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Re: ロード トゥ 彼女ん家

また電車に乗っている。心地よい揺れと流れていく景色はそれに比例して僕の思考を程よく加速させてくれる。台風の予報が出ていた今日だが空には少し晴れ間がある事を今朝の彼女の電話で知った。曇天の中にぽっかりと青が佇む様はどこか砂漠のオアシスの様にも見えた。

"寂しくなったから、電話した"

それとなくかかってくる気配はしていた。だから僕は素直に"かけてくると思ってた"と言った。彼女が家を出て5分経たない間に起きた事だ。今日は僕が仕事で遅くなるし、彼女も忙しいだろうから会うのを辞めようと話していたところだった。でも仕方が無い。僕はもう会いたい。だから今日の夜また彼女の家へ向かう事を約束した。それだけで僕は今日1日を誰よりも強く生き抜く事が出来る。

昨日の事

電車の揺れで色々な事を思い起こしたり思い付いたりするのは僕だけだろうか?昨日の夕べの事を思い出していた。彼女の仕事があり得ないほど早く終わり、せっかくだからピザでも取ろうと言う事になった。僕はコンビニへ急いでありったけの酒やジュース、お菓子を買い込んで来た。その後昼過ぎのニュース番組を見ながらピザを食べて、映画を一本見た。久々に2人で紙巻きの煙草をふかしてお酒を飲んだ。13畳ワンルームは今日、楽園になった。

"私だけ見て"

そんな事を言うからいつもより酷くしてしまったかも知れない。涼しい夜だったのにひどく汗をかいてしまった。そんな時の彼女は羞恥と快感と、それに溺れる愛とをごった煮して喉の奥に詰め込まれたような顔で僕を見る。僕にはそれが堪らなく愛しい。彼女以外を性的な対象として見れなくなっている。ドキッとする事もない。生物学的観点から言えば僕は"終わってる"のだ。それでいい。僕は狂った様に彼女だけ見ていたいし一つも見逃したくない。

互いの名前を呼んで好きと囁いて背中に爪痕が残るほど強く抱きしめ合って、これがただの欲の成れの果てならそれでも良いが、その後に来る穏やかな時間だけは本当に愛で満たされた時間だと思う。

鼻先が触れるほど近くで横になって互いの目を見ながら洗いざらい話してしまう。幸せを文字通りに具現化した様な時間があのワンルームに流れる。酷くして、深く愛し合って、それからこの時間に帰結する。セックスはこの時間の訪れまでの前口上なんじゃないかと思うほど満たされた時間が流れる。

丁寧に優しく彼女の体に触れると、まだ火照った体のその温度が手を伝う。髪を撫でて口付けをして僕らはゆっくりと微睡の中へ落ちていく。"もう寝た?"なんて彼女が寂しがるから僕は彼女が眠りにつくまで出来る限り抱き締めて手を握り、背中をさすってやる。

今日の事

だから今日をまた僕は生きる。"明日も好き?"と言った彼女はもう昨日に閉じ込められてしまったが、あえて今答えておくとするなら今日も彼女が誰よりも好きだ。今日の僕もきちんと君を愛す用意がある。昨日の僕から受け取った記憶と想いとこの体がある。そうやって1日ずつを繋いで生きる事がこんなにも愛しい事だと教えてくれたのは君だから。

電車はまだ揺れていて、もうすぐ僕を職場近くへと吐き出す。きっと今日だってお互い一筋縄では行かないのだろうが、それでも今日を生き抜いた先に君の影がチラつくから僕はひたすらそこに向かって走るしか無い。そうしたいし、そうさせて欲しい。

終点"彼女ん家"に着くまで僕の今日は終わらない。
互いに今日という1日を生き抜いた疲れを持ち寄って今日も同じベッドで眠りにつくその時まで今日の僕は今日のまま死なない。

今日の君と僕の、今日の僕らが生きる今日。


今日はここまで!
いつかまた与太話を。
んじゃ、また!!

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