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もう一人の鬼頭はるか

※作者自身の想像で書きました。勿論実際の物語には影響はしません。(画像:テレビ朝日公式サイト(https://www.tv-asahi.co.jp/donbro/)より)

 はぁ・・・。緊張する・・・。
私は今、ステージの上に立っている。
目の前には、審査員。
そして、私の手にはマイクが持っている。
そう。私は今、歌唱コンテストの最終選考で歌おうとしているのだ。
初めは、最終まで残らないだろうと思っていたが、まさか最終選考まで残れるなんて、思ってもいなかった。
心臓がドクンドクンと、脈を波打っている。
緊張している。
マイクを持つ手に、汗をかく。
でも、ここで歌っていつか有名になってみせる。
そう思って、マイクを自分の口元に寄せ、口を開く。
そして、歌う。

 歌い終わった後、マイクを下ろす。
場が静かになる。
結果は・・・。
審査員が立つ。
すると、場が握手喝采になる。
よかった・・・。
そう思うと、一安心できる。
緊張が高まっているからか、少し横に倒れたい。
そう思っていたら、自分の体がバタンと音を立て、倒れる。
どうした?私。

 そう思って目を覚めたら、見覚えのある天井だった。
なんだ、夢だったのか。折角一大アーティストになりそうだったのに。
そう思いつつ、ベッドから出て、ベッドメイキングをする。
「あれ、なにこれ。」
そこには、少し変わっていたメガネが落ちていた。
「はるかー?何やっているのー?学校遅れるわよー!」
一階から叔母さんの声が聞こえる。
やべっ。もうこんな時間じゃん。そろそろ行かないと遅刻する。
そう思って、慌てて学校の支度をする。
ベッドの上に鞄を置く。
鞄の中に教科書などを詰めていく。ふと、変なメガネに目にとまったが、
「どうしよ、こんな変なメガネ。まあ、良いよね。別に持ってかなくて。」
変なメガネは鞄の中には入れず、部屋から出て、階段を駆け下りる。
「叔母さん。お弁当どこ?」
「お弁当なら、そこのテーブルに置いているわよ。」
叔母さんが指さしているお弁当を手に取り、鞄の中に入れる。
急いでいるから、朝ご飯良いよね。
そう思って、リビングを出て玄関に向かい、ローファーを履く。
「はるか?朝ご飯食べないの?」
叔母さんがそう言うが、食べている暇などなかった。
「いってきます!」私は勢いよくドアを開ける。

 津野角高校と書かれた校門を通り、自分の下駄箱に向かう。
ローファーから上履きへ履き替える。
「はるか、おはよう!」友人である犬山かおりが笑顔で話しかける。
「かおり、おはよう!」私は笑顔で言う。
「昨日のテレビ、見たー?」かおりが話し始める。
「昨日のテレビ?あぁ!あのドラマのことね。面白かったよね。」
「そうそう。面白かったよね。」
そんなたわいもない会話が教室に入るまで続いていった。
 教室に入り、自分の席へ座る。
鞄を机の上に置き、中に入っていた教科書やノートを机の中に入れる。
「やっほ、はるか。」
そう声を掛けてきたのは、彼氏である花村くんだった。
「おっ、花村くんじゃん。おはよう!」
「おはよう。」
花村くんは私の前の席に座る。
「昨日のドラマ見た?すっごく面白かったんだけど。」
「昨日のドラマなら、見たよ。あれって、クラスのみんな見ていたんだ。」
「そうそう、試しにあそこにいるやっぴーに聞いてみてよ。彼も見ているからさ。」そう言って、男の集まりの中心にいる男を指さす。
「やっぴー!」私は聞こえるように言う。
「おっ、はるかじゃん。青春ライフは満喫しているか?」私をからかうように言う。
「もうー。すぐやっぴーはからかうんだから。」私は頬を膨らませる。
「で、どうしたの?」やっぴーは言う。
「昨日のドラマを見たって、花村くんが言っていて。」
私は彼氏の方に目線を向きながら言う。
「昨日のドラマ?見てないよ。花村の嘘だよ、それ。」
私はやっぴーに向いていた目線を彼氏の方に向けると、彼氏は「やべっ。」と言いそうな表情をしていた。
「私を騙そうとしていたのねー!!」私は頬を赤くする。
「ばれちまったよ。」と言わんばかりで、舌を出す。
「でも、俺は昨日のドラマ見ていたよ。面白かったよな。」彼氏は話をはぐらかす。
「話題を勝手に変えないでよー!!」
すると、担任の先生が扉を開けて入ってくる。
「どうしたはるか。そんな大声出して。また夫婦喧嘩か?」からかうように言う。
「違いますー!!」私は頬を膨らませながらそう言うと、クラスは笑いで包まれる。

