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日常に潜む非日常⑩「全員死刑」

人生は小説より奇なり、という言葉がありますが
この映画の元となった事件はてんで下手な小説よりも、何ともまあ、考えれば考える程にお粗末な顛末でした。
行き当たりばったり、という言葉はこの事件のためにあるようなものですね。
TVドラマ「ニーチェ先生」などで有名になった間宮祥太朗像を色んな意味でぶち壊された初主演映画です。


「全員死刑」(2017)

借金を抱えたヤクザの父・テツジとヒステリックな母・ナオミという両親の間に生まれた青年・タカノリ。
家族を借金苦から救うため、兄・サトシと共にすぐ近所に住む金貸し業の資産家・吉田一家を襲撃し、財産を奪う計画を立てる。
しかしあまりにもお粗末な強盗の果てに、吉田一家の息子を殺害してしまったタカノリ。一家はそこからエスカレートして全員で共謀。吉田一家が溜め込んだ金を狙って、母親やもうひとりの息子、果ては全く無関係な友人ですら「家族愛」を合言葉に身勝手にも殺害していく……。


アオリに『これが、彼の親孝行。』なんて言ってるけどもっとマトモな親孝行はなかったんだろうか?
しかし原作となったタカノリのモデルになった次男の獄中手記(同タイトルで文庫化)には「自分はヤクザに生まれたから親分の言うことは絶対。だから反省はしていない」との記述もあるので、劇中、家族の中で唯一まともな精神を持っていたタカノリがもっと真っ当な環境に生まれていれば……とも思わずにはいられない、なんとも歯がゆい気持ちにさせられました。
どちらかと言えば作風は園子温監督に近いものを感じたかも。
前半こそ良かったけど、後半はただただバイオレンス満載になりちょっと息切れした感じが否めないのも事実です。
作品全体のキーワードとして『間抜け』なのも皮肉が聞いてて個人的にはエンタメとして見る分には好きですね。

この監督はドラマ『Giver 復讐の贈答者』で知りました。こちらも結構ホラーテイストに仕上がっててドラマとしては見ごたえがあるのでオススメしたいです。



人間でほんと、環境と親は選べないんだなあ

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