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ラテンアメリカ映画

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最近になってようやくラテンアメリカ映画の魅力に気付いたので、こまめに更新する予定です。あくまで予定ですが。
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2022年7月の記事一覧

Gust Van Den Berghe『Lucifer』丸いフレームから覗き見るルシファーがもたらした混沌

傑作。真ん丸のフレーム。最初に映し出されるのは空を仰ぎ見る魚眼の映像だが、中心に集まった白い雲と外周に追いやられた黒い大地をジッと眺めていると、それは南極大陸のようでもあり、つまり地球を南から覗いているようであり、やがて白んだ真ん丸の画面に現れたのは堕天して地上に降り立ったルシファーだった。覗き穴のような真ん丸のフレームは、地獄へ行く経由地として地上に降り立った元部下を眺める視点を持ち、魚眼映像は全てを見渡す=全知全能としてそれに応えている。しかし、覗き穴は覗き穴として狭い領

ナタリア・ロペス・ガヤルド『Robe of Gems』メキシコ、奇妙に交わる三人の女性の物語

2022年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。カルロス・レイガダスやアマト・エスカランテといった同時代のメキシコ人監督の作品で編集を務め、夫レイガダスの『われらの時代』では彼の妻役として出演していたナタリア・ロペス・ガヤルドの初監督作品。レイガダスは本作品の共同プロデューサーとして参加しているが、どこかのタイミングで彼とは離婚したらしい(どこにも載ってないがググると元妻と出てくる)。本作品には三人の女性が登場する。一人目のイザベルは物語の主人公で、家族とともにメキシコの田舎にあ