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日常に潜む非日常⑤「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」

死にたいと思ったことがありますか?

学生時代はあまりいいものではなかった。それなりに地獄だった。でも、死にたいと思ったことがあるかと言われればノーだ。死んだら負けた気がしたから。


仲のいいクラスメイトも居なければ(居てもすぐ退学した)、特に輝かしい成績を残していた訳では無い。
学業よりも寧ろバイトに精を出していた。学校では時給は出ないが、バイトでは時給が出たのでそれは懸命に働いた。そこのバイト先では高校卒業してからも2年間働いていた。
(ちなみに生徒手帳には長期休み以外のバイトは禁止と書いてあったが、そんな些細なこと守ってるやつは大して居なかった気がする)
諸事情で退学した同級生と1度学校をサボってから、学校に行くのが馬鹿らしくなってしまい
ちょいちょいサボってた。バイトしてたので金はあった。
次第に学校に行くのがストレスになり、3年に進級した頃背中が発疹まみれになり、薄いブルーのワイシャツに点々と血が着いた。皮膚科に行ったらストレスによる皮膚疾患と診断され、卒業したらあっという間に治った。

と、まあ10年以上前の薄暗い学生時代の話はさておき。
最近ホラーばかり見てるので(アマプラの恐怖チャンネルがまだ観れるけど)たまには違う映画が見たくなった。ここ最近荒むような出来事やショックな事が多かったので、今回は頭を空にして笑えるような作品が観たかった。

「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」(2016)


頭を空にするならクドカン関連に限る。

最近の福田雄一作品といい、もうある種の鉄板かもしれない。


公開前に発生した軽井沢のバス転落事故を連想させるとして延期になるという憂き目を見たが、無事公開されると公開1週目の映画観客動員ランキングでは1位を獲得した。よかったね!

物語は普通の高校生・大助(神木隆之介)が乗る修学旅行バスが転落。ふと目を覚ました先は―――地獄だった。
好きだったひろ美(森川葵)に告白する前に死んでしまい、混乱する大助の前に現れたのは、バンド「地獄図(ヘルズ)」を率いる、赤鬼のキラーK(長瀬智也)。閻魔様の裁きによって現世に転生するチャンスがあると告げられた大助はキラーKの指導と特訓の元、現世に戻るために悪戦苦闘するというコメディ映画だ。

先程、私は頭を空にするならクドカン関連と言った。
クドカンはなぜか自身が監督となるとかなりのパワー系、つまり強引に観客を寄せたがる。

映画開始3分弱から早速バスを転落させました。

展開早すぎだろ……と思いつつ、おいでませ地獄へ。



「Hey....Hey,you!俺の立ち位置で死ぬとは……いい度胸だ」

「……死ぬ?」

「地獄へようこそ、Mother fxxkeeeeeerrrrrrr!!!!!!!!」

唐突に始まるライブ。発狂するように騒ぐオーディエンスと、合間に拷問される亡者たち。
ライブ後、大助は呟いた。
「……分かんない、なんか、全然付いてけない」
頭を空にするというのはこういう事だ。考えるな、感じろというのがコメディ作品の掟。考えたら負けだ。我々はクドカンの熱い熱を受け入れることしか出来ない。

現世と地獄の時差の関係でバスが墜落した途端、キラーKの携帯に現世にニュースが映る。死者は大助を含む29名、生存者が確認されたのは1名。けれど地獄に落ちたのは大助ただ1人で、生存者以外は残りは全員天に召された模様。
「ふざっけんなよ……何で俺だけ地獄?」
キラーK「カッコイイからじゃねえのお?」


「人間界での悪行が祟ったんじゃねーの?」
の一言で披露される新曲「天誅」(歌詞が完全にRGのネタ)も、「早く言えよ!!」とキラーKのギターからアンプのコードを引き抜く大助。罪状……の前にメンバー紹介が入る。
ライブにはメンバー紹介が付き物だからね!

生前は傷害罪・窃盗罪・婦女暴行罪で前科6犯。最期はバイクで逃走中に転んで死んだドラムのCOZY(桐谷健太)
生前は車上荒らしの常習犯。親から貰った大事な体にいいちことハイライトのタトゥーを入れ、好きだった彼氏に刺殺されたベースの邪子(清野菜名)

「いいから俺の罪は!?」
「You!南高の軽音楽部だろ、スタジオぱんだ…使ってたよなァ?」

ちなみにここでの大助の罪は割愛。地獄図のメンバーに比べるまでもない、小さな罪である。
キラーKがある仕草をした時、大助は思い出したようにキラーKに言った。
「え、近藤さんですよね?スタジオぱんだの近藤さんッスよね?」
大助に指摘され、怒りで巨大化するキラーK
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「やっと思い出したかァ、ガキが!!」

そしてキラーK(+地獄図)による罰が執行されるが、大助もへこたれない。寧ろ変に打たれ強い。
一悶着あって大助は地獄市立地獄農業学校に編入。そこで大助は自分の死因を知る。それこそが地獄で最も重い罪(まあ直接的な死因は違うのだけど、間接的に事故の原因となってしまうんだが)。
ていうかポップな曲調に暗い歌詞とかインディーズ時代のセカオワかよ!

が、当の大助は未練タラタラ。高3の修学旅行に秘めていた思いは消化不良。ちなみにこの学校では毎週金曜になると閻魔校長の裁き(試験)を受けられる。結果次第では新しい転生先(進路)が決まる、いわゆる輪廻転生だ。転生できるチャンスは7回。7度目の転生後に地獄に落ちると角が生え、完全に鬼となり二度と地獄から出られなくなるという。

――――こうして大助の地獄と現世を行き来する学園生活が始まった!

ココ最近のクドカン作品、どうもクセが強くてイマイチハマれなかったのだが、この作品はそうでも無かった。
「頭を空にして観る」という意味では。
が、レビューサイトではかなり口に合わなかった人が多かった様で辛口のコメントが多い。まあそれは仕方ないな。クドカン作品は基本的に人を選ぶ。
キラーKが口にする「Mother fxxkeeerrrr!!!!!!!!」がめちゃくちゃ良い声すぎて笑ってしまう。本業が本業なだけあってめちゃくちゃ歌が上手い。一応劇中で神木隆之介も歌ってるのだが、少し音が外れているのが気にかかってしまった。あまり歌は得意では無いのだろう。
そして豪華ゲストの無駄遣い。ポプテピかよ!と言いたくなるくらいチョイ役が一々豪華である。あんな贅沢な中村獅童の使い方があるか!
中盤以降のじゅんこ(皆川猿時)の部分は元気がない時にぜひ見て欲しい。最強の地下アイドルを彷彿とさせる。
本題の「TOO YOUNG TO DIE」って直訳すると「死ぬには若すぎる」って意味なんだけど
このタイトルは大助ではなく、キラーKのためにもある言葉だと思う。
でも17歳、「死にたい」とか「死ね」って息をするように出てしまうのはこの時期かもしれない。
そしてこの映画を観ると地獄も案外悪くないかもしれない気がする。この世は地獄、あの世は天国なんて本末転倒だね。

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