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ベルリン国際映画祭コンペ選出作品たち

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カンヌ映画祭のコンペ制覇にあわせて、ベルリン映画祭のコンペもゆるゆると書いていきます。2020年から始まったエンカウンターズ部門の記事も入れます。
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2020年12月の記事一覧

クリスティアン・ペッツォルト『水を抱く女』現代に蘇るウンディーネ伝説

ウンディーネとは水を司る精霊であり、女性の姿をしていることが多く、人間男性との恋愛にはかなり大きな代償がある。この情報を知った上で本編を見始めると、いきなりウンディーネと恋人ヨハネスの別れ話から始まる展開に驚く。しっかりウンディーネはヨハネスに"別れたら死ぬど?"と言っており、その設定は守っているのだが、それを知らないとただの重い女にしかなっていなくて実に滑稽。続いて、彼女は潜水士のクリストフと出会い、彼こそが本当の運命の人であると悟るのだが、中盤でウンディーネ設定が思い出し

ブルハン・クルバニ『ベルリン・アレクサンダープラッツ』フランツはまともな人間になりたかった

アルフレート・デーブリーンによる怪物的な大都市小説『ベルリン・アレクサンダー広場』の現代版アレンジとして、今年のベルリン映画祭で話題をかっさらったコンペ選出作品。嫌でも15時間のファスビンダー版がチラつくが、本作品も3時間あるので、取り敢えず頑張って全て描こうとする監督の姿勢は伝わってくる。戦間期の混乱するベルリンを下層社会の住民の目線で描いていた原作からの大きな改変は、舞台を現代のベルリンに移した点、そして主人公フランツ・ビーバーコップをギニア・ビサウからの不法移民フランシ