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【ぼくにげちゃうよ】絵本レビュー

マーガレット・ワイズ・ブラウン 文
クレメント・ハード 絵
いわた みみ 訳
ほるぷ出版

【並べて楽しい絵本の世界】

おやすみなさいおつきさま
に登場する子うさぎがきっと昼間はこんな風にすごしたのだろう、子うさぎの空想と、おかあさんの対話を描いた絵本です。

「ぼくにげちゃうよ」という子うさぎと、おかあさんは「おいかけますよ」とひたすら対話をかさねます。

幼い子どもと追いかけっこをするとき、ほんとうに子どもは楽しそうです。

奇声をあげて、笑いながら、あるときは真剣な顔で、逃げて逃げて、つかまった瞬間には満足そう。体験されたかたは沢山いらっしゃるでしょう。

おとなの体力が続くかぎり繰り返されます。

そんな遊びをはるか過去に置き去りにした、おばあちゃんの目線で読んでみました。

ある日、とてもお母さんが嫌になる。
愛してくれているのはじゅうぶんに知っているけど、「ぼくにげちゃうよ」と言いたくなる。実際にいつもの距離より離れてみる。いちばん最初は何歳くらいなんでしょう?

それは本人の記憶にはない頃のような気がします。
2歳? 3歳頃でしょうか。

その時期、多くの子どもはこの子うさぎとお母さんのように、倦むことなく追いかけっこ(対話)をくりかえしくりかえし していたはず。

やがて本当に大きくなったら、反抗期と言われる時期もやってくる。
親子が真剣に対峙しなければいけない時期がやってきて、いつまで続くのかわからない泥沼になることさえある。

その状態でこの絵本を読んだら、あるひとは
「こういう親は重過ぎる」と思うかもしれません。

あるひとは「あの頃はよかった」と感慨にふけるかもしれません。

またあるひとは、「自分は子どもから卒業できていなかった」と気づくかもしれません。

絵本には、ぐっと人を引き寄せるちからがあります。

本人の記憶にはない頃 
ここにそのちからがあるのでは、と思いました。

子ども本人は記憶にはなく、息を切らして追いかけていたおかあさんには記憶があるのです。もちろんお父さんにも。

幼い子に接する時、その存在を神聖で尊重できるものとして対することができないでいると、恐ろしいことになるのでは?と思ってしまいました。

 写真 スティーブ・スミス

ともあれ【並べて楽しい絵本の世界】は、こんな風な読み方をしてしまうこともありますが、いつも絵本を並べてそれを眺めて、自分と対話していく世界でもあります。

絵本のちからを感じた一冊でした。

お読みいただきありがとうございます。
明日はどんな絵本にちからをもらう?








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