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ラテンアメリカ映画

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最近になってようやくラテンアメリカ映画の魅力に気付いたので、こまめに更新する予定です。あくまで予定ですが。
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2022年2月の記事一覧

マティアス・ピニェイロ『Isabella』"尺には尺を"と紫の海

2020年ベルリン映画祭エンカウンターズ部門選出作品。これが初ピニェイロだが、過去作品のあらすじを読む限り、本作品でもいつも通りシェイクスピア 劇を現代に翻案して解体してくのをやっているようだ。今回は『尺には尺を』で、主人公はイサベラを演じる。冒頭で登場するマリエルは妊娠しているが、同じドレスを着たマリエルが登場する次のシーンでは妊娠しておらず、時系列がぐちゃぐちゃにかき乱されていることが分かる。また、同じに見えるが細部が微妙に異なるシーンや同じに見えるが演者が異なるシーンが

ミシェル・フランコ『Sundown』メキシコ、ただ太陽が眩しかったから…

傑作。2021年ヴェネツィア映画祭コンペ部門出品作品。メキシコはアカプルコのビーチで寛ぐニール、その妹アリスと彼女の二人の子供アレクサとコリン。並んで寝椅子に転がって日光浴を楽しみ、ホテルのレストランでテーブルを囲み、ダイビングショーを観て、仕事をするアリスを諌めるなど、一見仲は良さそうだ。そんな中、ニールとアリスの母親が亡くなったという知らせを受けてロンドンへと急ぐ帰り道、ニールは"ホテルにパスポートを忘れた"として一人アカプルコに残る。しかし、ニールはホテルに戻ることなく

Margot Benacerraf『Araya』アラヤ半島、塩との生活

カンヌ映画祭コンペ部門に選出された数少ないベネズエラ映画の一つで、同じくコンペに並んだアラン・レネ『ヒロシマ・モナムール(二十四時間の情事)』と共に国際批評家連盟賞を受賞した。舞台はベネズエラ北部に位置する不毛の地アラヤ半島。ここでは何も育たない反面、海から得られる塩だけは豊富に存在し、それが金と同等の価値を誇っていた時代に大変重宝された。当時スペイン帝国によって築かれた堅牢な要塞は450年経って放置されたまま、残骸を陽光に晒している。人々は貴重な塩に見向きもしなくなったが、