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世界の(未)公開映画

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東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。
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2022年3月の記事一覧

ジェム・カヤ『リメイク、リミックス、リップ・オフ』"ある意味で全ての映画は互いのコピーだ"

"世界には30パターンくらいしか物語がないんだから、全部混ぜちゃえばいい"という圧倒的なパワーワードで幕を開ける本作品は、1960年代から70年代にかけて、当時世界有数の映画生産地だったトルコが、その需要に応えるために世界中の映画をパクりまくったことについて、当事者たちが回顧するドキュメンタリー映画である。イスタンブールにあるエメックシネマという大劇場とその裏通りに密集した大量の製作会社を中心に独自発展した文化であり、年間製作本数は300本を超えていて、関わった映画を訊かれて

John Abraham『Donkey in a Brahmin Village』バルタザール、インドへ行く

マニ・カウルやリッティク・ゴトクといった名だたる巨匠の指導を受け、影響を受けながら独自の道を進んだ南インドの伝説的映画監督ジョン・アブラハム(John Abraham)による代表作。タミル語詩人スブラマニア・バラティによる火を讃える詩の朗読によって幕を開ける本作品は、『バルタザールどこへ行く』を念頭に置いた、ロバの受難と迫害についての物語である。インドにおけるロバの扱いはかなり手荒く、冒頭では"虐めてたら反撃されたので殺した"という文句まで登場する。そうして母親を失った子ロバ