 「礼。」
やっと六限が終わり、家に帰れる。
そう思って、鞄を机の上に置き、教科書やノートとかを鞄の中に詰めていく。
「今日一緒に帰ろう。」そう言ってきたのは、彼氏である花村くんだった。
「良いよー。」私は笑顔で答える。
「それじゃ、校門で待っているから。」
そう言うと、自分の席に戻っていった。
その時、扉から出てきたのはいつもの担任ではなかった。
見た感じ、若い女性っていう感じだった。生徒に間違えられてもおかしくはないような先生だった。
「えーっと。あなたたちの担任は都合によりいませんので、代わりに私が帰りのホームルームを始めたいと思います。」女性が張り切って言う。
なんか見覚えがあるなー。
そう思ってじっくりと見ていると、隣の男子が、
「どうした、そんなじっくりと先生を見て。まさかと思うけど、胸を見ていたわけではないよな?」また私をからかうように言う。
「違うって。なんか見覚えのある先生だから、見ていただけ。そんなイヤらしい目で見ていませんって。」私は言われたことに対し、隣の男子だけ聞こえるよう、静かに反論をする。
 「これで話は終わります。・・・はるか、今の話聞いてた?」
突然私が指名されたので、慌てて立つ。
「はいっ。何でしょう。」周りからの視線を感じる。
「今の話、聞いてた?隣の男子とコソコソ話をしていたけど。」
「もちろん、聞いていましたよ。確か・・・」
私は自信ありげに言い、何を言っていたのか考える。
だけど、さっきまで隣と話をしていたせいか、全然覚えていない。
そのことを悟ったのか、先生は、
「ほら、何も聞いていないじゃない。・・・それじゃあ、はるかのような人のために、もう一度言うわね。」と言うと、さっきまで話していた内容をもう一度言う。
はぁ・・・。
私は座りながらため息をつくと、隣の男子が「イヒヒ」と言うような表情を見せる。
私は隣の男子を睨み付ける。その時、「おぉ・・・。怖い怖い。」と私に聞こえないように小声で言った。まあ、聞いているし。後でこいつどうしようかな。
そう思っていると、話が終わっていた。すると、起立という号令が聞こえてきたので、私たちは席から立ち上がる。そして、礼という号令が聞こえてきたので、頭を四五度下げる。
よし、これで今日が終わった。
私は彼氏を追い抜き、先に下駄箱に向かう。
「また明日。さようならー。」かおりが笑顔で手を振る。
「また明日ね。さようならー。」私も笑顔で手を振る。
学校を出て、校門の前で立つ。
彼氏はまだかな。
そう思いながら、鞄の中からスマホを取り出し、ネットを開いて色々と調べる。
歌が上手くなる方法、歌唱力はどうしたら伸びるのか。
そういったことを調べる。
 しばらくの間待っていると、「お待たせ。」という声がした。
スマホから目を離し、目の前に向けると彼氏がいた。
「待った?」彼氏は言う。
「ううん。全然。じゃあ、行こう。」

 しばらく歩くと、駅前に着いた。夕方なので、駅に向かう人が多い。
「それじゃ、またな。」彼氏は手を振る。
「また明日ね。」私も手を振る。
彼氏を見送った後、私は駅の脇道に向かう。今日も普通の日常だ。
そう思って駅の脇道に入ると、そこに暴れる担任がいた。
えっ。どういうこと?
そう思ってじっと見ていると、担任は叫び出す。おかしくなっちゃったのかな。
私は恐る恐る担任に近づき、声を掛ける。
「あの・・・。大丈夫ですか?」
私がそう言うと、担任はこちらに目を向け、その目を光らせる。
すると、担任は化け物に変わる。同時に、その周囲に何か不気味な人たちが現れる。
「なになに~!!」
私は必死に逃げようとする。だけど、周囲の化け物によって取り囲まれる。
どうしよう、助けてマイ・ヒーロー!!
心の中で叫んでいると、道の奥から青い目をした人が現れる。
やった・・・。私のマイ・ヒーローだ・・・。
そう思っていると、青い目をした人が腕輪に触れ、別の人物に変身を遂げる。そして、その人が剣を持ち、担任を切りつける。そして、担任は消えてしまった。
えっ・・・。担任はどこ行ってしまったの・・・。
私はそう思っていると、バイクの音が聞こえる。
「やぁやぁ!祭りだ、祭りだ!」
何、あいつ。
そう思っていると、バイクの音が近づいてくる。やばい、このままじゃ轢かれる。
そう思って急いで立ち上がり、道の端に逃げる。
すると、バイクがこちらにこっちに向かってくる。えぇ~!やばいやばい~!
私は電柱にしがみつき、バイクを避ける。
少し落ち着いて電柱から降りると、さっきまでいた場所を見る。そこには、赤い服を着た人が剣を持ってさっきの人と戦っている。
どういうこと?仲間割れ?
そう思いながら見ていると、こちらに何か飛んできた。
危ない。そう思ってその場に座り込み、目を瞑る。
しばらく目を瞑ったが、何も痛く感じなかった。どういうことだろう。そう思って目を開けると、目の前に赤い服をした人が立っていた。
「あっぶな~。」私はつぶやいていると、赤い人がこちらに振り向き、何かを開ける動作をしている。
「あ、ありがとうございます。」私は礼を言うと、赤い人は私を蹴り飛ばす。
「えぇ~どういうこと~!?」
私は赤い人がドアを開ける動作をしていたところに入れられる。
「いたた・・・。」お尻を触りながら、周囲を見渡すと、そこは私の家の前だった。
あれ・・・?私、さっきまであそこにいたような・・・。
そう思いながら、少し考える。
だけど、まあいっか!
そう思って、家の扉を開けて、
「ただいまー!」と叔母さんに聞こえるぐらいの声で言い、玄関でローファーを脱ぐ。
そのまま二階の自分の部屋に行き、鞄をドアの脇に置く。そして、制服のままベッドにダイブし、ベッドにあった変なメガネを手に取る。
「何だろうこれ・・・。」
私は変なメガネを手に取ったまま、つぶやく。

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