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世界の(未)公開映画

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東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。
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2020年10月の記事一覧

チャイタニヤ・タームハネー『裁き』サイバン、 日 常 、そしてサイバン

小学校教師で民謡歌手の老人が主人公なんだが、彼が抗議集会で演説みたいなのを歌っているのを観て、失礼ながら"インドすげえ"と思ってしまった。彼は"全ての下水清掃人は自殺せい"と歌ったらしく、それを聴いたかもしれないし聴いてないかもしれない下水清掃人が二日後に自殺っぽい死に方をしたため、自殺幇助の罪で逮捕される。なんとも無茶苦茶な理論だが、まかり通るらしい。しかし、意外にも裁判シーンにはあまり時間が割かれない、というかそもそも裁判自体をほとんどしていないのだ。一人証言したら続きは

エリア・スレイマン『時の彼方へ』パレスチナ、現代の不在者の年代記

初長編が『消えゆく者たちの年代記』という題名だったが、本作品のほうがよっぽど"年代記"してる。ざっくり四部構成となる本作品は、1948年のイスラエル建国によって迫害されることになったパレスチナ人について、ある一家の歴史を追うことでミクロな視点から故国の歴史を捉え直そうとしている。そして、その一家というのがスレイマン一家なので、半分くらいは自伝的な要素も含んでいる(はず)。テイストは他の三作品と似ているのだが、ガチの年代記とすっとぼけギャグの相性が微妙に悪く、全体的に鋭利さを欠

エリア・スレイマン『消えゆく者たちの年代記』パレスチナ、滑稽な日常風景

本作品はイツハク・ラビン暗殺とベンヤミン・ネタニヤフ当選直後の、イスラエルとパレスチナの和平プロセスが緊迫した時期を舞台としているが、明白には提示されない。エリア・スレイマン演じる現代のユロ氏とも呼べる"ES"氏は後の『D.I.』や『天国にちがいない』と同じく言葉少なに佇むだけで、映画全体も関連性のない挿話が並べられているに過ぎない。一応、本作品は大きく二つのパートに分けられており、第一部となる"ナザレの個人日記"では、スレイマンの親族たちの日常生活が描かれている。"聖地"と