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世界の(未)公開映画

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東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。
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2019年5月の記事一覧

マリー=クロード・トレユー『シモーヌ・バルベス、あるいは淑徳』 他愛も無い会話から見える人間愛とパリの片隅

恐らく今年のベスト入りは確実な『Knife + Heart』と同時代のポルノ映画とレズビアン恋愛に触れているため、先に触れておこうと思う。数多く惨めな邦題が付いた作品があれど、直訳ながら本作品のような美しいというかカッコいい邦題がついた作品も少なからず存在する。マリー=クロード・トレユーの初監督作品である本作品は、そんなカッコいい邦題クラスタを誘惑し続けていたが、どうにも上映機会が少ない幻の映画となっている。 ポルノ画映画館の案内係として働くシモーヌ・バルベス。働かない同僚

アンドレ・デルヴォー『Woman Between Wolf and Dog』ベルギーの知られざる二次大戦

ベルギーのシネマテーク社から出ているDVDはどれもジャケ写がカッコいいんだが、欠点は多くが廃盤になっているのとアンドレ・デルヴォーくらいしか目玉商品がないという二点である。個人的には評価したいが、セールス面では致命的だろう。察しのいい人はだいたい分かったと思うが、勿論マリー=クリスティーヌ・バロー目当てである。邦題はいつどこで上映されたか知らないが『狼と犬の間の女』とされている。 1940年のアントワープ。まだ戦線がこちらに来ていないことをいいことに、誰も戦争が国にやって来

マティ・ディオップ『Snow Canon』少女が大人の世界に触れるとき

カンヌ国際映画祭予習企画第三弾。今年の第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に初長編が選出されたマティ・ディオップ / マティ・ディオプ(Mati Diop)。セネガルの有名な映画監督ジブリル・ディオップ・マンベティの姪であり、本人もクレール・ドゥニの『35杯のラムショット』などで女優としても活躍している。映画監督としては2004年に発表した『Last Night』以降少し間が開くが、『Atlantiques』(2009)、『Snow Canon』(2011)、『Bi

アブデラティフ・ケシシュ『Mektoub, My Love: Canto Uno』自分を楽しく生きる人々への人生讃歌

最高。素晴らしい。カンヌ国際映画祭予習企画第ニ弾。撮影中のセクハラ疑惑のせいで日本公開が消し飛んでしまったアブデラティフ・ケシシュの新作。届いたその日に本作品の続編がカンヌのコンペに入ったため、超タイムリーで嬉しかった。ケシシュは本作品のために前作『アデル、ブルーは熱い色』で受けたパルムドールを売ったらしい、正に執念の映画だ。この映画のためにジャック・ロジエの『アデュー・フィリピーヌ』と『オルエットの方へ』を観て、バカンスの空気感を予習してみたが、最高だったね。 1994年