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『いけいけ!それなちゃん!シューティングスター』レビュー

4月29日にゲームサークル『Sopranote』の新作ゲーム『いけいけ!それなちゃん!シューティングスター』がリリースされた。

いくらかプレイしてみて、ハイスコアを理論値に近いと開発者直々にお墨付きをもらったので、せっかくなのでレビューを書いてみようと思う。なにせ、今このゲームを世界で一番上手いのはこの『サヨナキド』なのだから。

私はこのゲームが『カービィ的』であるという話をしたい。

一般的に、創作物を他の作品と比較するのはマナーに反することだと言われている。そういった意味では、このような切り口で紹介することは、全く無礼千万であると切って捨てられても文句は言えない。けれど、『星のカービィ』は私の魂のゲームであり、生みの親である桜井政博は私が神として信奉する存在である。つまり、『カービィ的である』というのは『最高である』の言い換えだ。その上で、今回の作品は『シューティング初心者でも遊びやすい内容を目指していた』ともなれば、『初心者向けゲーム』のパイオニアであるカービィと並列して語ることは、目指していたコンセプトが正しく反映されていることを裏付けるものになるだろう。

本作は、横スクロールシューティングゲームだ。プレイヤーは通常弾とチャージショットの2種類の弾を駆使して敵を倒し、ステージ最後に待ち受けるボスを倒す。基本的なゲーム構造としては『グラディウス』以来のクラシカルなものである。スクロールシューティングは、敵の攻撃が画面を埋め尽くす弾幕系がメインストリームになって久しいが、本作は『狙って撃つ』タイプのシューティングであり、まずそこでプレイするハードルが低い。

とはいえ、私のゲーム経験にはシューティングゲームの経験は薄く、本作をプレイしながら感じたのは本作は『カービィ的』であるということだ。

SFC風のドットグラフィックにチップチューン

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少しナンセンスな世界観とステージ前のオープニングデモ。特に3面の『ソーダリウム』のデモは夢の泉の同じく3面『ICECREAM ISLAND』を彷彿とさせる。

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そして突如乱入するユーフォー

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しかしながら、私は本作を『カービィ的』と評するのは、フレーバー部分に依るものに限った話ではない。むしろ、作品の根底に流れる哲学をこそ指して『カービィ的』であると考えている。

『星のカービィ』の生みの親である桜井政博は、19歳でゲームディレクターとしてデビューし、以来その生涯を50歳になる今までゲームディレクターとして活躍してきた。それ故に、『ゲームの面白さ』というものを言語化することについては、世界一の能力があると私は思っている。

そんな彼が『ゲームの面白さとは何か?』に対する答えのひとつとして挙げたのが『リスクとリターン』だ。

詳しくは上記リンクを見ていただきたいのだけれど、1行でまとめるなら
“大きなリスクに大きなリターンを与えることこそゲームの面白さ”ということである。(1行にまとまらなかった)

例えば上記講演には書かれていないが、『星のカービィ 夢の泉の物語』でのコピー能力もそのひとつである。

カービィの攻撃方法は主に2つある。コピー能力と、星型弾だ。
コピー能力は能力に対応した敵を飲み込めば繰り返し使えるが、威力は低い。対して星型弾は1回使うのに敵に接近して吸い込むか、ボスの攻撃を寸前で回避して星を吸い込まなければならないが、威力はコピー能力と比べて大きい。リスクが大きい星型弾の方が威力というリターンが大きいというわけだ。そして最終決戦能力『スターロッド』は、その星型弾を無制限に射出できる能力なのである。

おおっと、話がそれた。さて、“大きなリスクに大きなリターンを与えることこそゲームの面白さ”と上記講演で桜井は言っているのだけれど、そうなってくると問題なのが『マリオはカービィより面白い』というところだ(講演2P)。マリオの攻撃はハイリスクだ。基本的に衝突のリスクを負って踏みつける必要があり、甲羅を蹴飛ばして攻撃しても跳ね返ってくるリスクがある。対して、カービィは衝突しない間合いの敵でもヒュッと吸い込んでしまうことができる。

“ と言うことは! 初心者のためにリスクを軽くする仕組みを持つ『カービィ』は、ゲーム自体を面白くなくしてしまう欠点もあるわけです。

 が、もちろん『カービィ』がゲームとして成り立っていないわけではありません。

 人によって難易度に対する感じ方は違います! ゲームに興味がない人が、今の複雑なゲームを華麗にクリアしていく、という構図を、私はどうしても思い描くことができません。
 ゲーム慣れした人には小さいリスクでも、あまり慣れていない人には強大なリスクになっているということは、よくあります。

 初心者にはやさしく! クリアした時の喜びよりストレスが勝ってしまったら、せっかくのゲームも台無しです。

 『カービィ』はそこを狙って制作したゲームであるので、ぶっちゃけ『マリオ』よりもスリルがなく、言ってしまえばつまらなくても、役割としてはよしとしているのです。”(引用終わり)

では、初心者向けゲームとして考えた時、『いけいけ!それなちゃん!シューティングスター』はどうなのか。

最初に“プレイヤーは通常弾とチャージショットの2種類の弾を駆使して敵を倒し”と書いたが、ここに本作の特徴がある。

通常弾は連射が可能である上に、画面をタップした位置に向けて飛ぶので任意の方向に撃ち分けることが可能なのだ。対してチャージショットは1回撃つのにチャージが必要な上に、正面にしか撃てない。これは何を意味するか。

本作の敵の攻撃というのは、単純に言ってしまえば『前進する』と『前方に卵を撃つ』の2つしかない。つまり敵の正面に立ちさえしなければ「間合いの外」なのだ。(当然というかボスはそこから逸脱する行動も取るのだけれど)。チャージショットを使わず通常弾を斜めに連打していれば、ステージクリア自体は簡単にできる。

では、チャージショットの存在意義とは何か。それは『スコアアップ』である。

チャージショットは敵にぶつかっても止まらず、貫通して飛んでいく。そして多くの敵を1発のチャージショットで倒すほど、多くのスコアが入るのだ。ちょうど、居並ぶクリボーをなぎ倒すノコノコのコウラのように。


試しに動画を撮ってみたが、スコアの違いがお分かりになるだろう。通常弾だけで倒した場合のスコアが2640なのに対して、チャージショットで一網打尽にした場合は9640だ。7000も違う。ハイスコアを狙うためには可能な限りチャージショットで敵を倒す必要がある。
そしてもう一つ観て分かることとして、通常弾では敵が画面端に出てきてすぐに倒すことができるのに対して、チャージショットで一網打尽にするためには敵を衝突寸前まで引きつけなくてはいけない。まあ、チャージショットで倒すにしても2回に分けて倒すこともできるのだけれど、それはその分スコアが落ちる。ここでも『リスクとリターン』が大きく効いているのだ。

まとめよう。

『いけいけ!それなちゃん!シューティングスター』は初心者向けの横スクロールシューティングゲームだ。弾幕のような苛烈な攻撃はなく、狙って撃つタイプのシューティングゲームである。

特徴的な2種類の攻撃方法により、クリアするだけなら誰でも、初心者でも簡単だけれど、ハイスコアを狙うならばギリギリの攻防が必要になるという可変的な『リスクとリターン』をシステムに内包している。そしてその哲学は『星のカービィ』にも共通するものだ。

現在はステージ3まで公開されている。クリアするだけなら簡単なのでプレイしてみて欲しい。

そして、私のスコアを超えてみな?

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