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アールネ・スックスドルフ『ジャングル・サガ』インド、ミューリア族の生活

スウェーデン出身の記録作家として世界中を渡り歩いたアールネ・スックスドルフの長編二作目。アーリア人、モンゴル人、ドラヴィダ人がヒマラヤを越えて移住する遥か昔からインドに暮らしていたというミューリア族の生活を描いた一作で、同年のカンヌ映画祭コンペティション部門に選出された作品。冒頭の長いナレーションにて、スックスドルフが本作品の概要を軽く説明する。ミューリアの人々はデカイ建物を建てたり優れた著作物があったりするわけではないが、ジャングルの中で孤立した生活をする中で、"どのように他人と幸福な生活を営めるか"という問題に対する答えのようなものは持っている。また、彼らのアニミズム信仰のうち、大地の女神マタとその右腕である虎のデュアル、そして悪の象徴である豹のミラルという神がそれぞれいて、そこからミューリア人には善悪、生死といった二項対立が生涯に渡って思考の基礎となっている。そして、その大地女神マタの象徴が英題にもある"竹笛"である。

上記のことを踏まえると、残りの部分は無字幕でも楽しめるだろう。別々の村から別々のカーストで結婚したリガとギンジョ、ギンジョの従兄弟のチェンドルが中心となり、引っ越し当日に悪の象徴である豹を見かけたり、祭り会場でマタに捧ぐ酒を飲んだり、自分の水牛を食った豹を狩りに出たりと生活とそこに潜む危険が描かれていく。チェンドルくんは見た目としては8歳くらいなのに、朝から散歩しながら煙草吸っててビジュアルが強すぎるのだが、そんな彼が野生のインコにいたずらするために森の中で息を殺してる横移動が非常に良かった。ギンジョが虎を射殺すシーンや村に豹が侵入したシーンの緊迫感あふれるカット割りも良かった。

一つ残念な点としては、全体的に小綺麗すぎる印象を受けることだろうか。それを捉えるためにギンジョたちから離れた距離というのが、割と大きく物語を味気ないものにしている気がする。

・作品データ

原題:En djungelsaga / The Flute and the Arrow
上映時間:75分
監督:Arne Sucksdorff
製作:1957年(スウェーデン)

・評価:60点

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