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生に対する畏怖とどう向き合うかー君たちはどう生きるかー


ネタバレ感想。特に印象的だったことを書いてみる。


「素敵じゃないか、眞人を産めるなんて」
という言葉で、君たちはどう生きるかを見てよかったと思った。
そして、吉野源三郎の”君たちはどう生きるか”を読み終えて、その思いがより強くなった。

映画の序盤、かなり憂鬱だった。戦争のサイレンが鳴り響く中お母さんがいる病院に走っている時、目が覚めたら泣いていることに気づく時、眞人が石を頭に打ちつけて血を流す時、ずっとしんどかった。生まれてきたら大切な人を亡くす辛さや、孤独を感じる寂しさ、体の痛み、いろいろな“味わいたくないこと”から避けては通れないんだよなあ、といったことを考えていた。そしてその考えは、生むことや生まれることに対する畏怖のようなものを駆り立てた。(映画を通して潜在的な感覚が湧き上がってきたのだと思う)

中盤で話は大きく展開していき、憂鬱だったことも忘れるくらい物語に没頭していた。(アオサギ、大伯父さん、ペリカン、ワラワラ、インコ、インコ、インコ、‼︎)
そして、物語の終盤。現実の世界に戻ろうとするヒミに対して、眞人は「だめだ、火事で死んでしまう(といったニュアンスだったと思う)」と言う。それに対して
ヒミは
「素敵じゃないか、眞人を産めるなんて」
と圧倒するほど素直で真っ直ぐな言葉を放った。
私は忘れていた生むことや生まれることの畏怖を思い出すと同時に、その感覚が覆されるような気持ちになった。私が感じていた畏怖が無くなることはないが、あの瞬間だけはたしかに素敵かもしれない、と思えた。あらゆる理屈より説得力があり、
悲しみや苦しみを恐れすぎるな。
というメッセージにも感じた。しかしそれは、私が受け取りたいように曲解したメッセージであり、映画の感想としてはズレていると思っていた。
しかし、最近読み終えた原作の中で、わたしが受け取ったメッセージに似た話しが出てきて衝撃を受けた。

「身体の不調とおなじように、心に感じる苦しみやつらさは、人間として正常な状態にないことを知らせてくれる」

怪我をして体が痛むのは、死を回避するための危険信号としても働いている。もし頭から大量に出血していても痛みを感じなければ、手当てもせず死に至るかもしれない。心が感じる苦しみやつらさも、最悪を回避する糧となる。

「その苦痛のおかげで、本来人間がどういうものかを知ることができる」

苦痛は生きていることを実感させるものであり、必要な感覚なのだと思った。そして、そこで感じた苦痛はいずれ大きな後悔になるかもしれない。いくら悔やんでも過去を変えることはできないが、今現在の選択は自分の意思を持って変えることができる。その意思を作るのは、過去の苦痛であり後悔である。それを踏まえた上で君はどう生きていくか?そんなメッセージを本から受け取った。

原作を読んで良かったと心から思った。また、そのきっかけを作ってくれたこの映画とも出会えて良かった。

そういえば、映画の中で青鷺が出てくるとまだ知らなかったころ、たまたま池で見つけた青鷺の写真を撮っていた。

今見ると、急に話出しそうで怖くもあり可愛くもある。
8月19日修正済



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