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【前編】雨風太陽様インパクトレポート発行に際して ーIMMの実践と継続ー

「都市と地方をかきまぜる」をミッションに掲げ、事業を通じて都市と地方、人と人を繋げてきた株式会社雨風太陽。2020年より、同社はIMM(インパクト測定・マネジメント)を事業の一部で始め、今回会社全体としてのIMMを実施しインパクトポートの発行を行いました。同社のインパクト経営指標の策定支援を行ったトークンエクスプレス株式会社代表の紺野と、雨風太陽の高橋代表で対談をしました。今回はその前編になります。

■対談者プロフィール
高橋博之(たかはし・ひろゆき)
ポケットマルシェを運営する株式会社 雨風太陽 代表取締役。東北食べる通信創刊編集長。著者に『都市と地方をかきまぜる』。昨年2度目のカンブリア宮殿出演。車座行脚する全国キャラバンは8週目(車座1270回目)。

紺野貴嗣(こんの・たかつぐ)
「インパクトを、企業から」トークンエクスプレス代表取締役。JICAで途上国開発に関わり、その後コンサルを経て創業。2019年よりSIIFと協業しインパクト投資、休眠預金事業に携わる。GSG国内諮問委員会賛同メンバー。


1.「インパクト創出を追求する企業」と「企業からのインパクト創出を支援したい企業」の出会い

ーーまずは雨風太陽様とトークンエクスプレスの簡単な会社紹介をお願いできますか。

高橋博之氏(以下、高橋):雨風太陽は12年前の3.11の震災を起点に、「都市と地方をかきまぜる」をミッションに掲げ、全国7800名の生産者と70万人の消費者*を繋ぐ産直ECサイト「ポケットマルシェ」の運営、関係人口創出を目的とした地方自治体との連携等を行っており、昨年からは親子向け地方留学の「ポケマル親子地方留学」を始めました。都市と地方の間のヒト・モノ・カネを循環・促進していく、このような事業をしている会社になります。 
「都市と地方の分断」という日本固有の問題ではない、どの先進国も直面しているこの社会課題をビジネスで解決していく会社としてこだわり続けたい。繋がるきっかけは"震災"というネガティブな事がきっかけではありますが、日常の中でもポジティブに繋がる接点は必ず必要で、「ポケマル」や「親子地方留学」がそのきっかけになればと思っています。
*2023年8月末時点

紺野貴嗣氏(以下、紺野):当社トークンエクスプレスは「インパクトを、企業から」というビジョンのもと、企業向けにインパクト測定・マネジメント(IMM)のコンサルティングを提供しています。
JICA勤務時代、日本企業と共同で途上国開発のプロジェクトで関わる事も多かったのですが、企業が社会的インパクト創出を追いきれないという事を目の当たりにしました。アセットを持っている日本の企業が「こういう理想の社会を作りたい」というインパクト思考を持てば社会を変えられるのではないかと思い、起業しました。

「インパクトを起こすためにどういう事業設計にするのか、事業設計をした後にどう管理していくのか、マネジメントしていくのか」という、JICA時代のノウハウを企業向けにメソッド化して提供、コンサルティングしております。我々としては雨風太陽様のようにインパクトを創出したい企業様と出会って、その力添えを少しでもできるのが喜びです。

高橋:じゃあ我々、出会えて良かったって事ですね、運命的な!

雨風太陽とトークンエクスプレスの関わりはどこからでしょうか?

紺野:2020年から一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)が休眠預金事業の一環として雨風太陽様の「オンライン起点での関係人口の創出の可視化」というインパクト可視化支援しているのですが、そこに当社が委託先として関わった事が始まりです。
産直ECサイト「ポケマル」を対象に、「本当に関係人口を生んでいるのか。生んでいるとしたらどういうプロセスなのか。それはどういう指標で測れるのか。」というところを支援させていただきました。
 
当時はまだ事業が「ポケマル」一つという雨風太陽様でしたが、「オンライン完結してしまうと、人と人は交流しきれない、関係人口は生まれきれない」という気づきから、「オンライン完結じゃない事業が必要だよね」という話が社内で生まれ、すぐに「親子地方留学」等の事業が立ち上がりました。そのスピーディーさが印象的でした。

2.インパクト測定・マネジメント(IMM)の社内への導入

ーー雨風太陽様はSIIFの助成事業(休眠預金活用事業)を通じて インパクト測定・マネジメント(IMM)に初めて触れたとの事ですが、雨風太陽様はIMMのどのようなところに興味を持たれたのでしょうか。

高橋:IMMに初めて出会ったのは2020年ですが、それ以前は事業を通じて生まれた化学変化、つまりインパクトを、それまでは一つ一つの事象や物語を「生産者と消費者の間にこういうエピソードだって生まれてるじゃないか」と言葉や文字で伝えたり、情緒的な伝え方をしていました。
 
ちょうどコロナ禍で事業が急拡大し、賛同者や株主、社員が増えたのですが、本当に自分達のやっている事業が「都市と地方をかきまぜる」というビジョン・ミッションに繋がっているのか、「我々のサービスは目指す方向と合っているのだろうか」という議論が再燃しました。社内の人たちのモチベーション維持の意味も含め、改めて目指す方向を確認し、議論する必要がありました。
より多くの人に自分達の事業を伝えていくにはやはり客観的に、数字で定量的にインパクトを説明することが必要だと感じたときに、それが実現可能なIMMに興味を持ちました。

