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はじまりのうたー芹奈編ー

 バイクで駆け抜ける森の中。風で靡かせる私の髪。
エンジン音が森の中で響かせる。
そして、ライダーの背中で温もりを感じる私。
今日は春の陽気を感じる気温であった。
だけど、彼の温度はその陽気より間近に感じさせる。
周りを見渡せば、ビルが立ち並ぶ都市風景とは違い、なんだか心が落ち着くような風景であった。
更に、ライダーである彼の体温で私は心を落ち着かせる。

 しばらくバイクで森の中を颯爽としていると、どこからか音楽が聞こえる。
どこからだろう。
そう思って周囲を見渡す。
もしかしたら、彼の電話が鳴っているかもしれない。
そう思って、
「ねえ。電話鳴っているよ。」
そう言う。
「ん、電話?バイプレーションが振動しないから電話なんか来てないけど。」
どうやら、違うらしい。
じゃあ、どこから聞こえるのだろう。
好奇心が沸いてくる。
もしかしたら、ここじゃないのかも。
そう思い、
「ねぇ。少し急用を思い出したから、早めに帰らせて貰うね。」
と言う。
「え、急用?それなら送ってあげるよ。」
彼は気遣いを見せたが、私は首を振る。
「気遣いありがとう。でも、その心配はいらない。」
私は言うと、バイクから降りる。
その時、さっきまで感じていた温度や風を感じなくなった。
だけど、さっきから聞こえる音楽は鳴り止まなかった。
この音楽、なんか行かなきゃ。
そう思うと、私は音楽がする方へ走る。

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