデフォルトの魅力であると思います。
ブレイブリーデフォルト2においても十分魅力的に発揮しているものの、「それでいいのだろうか」と思う部分もありました。
今作はストーリーのバットエンドに対してコンティニューをすることで否定し、皆が幸せになる終わりを模索することが最大の仕掛けでしたが、この「皆が幸せになる終わり」になるはもっと助けるべき人たちがいたのではないかと思ってしまうのです。
これは単純に私の好みではあるのですが、主人公たちには傲慢であってほしいと思うのです。それと同様に悲劇は全部救ってほしいとも思います。
彼らが仲間たちが全員帰って来る未来をつかんでくれたのは嬉しいのと同時に、グラディスやゴードリイルのような人々があの大きな渦の中の被害者のまま戻らなかったのは非常に悲しく、それをどうにか出来る手段らしいものがありながら実行できないのはなんだかなぁと思ってしまいました。
後、そのギミックが作用している中で6章は終わりにやや違和感があったことも添えておきます。
・割とある不親切な要素
今作には快適なゲームプレイを阻害する要素が前に挙げた他にも、いくつかあります。
列挙すると
・やや長いローディング
・不親切なUI
・マイセットがない
・微妙にやりずらいファストトラベル
・会話のログがない
・ワールド画面の可動カメラ
・地図のないダンジョン
・「宝箱から魔物が現れた!」の必要性のなさ
・不要さの目立つ草刈り
・微妙にリーチの足りない剣
・問題点も感じられるシンボルエンカウント
この中でもマイセットがないというのが想像以上に問題で、メニュー画面のUIの見にくさも相まって、戦闘スタイルの試行錯誤を阻害してしまっています。
本シリーズの前作である「ブレイブリーセカンド」にはあった機能であり、その便利さが分かる分もどかしさを感じました。
・やっぱり”絵本らしさ”が欲しかった
本作はハードの変化によりグラフィックが絵本→人形劇のように変化したのですが、そのころにあった感動は薄れてしまったように思います。
ブレイブリーセカンドの紹介映像。”絵本風の街”を巡る魅力が押し出されている
おそらく、操作キャラが以前より小さくなっていることも要因でしょうが、なんとなく見にくいのも没入感を削いでしまっています。
また、キャラクターの造形がシリコンチックになっており、作り物であるかのような雰囲気があったのも否定できません。
この点については、新作のスマホ版で修正されているようなので今後に期待できるポイントです。
総評
ブレイブリーデフォルト2はストーリー的にはやや堅実に見えた反面、システム面では多くの挑戦が感じられた作品でした。そしてその多くが煩雑さを招きマイナス要素になっている作品でもあります。
面白かったのにもかかわらず、微妙な所は多いです。減算式でこの作品を評価するなら、かなり低い評価になってしまいます。
しかし、それは作品自体のポテンシャルの高さから感じるものであり、決して駄作というわけではありません。
そのような点で「面白かったけど、もっと面白くなっただろうな」と感じた作品でした。
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