紺野:SIIFの助成事業で雨風太陽様に関わりながら、思想がインパクト指標にも反映されるものだということを、私は改めて感じました。例えば関係人口の創出の指標として「コミュニケーションの数」を見ていましたが、関係を深めるようなものだけではなく実は商品の問い合わせやクレームなども存在していて、これをどう評価するのかというのは現場で議論したりしました。

高橋:コミュニケーションというのは手間。今まではこうしたものをコストとして省いてきました。しかし繋がるためには商品の問い合わせやクレームも含めたやりとりや手間と時間が必要だと思ってます。手間と時間、どちらも「間」という漢字が入りますが、それらが発生した時に人間関係が生まれる。人間も「間」が入る。今の時代、これが大事だと思ってます。生産者と消費者の間に人間関係を育む事で、誰が食べたかわからなかったものがわかり、モチベーションにも繋がる。ユーザーも生産する方に関わっていく事が新たな喜びになり価値も生まれる。トフラーの「第三の波」という本の中に、情報化時代になると生産と消費がもう一度接近してきて繋がる、生産者と消費者を掛け合わせた「プロシューマ―」という言葉があるんですけど、生産と繋がった消費も、消費と繋がった生産もプロシューマ―ハピネスを手に入れられると言われてます。
 
こうした思想は今までも話してきましたが、IMMでコミュニケーション数を客観的な指標として表せるようになった事によって、説得力を持って説明できるようになりました。

3.インパクトレポート発行の経緯

ーーそのような経緯でIMMを社内で実施した後、さらにインパクトレポートを発行するに至ったのはどのような経緯でしょうか。

高橋:IMMの実践によって、自分達がやっている事が定性的だけではなく定量的にも目指しているビジョン・ミッションに繋がっているんだと確認する事ができ、やるべきことの明確化ができ、社員のモチベーションに繋がりました。IMMの良さがわかったので、一つの事業だけではなくそれを会社全体に展開したいと思うようになりました。
 
また、ビジネスを通じて社会課題解決をするという事はこういう事なんだと、世間に対して伝えていきたい、外に発信する事で背中を見せたいと思うようになりました。一社で解決できる課題は限られています。我々に続く会社が増え、あるいはそのような会社に投資する投資家が増え、結果インパクト創出のスピードが加速してほしい、という狙いがあり、インパクトレポートを出す事にしました。

ーー雨風太陽様がインパクトレポートを出すにあたり、トークンエクスプレスはどのように関わったのでしょうか。

紺野:SIIFの助成事業では一つの事業におけるIMMの実施でしたが、その後企業全体に展開される際に企業全体での経営指標にできる水準となるインパクト指標の策定支援をさせていただきました。事業が増えているので、事業を貫く価値観・考えが何なのかというところを時間をかけて密にやらせてもらいました。

高橋:本当にその通りで、紺野さんの経歴を聞いて、この人と一緒ならできると思いまいした。

紺野:ありがとうございます。JICA時代、および日本におけるIMMの牽引役でもあるSIIFとの協業を含め、長年経験があるというところを評価していただけたのかなと思っております。また、博之さんや大塚取締役の考えに沿った指標を作るという部分でも信頼いただけたのかなとも思っております。経営指標を立てるというのは、経営者とじかに時間をとり密にやりとりする中で、オリジナルの言葉も含めやっていくものだという学びをいただきました。

4.インパクトレポートとサステナビリティレポート、統合報告書の違い

ーー「インパクトレポート」はまだまだ発行してる企業が少ない印象ですが、統合報告書やサステナビリティレポートとの違いは何でしょうか?

紺野:インパクトレポートに近しいものとして、サステナビリティレポートと統合報告書があります。インパクトレポートは、事業なり企業活動を通じてどのような社会変化を生み出そうとしているのか、また実績としてどのようなものを生み出したのかというところに焦点を当てたレポートになります。
サステナビリティレポートは企業自身もそうですが社会が持続可能になるということをテーマに環境・社会・ガバナンスに対して自分達がどういう姿勢で臨んでいて、どういう実績を出しているのかというところに焦点をあてています。
統合報告書はサステナビリティレポートに従来の財務的な年次報告書が加わって総合的なものになっています。
雨風太陽様は今回、企業全体でのインパクトについて、独立した冊子としてインパクトレポートを発行されました。これは素晴らしいお手本で、これに続く企業がどんどん出てほしいと思います。
一方で、インパクトレポートは必ずしも一つの独立した冊子という様式で出さなければならないわけではありません。事業のレベルでインパクトを測るのと企業全体でインパクトを測るのでは同じようでいて異なります。企業全体でインパクト指標の設定・インパクト測定をするとなると大変なので、インパクトレポートに関心を持たれた企業には、まずは事業単位でインパクトを測って、サステナビリティレポートや統合報告書の一部に掲載するというところから始めていただくといいかなと思ってます。

この続きは後半へ・・・

聞き手・文/成瀬真由(トークンエクスプレス株式会社)


雨風太陽様のインパクトレポートや、関連するニュースはこちらから確認いただけます。
▼インパクトレポート
230902_インパクトレポート_雨風太陽 | PPT (slideshare.net)
▼「関係人口とインパクト」ページ
https://ame-kaze-taiyo.jp/impact/
▼プレスリリースhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000162.000046526.html


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